第四話 説明会
マージはそのまま出席をとっていった。
アイウエオ順にとっていったのに、なぜかカ行が終わっても僕の名前が呼ばれない。
不思議に思っていたが、その理由はすぐに分かった。
「ロラン!」
「はい!」
「カイト!」
「はい!」
どうやら、借金奴隷とローズ共和国からの奴隷で分けられていたらしい。その後も馬車の中で見覚えがある顔が呼ばれていく。
「パトリック!」
「はーい。」
「返事を伸ばさない! パトリック!」
「はいっ!」
「ポール!」
「はい!」
「リュシー!」
「はい!」
「リュック!」
「はい。」
他にローズ共和国から献上される奴隷の名前は、パトリック、ポール、リュシー、リュックか。
僕と同じで何かあるんだろうな。
できれば敵にならないでくれるとありがたい。僕は彼らのことを被害者だと思っているが、僕を奴隷にした奴らを殺すためには何でもするつもりだ。
(殺してはいけませんよ。)
そんなことを考えていたらゼントがまた口うるさいことを言ってきた。
なんでコイツはこんなにも他人に親切にするんだろう?僕の神格じゃないんだろうか。
「では、皆さんに対し、このゴール領の領主、ダットン・ブラッドフォード公爵閣下からのお言葉があります。心して聞くように。」
どうやら、あのダットンがなにか喋るらしい。英雄らしいが、あのお人好しな性格で大丈夫だろうか?
(お人好しですか。あの方も素晴らしい性格の持ち主なのですね。)
ゼントがダットンになにか言ってる。
「私はダットン公爵である。奴隷の諸君、君たちは未来に不安を抱えているものが多いことだろう。
そんな君達がするべきことがなにか分かるか?
なんとかして、この館から脱走することか? いや、すぐに捕まって今度は犯罪奴隷になるだろう。
それとも、仕事をせずにずっと怠けていることか? いや、年季が伸びるだけだろう。
まだ幼い君達ではわからないかもしれない。
だから、私が教えよう。
君たちがするべきことはーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー努力することだ!!
なぜ努力をしなければならないのか?それは君たちの仕事内容に理由がある。
この国では、借金奴隷は仕事内容と、年季が決まっている。
だが、それには幅があるのだ。
君たちの仕事内容を見たかね?恐らく奴隷になる際の売買契約書を見た者はほとんどいないだろう。
そこには「王宮勤め」と、簡潔に書かれついる。
そう、王宮勤めだ。
君たちは王宮での仕事がどれだけあるか知っているかい?
下働きの、水汲み、掃除、選択から文官仕事、騎士やメイド非常に多種多様だ。
そして借金奴隷である君たちの年季は平民の平均所得に寄って暫定的に決められている。
決定されているわけではないのだ。
つまり君たちは能力さえあれば良い仕事を選び、普通よりも遥かに短い時間で年季を開けられる可能性がある。
諸君、この三週間で大いに学び、努力したまえ、その努力が君たちの未来を帰ることを願っている。」
「「「「「「ウオオオォォ!!!」」」」」」」
「やってやるぞおおお!」
「私、メイドになるんだ。」
「いつか大臣職も……グフフ。」
講堂が爆発したんじゃないかというほどの歓声が響き渡った。
アランとジュリの顔にもやる気がみなぎっている。
カイトは呆れたようにそれを見ていた。
カイトの心には彼らのような喜びはない。
何故ならばーーーーーーーー
ーーーーーその選択肢って、献上される相手が決まっている僕たちにもあるんだろうか?
そんな疑問を持ってしまったからである。
やがて、時間が経ち奴隷たちの興奮がおさまった後、ダットンは何も言わずに一礼して去っていった。
カイトの胸に一つの疑問を残して。
さて、先程から疑心暗鬼がもはや執念の域に達しつあるカイトに配慮するようなことをマージがするはずもなく、会は普通に進んでいった。
「次は、この三週間の予定を申し上げます。」
「まずこの後は、身体検査、適正検査となっております。それにより、魔力の適性と健康状態を見て、今後のプログラムに多少の変更を加えます。」
「さて、三週間で王宮勤めに必要な全ての技能が学べるはずはございません。なので、ある程度の数のコースに分かれて皆様には今後学んで言っていただきます。」
そう言われて、資料が配られれた。
資料を見ると、様々なコースが載っている。
「なあ、どのコースにする?」
気が早いのか、早速アランが聞いてくる。恐らく同じコースを選びたいと思っているだろう。
なので僕は教えてあげることにする。
「これから説明があるようだからそれを聞いてからかな。あと、適性検査があるってことは適正に合わせたコース選択があるってことだと思うよ。」
それを聞くとアランはまだ説明があるのかとうんざりとした表情を浮かべたが、すぐに戻した。
「確かにな。別のコースになったからって友達じゃなくなるわけがないもんな。」
「当然よ。そんな分かりきったことを聞くなんて、やっぱりバカなんじゃないのかしら?」
「今なんて言った、このエセ女。」
「誰がエセですって? このバカ男。」
せっかく納得したアランにジュリが茶々をいれて場を台無しにしてしまう。どうやら口喧嘩は日常のことのようだ。喧嘩するほど仲が良いというやつだろうか?
また、前世の影響か妙なことを考えてしまった。
僕の前世か、結構気になるな。
(口喧嘩を止めないと。)などとと言っていいるお人好しは黙殺する。
そんな面倒くさいことは何回もやっていられない。。
そうこうしている内に会はどんどん進んでいった。
各コースの説明の後は、人格についての説明があった。
大方ゼントに聞いた話と同じだったが、一つ、気になる点があった。
「人格を鍛えるには、その人格に合った適性の魔力を鍛えなければなりません。」
「人格の能力は、それに適した魔力を使うことで効果が何倍にも跳ね上がります。」
「ただ、自分の肉体の適性魔力と、人格の適性魔力が完全に一致する可能性は低いです。」
「ただ、魔力が使えなくとも神格を手に入れ、神に進化した方はいらっしゃいます。」
「めげずに努力していってください。」
そう、すでに神格を手に入れている僕の適性魔力とは何かという話だ。
そもそも、僕は人格を鍛えた覚えがない。
そんな疑問を残して説明会は終わった。