登場人物の名前をおでんの具にしたら、ちょっと怖い話も怖くなくなる説
この話は、登場人物の名前を全員おでんの具にしたら、ちょっと怖い話も怖くなくなるのでは!と思って書いてみました。
怖い話に初挑戦なので、大目に見てもらえるとありがたいです!
あれは、今も忘れられない出来事だった。
俺、城井 だいこんが小学六年生だったころに、九死に一生を得るとはこういうことか、と身をもって経験した話である。
その日俺たちは、学校のすぐ近くにある、公園に行った。
公園といっても、ブランコやシーソーしかない公園だ。土地は広いけど木が茂っているため、あまり人気がない。
そこで幼馴染の、似 たまごに、伊都 こんにゃく、最近同じクラスになった勿 巾着ちゃんと丸居 がんもどき君と遊んでいた。
たまごとこんにゃくは幼稚園からの付き合いで、学校ではいつも三人一緒に行動している。
また、勿 巾着ちゃんはフレンドリーで、友達からはきんちゃんと呼ばれているそうだ。
巾着ちゃんだと長いので、俺もきんちゃんと呼ぶことにした。
がんもどき君は、実はプロ並みに料理がうまいらしい。
ただ、あまりしゃべらないから、クラスの人たちにはあまり好かれていない気がする・・・、と本人が言っていた。
そんなことないと思うけどな。結構面白いし。
そんな四人と遊んでいたら、あっという間に日が暮れてしまった。
「ねぇ、今度はいつ遊ぶー?」
「明日遊ぼうぜ!」
きんちゃんが言うと、たまごが即答で答えた。
「僕は大丈夫だけど、みんなの予定は?」
「俺は平気」
こんにゃくとがんもどき君は、明日も遊べるらしい。
「だいちゃんは?」
「俺は、たぶん明日も行ける」
「じゃあ決まりな!」
にかぁ!っとたまごが豪快に笑った。
案外、みんな乗り気だ。今日が楽しかったのだろうか。
よかった、とおれは息をついた。
もともと、たまごとこんにゃくと三人で遊ぶはずが、俺がきんちゃんとがんもどき君も呼ぼうといいだしたので、少し責任を感じていたのだ。仲良くなれたみたいで、良かった。
次に遊ぶ約束もできたし。日も暮れてきたのでそろそろ帰ろうかという話になった。
そんな時、キーッ、キーッと、ブランコをこぐ音が聞こえてきた。
ブランコのほうを見てみると、小学一年生ほどだろうか。小さい女の子がひとりでブランコをこいでいる。
「なぁ、あの子・・・」
俺がその子のほうを指で示すと、きんちゃんがポテポテ近づいて行った。
「あなた、どうしたの?お父さんとお母さんは?」
「・・・」
女の子は何も言わず、うつむいていた。
「お姉ちゃんたちと一緒に帰ろ?家はわかる?」
「あーーーそーーーぼーーーーー」
子供らしくない、無機質な声。
「え・・・?ごめんね、お姉ちゃんたち、そろそろ帰らなきゃなんだ」
きんちゃんが戸惑ったように言った。きんちゃんの腕をガシッとつかみ、
「あーーそーーーぼ。あそぼあそぼあそぼあそぼあそぼ・・・」
狂ったように言い続ける女の子に、俺は気味悪さをおぼえた。
みんなもそう思ったのだろう。
「なぁ、この子はほっといて、さき帰らねぇ?」
たまごが顔を引きつらせた。
「そうしよう。ぼ、僕、これから用事があったような気がする・・・」
「お、俺も!」
「え!?ちょっと待って、この子は?」
きんちゃんは腕をつかまれているので、帰れないらしい。
「だから、その子はほっとけばいいじゃん!」
「かわいそうでしょ!」
たまごときんちゃんでもめている。
五人で一緒に遊ぼうと提案したのは俺だし・・・。
そう思って止めようとした時だった。
言い続けていた女の子がピタッと、言わなくなった。
「・・・あそんでくれないの?帰る?帰っちゃう・・・ひどい・・・ひどい!ダメ!!」
その瞬間、女の子がぐわっと顔を上げた。
女の子の顔は、血にまみれていて、目が落ちそうなほどに見開いていた。
また、一部が欠けていて、脳が見えている。
「うわぁーーーー!」
最初に叫んだのは、誰だっただろうか。
きんちゃんを置いて、俺たちは全力で逃げた。
「や、やだ!やだぁ!」
後ろできんちゃんの声が聞こえたが、気にしている暇はなかった。
必死に走っているうちに、がんもどき君に会った。
「・・・なに、あいつ・・・!?」
「わからない、知らないよ!」
俺のほうが聞きたい。
「はぁ、はぁ・・・前、ネットの都市伝説みたいなやつに、『あそぼ』って言ってくる女の子のやつが載っていた気がする・・・」
「そういうことは、はやく言えよぉ!!」
思わず足を止めそうになった。
「・・・で、どんな内容だったんだ?」
「えっと、あんま覚えてないけど・・・女の子が一人で遊んでいたら、ブランコから勢いよく落ちて死んでしまった、だっけ?たしか・・・名前が、『白井 はんぺん』だったような・・・」
俺と名字の読み方一緒じゃん。最悪・・・。
「対処法とかは?」
「・・・忘れちゃった。てへっ!」
てへっ!じゃねーよ。こんな時にふざけるなよ!
「うわっ!」
がんもどき君が、落ちていたゴミに足を引っかけて転んだ。
そこに目を付けたのだろう。女の子が走ってこっちに向かってきた。
きんちゃんはいなくなっている。まさか女の子に・・・?俺も消えるのか?
「くるなーーーーっ!」
俺は目をつぶって、逃げた。
「ま、待って!・・・や、やめ・・・!」
ごめんな!ごめん!心の中で謝りながら、俺はがんもどき君をおいて逃げた。
あれ?この公園って、こんなに広かったっけ?
目を開けると、ちょうどたまごとこんにゃくがいた。
「良かった!合流してたんだな!」
背中を向けていた、たまごとこんにゃくがゆっくりと振り返る。
恐怖に耐えられなくて、精神が壊れてしまったのだろうか。
泣きながら、笑っていた。
「なぁ・・・俺たちどうせ食われるんだろ?」
「だったら自分から行って、早く楽になったほうが・・・」
こんにゃくの言葉は、最後まで言うことなく終わった。
いつの間にいたのか、女の子が近くにあった木から降りてきたせいで。
「たまご!こんにゃく!」
女の子、いや化け物は、降りながらぐわっと口を開け、たまごとこんにゃくを食った。
きっと、きんちゃんとがんもどき君もこんなふうにー
次はお前だ、とでもいうようにこっちをぐるんと振り向いた。
「お兄ちゃんは、あそんでくれる?約束・・・する?」
無表情な顔が、どんどん近づいてくる。
俺は、ときめきとは違う意味でドキドキした。
「わかった!約束、するよ!するから・・・殺さないで・・・!」
最後は、ほとんど叫んでいた。 あの二人のようになりたくない!
とにかく、今の状況から抜け出したかった。
なんでこうなったんだ・・・?
俺らはただ公園で遊んでいただけなのに・・・。
俺が女の子を指さしたから?
「ほんと?約束、約束・・・してくれる!?うれしい!・・・またね」
にまぁ、と口が裂けるほど笑い、すぅっと消えていった。
女の子が消えた安堵により、俺は意識を失った。
どうやら俺は、寝ているらしい。助かったのか・・・?みんなはどうなったのだろうか。ゆっくりと目を開けると、日差しが差し込んでいて、少し眩しい。昼だろうか。
起き上がると、自分の部屋のベッドに寝ていたことが分かった。
ピンポーン!
今の気分とは不釣り合いな、玄関のチャイムの音が鳴った。
誰だ・・・?
「だいちゃーん!」
「遊ぼー!約束したでしょ?」
「早くしろよー!」
こんにゃく、きんちゃん、たまごの声がする。
声はしないが、きっとがんもどき君もそこにいるのだろう。
さっきのは、きっと変な夢だったんだ!
あんなこと、現実では有り得ないし。
警戒していた俺が、バカみたいだ。
そう思い、急いで玄関のドアを開けた。そう、開けてしまった。
キュィー。
音を立てて、ドアが開いた。
目の前には、四人いた。
全員が、あの夢に出てきた女の子だった。
いや、体はたまごたちと同じなのに、顔だけが違う。
すべての顔が、同時に目を見開き、にぃっと笑った。
「あーーそーーーーぼーーー・・・約束、守ったよ」
笑っているのに、感情がないような、不気味な声。
その声を聞いた後、俺はまた意識を失った。
その後、廊下で倒れている俺を発見した母が、すぐに救急車を呼んだおかげで、俺は二十歳を迎えた今でも元気に生きている。
ただ、みんなに聞いてみても、誰も覚えていなかった。
逆に、倒れたって聞いたけど、大丈夫?頭でも打った?とこんにゃくに心配された。
そう、何も起きていないことになっているのだ。俺以外は。
いい加減にこんなこと忘れたい。
忘れたいのに、忘れられないのだ。
あの日からずっと、今でも耳元で聞こえてくるから。
ほら。
「あーーそーーーーぼーーー」