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空を眺めて  作者: uta
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「行ってきまーす!!」


そんな声が周りで聞こえる。その中に

「嫌だよぉ行きたくない」

「それじゃ、お母さんがここに豚さん書くまでに先生に挨拶だけしてきなさい」


俺の中での一番古い記憶。保育園での事だ。

当時、俺はお袋から離れるのが嫌だった。まぁ甘えん坊だった。


保育園の庭の片隅で駄々をこねる俺。そんな俺をどうにかして

行かせたくてお袋が考えた事。

木の棒で地面に豚の絵を書く。その間に先生に挨拶をしに行く。なぜか

それだけは言う事をきいたらしい。


「友恵先生おはようございます!!」

走って行った俺は挨拶をした。

「優君おはよう」先生は笑顔で言った。

先生は続けて

「今日も元気ね」なんて言う。


まぁ挨拶をし、お袋の方を振り向くと案の定その姿はない。

それを見て俺は泣いた。


「あらあら」そう言って先生はしゃがんで俺の頭をなでた。


「優!!遊ぼう」泣いていた俺は急に手を引かれた。


「何して遊ぼうか?」ニカッと笑いながら手を引いたのは凛だった。


凛とは家も近所で、親同士も仲がいい。まぁ幼なじみだ。


「泣き虫!」

「うるさい!!」鼻をすすり答える俺。

「何して遊ぶ?」またニカッと笑いながら凛は聞く。

「んー…」

「砂場で遊ぼう」


いつも聞くのに結局、凛が遊びを決める。まぁ俺が

優柔不断だからいけなかったのかな…。


凛とは何もかもほぼ一緒に過ごした。遊びの時間、

お絵描きの時間、おやつの時間、お昼寝の時間も一緒に寝た。


砂場ではお決まりのように、山をまず作りその後、両側から二人で

トンネルを掘る。そのトンネルが繋がると二人は笑顔で、


「手繋げた!!」二人はそのトンネルで手を繋ぎながら

顔を見合わせて笑った。


二人は泥だらけだった。そしてこれもお決まりだった。

「せーのぉ」

「えい!」

作ったトンネルの山を二人で踏みつぶす。


そして二人は、また見合わせて笑う。


そんな保育園での一日を過ごす。

「さようなら」

「バイバイまた明日」

そんな声が聞こえる。保育園の帰りの時間。


「友恵先生さようなら」凛のお母さんが迎えに来て凛が帰る。

「凛ちゃんまた明日」友恵先生は優しく笑いながら送る。


お母さんと手を繋いで歩いていく凛は、嬉しそうにはしゃいで

いた。少し歩いて行った二人の後姿を見ていたら凛は不意に

その手を放し走ってまた戻ってきた。


「優!また明日ね」ニカッと笑って俺に言った。

「うん」俺も笑いながら答えた。


それから少ししてからお袋の姿が見えた。

「友恵先生さようなら」

俺はそのまま走ってお袋の方に行った。そしてその勢いのまま

お袋に抱きついた。お袋は、笑いながら抱き抱えてくれた。

「優君バイバーイ」友恵先生は大きな声で手を振った。

「バイバーイ」俺は答え、お袋はお辞儀をした。


そんな記憶、思い出が俺の中に残っている。他に友達もいたし、

いっぱい遊んだ覚えもある。保育園での行事もあった。色んな

ことがあったはずなのに、鮮明に覚えている事はこんな日常の欠片。


そんな中でも、あのニカッと笑った凛の笑顔

今でも幼かったままの凛の笑顔はハッキリ覚えている。



そう。幼かったあの頃のままの笑顔は今でもハッキリと……。



遊んで笑って、怒って喧嘩して泣いて、また笑って…あの頃は

感情のままに生きていた。今ではそれが出来ない。


いや…そうするのが怖い。自分の気持ちに素直になれない。


そんな事を思い出す昼下がりの公園のベンチ。公園では小さな

子達が、遊んでいた。滑り台、ジャングルジムにブランコそして

砂場。


「大きくなったらヒロ君のお嫁さんになる」

「うん。僕はネネちゃんと結婚する」


そんな姿を見た。俺はふっと笑い

「そんな事も言ってたな…」思わずつぶやいた。


俺はその頃の自分に聞きたい。

「幸せかい?」

まぁ俺の事だから、少し考えて

「分かんない」なんてアホ面で言うんだろうな…


公園に居る今日の空は吸い込まれそうな

程に雲一つない綺麗な青空だった。






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