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「出世したら結婚しよう」と言っていた婚約者を10年間支えた魔女だけど、「出世したから別れてくれ」と婚約破棄された。私、来年30歳なんですけど!!  作者: 江本マシメサ
第二章 魔女の気まぐれランチ、はじめました!

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自由の朝

 ゆりかごの中にいるみたいに、ゆーらゆーらと心地よく揺れている状態で目覚めた。


「うーーーん、んん?」


 視界に天井から吊り下げてあった薬草があってギョッとする。

 いったいどうして!? と思ったら、一緒にメルヴ・メイプルが寝ていたことに気付いた。


『レイ、起キタノ~?』

「え、ええ。おはよう」

『オハヨ~』


 魔法で薄暗い部屋の灯りを点すと、天井から吊り下げたハンモックに寝ていることに気付いた。


「え、こんなハンモック、持っていたかしら?」

『コレ、メルヴ・メイプル、作ッタノ』

「そうだったのね」


 よくよく見たらハンモックは蔓でできていて、メルヴ・メイプルの額に咲いている花と同じものが各所にあしらわれている。

 蔓といっても硬くなく、柔軟性があってやわらかな素材だった。

 さらに蔓には温もりがあり、暖房機能も備わっていたらしい。


「メルヴ・メイプル、あなた、天才だわ」


 そんなふうに褒めると、メルヴ・メイプルは満更でもないという表情を浮かべていた。


 なんでも薬局には布団一式などなく、私が床に転がって眠ろうとしていたので、慌てて作ってくれたらしい。なんていいなのか、と感激してしまう。


 しかしながらどうやって下りようか考えていたら、メルヴ・メイプルがハンモックごと床のほうに下ろしてくれた。

 立ち上がるとズキンと頭が痛む。


「うう、完全に二日酔いだわ」


 普段、お酒を飲まないので余計に酔いが回ったのだろう。

 幸いにもここは薬局。酔い覚ましはいくらでもあった。商品として陳列していた酔い覚ましを手に取り、一気に飲み干す。


「うう、苦い!」


 だが効果はてきめんで、あっという間に具合がよくなった。


「ふーーー」


 お店のカーテンを開くと、太陽がさんさんと照っていた。

 すでにお昼前くらいの時間帯なのだろう。

 もともと今日は店休日にする予定だったので、なんら問題はない。

 こんな時間までだらしなく眠っていたのは生まれて初めてなのだろう。

 ただ、こんな日もあっていいのだ、と思ってしまう。

 だって私は自由なのだ。婚約や結婚という文字で縛り付けるライマーとはきれいさっぱりお別れしてきたから。


「――!」


 そう思うと不思議な爽快感と、なんだかわくわくする気持ちが湧き上がってくる。

 このような気持ちを抱けるようになったのも、私の不幸話に付き合ってくれたイエさんのおかげだろう。

 昨日は夜中まで付き合わせてしまった。お仕事は大丈夫だったのだろうか。

 酔っ払って、その辺の配慮に欠けていただろう。

 後日会ったときに謝罪とお礼をしなければ。

 相変わらず、ドライアドは眠っているようだった。きれいな女性客がやってきたときにしか目覚めないのである。まあ、お爺さんなので眠たいのは無理がないのだろう。

 台所のほうへ行くと、シチューが入っていた鍋がきれいになっているのに気付く。


「これ、もしかしてメルヴ・メイプルが洗ってくれたの?」

『ソウナノ』

「あ、ありがと~~~~!!」


 一晩鍋を放置して、シチューがこびりついているだろうな、と思っていたのだ。 

 まさかきれいに洗っていてくれたなんて。


「というか、私達、あの量のシチューを完食したのね」

『レイハ、途中カラ、無理! ッテ、言ッテイタノ』


 なんでもシチューのほとんどを平らげてくれたのは、イエさんだったらしい。


『ズーット、オイシソウニ、食ベテイタノ』

「そうだったの、よかったわ」


 イエさんは細身に見えるが、大食漢のようだった。


「なんていうか、人は見かけによらないものよね……」


 私生活がまるで見えず、とにかく大変そうに働いていたイエさんが、実は離婚歴がある上に娘がいて養育費を払っていたなんて。


「昨日は私が世界一の不幸者だと決めつけていたけれど、みんなそれぞれ事情を抱えながら生きていたんだわ」


 運命に悲観せずに、強く生きなければならない。


「よーし、まずはお風呂よ!」


 なんて決意したのはいいものの、薬局にお風呂なんてない。

 仕方がないので、魔法でどうにかしよう。

 お店の奥にある開けた場所で水球魔法と風魔法の魔法巻物を用意し、二つの術を融合させる。

 魔法巻物というのは魔法が付与された物で、破るだけで誰でも発動させることができる優れものだ。

 魔法で融合させると、浮かんだ水球内の水が風の力でくるくる回る魔法が完成した。

 水球の規模は一般的な浴槽と同じくらいか。

 これに火魔法で熱を加えると、簡易風呂の完成である。

 粉末状にした薬草石鹸を加えると、中の湯が泡風呂みたいになった。


「思っていたよりもいい感じね。水球風呂と呼ぼうかしら?」


 服を脱いで水球風呂に体を入れると、風魔法が泡を含んだ湯を回転させながら体を洗ってくれる。


「これ、楽だわ」


 息を止めて頭も入れると、髪の毛もきれいに洗ってくれた。


「ぷは!!」


 同じ水球風呂をもう一つ作って、今度は石鹸を入れない状態にして泡を落とす。

 仕上げに風魔法で体の水分を飛ばしたら、タオルも必要ない。


「あー、すっきりした!」


 間に合わせの魔法だったが、なんとかなるものだと思ってしまった。

 ただ、毎回魔法巻物を使って風呂に入るわけにはいかない。

 属性が付与された魔法巻物は高価だからだ。

 お風呂問題をどうにかしなければならないと思った。

 

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