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第二話 二重人格?

★カイト


「起きろ。」


眼の前が暗い。


「起きろ!!」


どこか遠くから声が聞こえる。だんだん頭が覚醒してきた。


どうやら僕はベッドに寝かされているようだ。しかし、随分と室の良い気がする。


「起きてくれ!!!」


ひときわ大きい声とともにカイトの意識が覚醒する。


「公爵閣下アァァァ!?」


そして今まで自分に声をかけていた人物が誰かを知って愕然とする。


「だから言ったのに。」

「公爵閣下が平民相手にそういったことをするものではないと。」

「相手にとっても迷惑になります。」


僕が寝かされているのは随分と質の良い調度品が置かれた豪奢な部屋の豪華なベッドだった。

ベッドの側にはダットンと騎士たちがいる。


うん。意味がわからない。


わからないが先程の騎士たちの言葉で僕をこんな所に寝かせた犯人が分かったので「何してくれたんだ」という思いを込めて睨みつけおくことにする。

すると公爵は目を泳がせながら言い訳をし始めた。


「いや、良いベッドの方が寝心地が良くなるだろう。いくら二重人格に肉体的な影響が少ないとはいえ、休んだほうがいいのは間違いないのだし。まあ、そんな理由で君を私の部屋に寝かせたわけで。とっところで気分はどうかな? よく休めたならいいのだが。」


ダットンから完全に駄目なオッサンという雰囲気が漂っている。心のなかでの公爵呼びはもうやめよう。

見た目は20歳ちょっとに見えるのに持ったいない。


うん?ということは貴族としては行き遅れではないだろうか。こんな性格でちゃんと結婚出来ているのか怪しいな。

それにしても二重人格ってどういうことだ?


僕の目がだんだん曇ってきたのに気づいたのか、ダットンの後ろに控えていた騎士の一人が言った。


「すまない、少年。公爵閣下が起きるまではこのままだと言って聞かなくてな。少年さえ良ければ少年の部屋に連れて行こう。幸いまだ時間はそんなに経っていない、説明会には間に合うはずだ。」


願ってもない申し出だ。早くこの部屋から出たい。別に豪華な部屋が嫌だというわけではない。ただ、孤児だった僕にしてみると、違和感を覚えるのだ。というか公爵は、僕の部屋があるのになんでこの部屋で寝かせていたんだろう。


「分かりました。」


僕がそう言いうと騎士は見るからにホッとした表情をした。


「良かった。もう一人の君は公爵に便乗していたからな、では行こうか。」


どういうことだろう?先程もダットンが僕のことを二重人格だと言っていた。もしかして僕にはなにかあるのだろうか?


歩きながら聞いてみることにしよう。


「すみません?先程僕のことを二重人格だと言っていましたが。どういうことなのか教えていただけませんか?」


「君は随分と大人びた喋り方をするのだな。」


あれ、なんだろう今の言葉を何処かで聞いた気がする。


だが思い出せない。なせか孤児院での記憶に霧がかかっている。

あと、僕がこんな喋り方をしている理由は自分でもわからない。


疑問を頭の片隅に放り投げて僕は騎士の話を聞くことにする。

そういえばまだこの人の名前を聞いていないな。

なにか聞く前に尋ねるべきだったか。まあ、騎士は気にしていないようなので大丈夫だろう。


「実は、な、お主が倒れた後こんなことが起こったのだ。


騎士の話はそう始まった。


★ウィリアム・スミス


私は英雄ダットン様に使える名誉ある騎士の一人だ。


英雄……そう、英雄ダットンだ。いや、もしかしたら平民にはこちらの呼び名のほうが聞き覚えがあるかもしれない。


<大英雄>【ヘラクレス】


知らない?まあ、ローズ共和国ではそうかもしれん。

だが、この国では非常に有名な話だ。


まあ、公爵閣下の話はここまでにしておこう。


君たちが運ばれてくる前、私を含めた三人の公爵家代表騎士と、その他の騎士団から選抜された騎士は、執務室で報告が来るのを待っていた。


あとは君たちも見ただろう、君たちのところまで行き、生気をなくしている君たちに向かって公爵閣下が演説を行ったのだ。


ああ、君たちに向けて言った言葉は半分事実だよ。だが、私達は全て事実にするつもりだ。しかし、君はやはり賢いな。演説と聞いて先程の話が嘘かどうかに気が回るなんて。


実は、君たちの姿を見て最初は期待はずれだと思ったのだ。


君が意識を失いーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー喋り始めるまでは。


そうだ、君は意識を失った状態で話していた。


「私が活性化して彼に影響が出ている、安静な状態にしてはもらえないだろうか?」


そんなことを言っていたね。


どうも、口、だけを無理やり動かしているようだった。

それも話を聞くと、どうやら君本人ではないようだったのだ。


その光景を見て騎士たちが思ったことがなにかわかるかい?


驚いたのではない、確かに驚いたが、それは一瞬のことだ。

我々騎士は皆こう思ったのだ。


天才というものは本当にいるのか


と、ね。」


僕が、天才? 僕は信じられなかった。だが、話の続きを聞きたいのは間違いない。


「どういう、ことですか?」


質問をさらに重ねて先を促した。


「それは説明会で話を聞けばわかると思うよ。もう時間がない。早く支度をしたほうがいい。そうだ、館の中の地図は君の部屋の中にあるからね。服もだ、着替えて講堂に行きなさい。」


だが、ウィリアムは話してくれなかった。


いつのまにか、部屋についていたらしい。促されて僕の部屋に入ると、そこは質素だが、しっかりとした作りになった部屋だった。


服や小物がドアの反対側にあるベッドの上にまとめて置かれている。


子どもが寝ているかを調査するためにドアから見える位置にベッドがあるのだ。そんな工夫はこの大きな街といえど、ラーロの孤児院と一緒だった。

部屋は正方形で、ドア、ベッド、机、そして簡単な引き出しが四隅に配置されている。


だが、孤児院にはあって、この部屋にはないものがある。


それは、目覚まし時計だ。


僕の孤児院での部屋には目覚まし時計が合った。


しかし、困ったな、()()()()()()()()()()()()()()


そう思った、次の瞬間だった。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「えーっ。」


僕は思わず驚いて声を上げてしまう。


どういうことだろう?


元からあったものを忘れていたのかと思うが、間違いなく今までこの部屋にはなかったものだ。


つまり、この目覚まし時計は僕が欲しいと思ったから、出てきたことになる。


ひょっとして僕は超能力者だったんだろうか?


考えても答えは出ない。


ウィリアムの話だとあまり時間がない、僕は急いで服を着替えた。


・・・・・・・・・・


地図を持ってこの館の間取り図を確認する。


南門が正門であり、そのすぐ奥に本館がある。

本館には、祈りの間などの神殿の設備、執務室などの領主としての設備、講堂などの学校としての設備があるようだ。

本館の西側にあるのが修練場で、注意書きに騎士団が使っていると書かれていた。

今僕がいるのは東側の寮のようなところらしい。


地図を見て分かったことだが、どうやらこの<館>と呼ばれる建物は奴隷を閉じ込めておく監獄などではなく、王族に献上する前に奴隷を教育する教育施設だということだ。

医務室や相談室などもあった。


だが、ウィリアムの話では奴隷のことを人間と思っていない王族もいるようなので、やはり味方とは限らないらしい。

ダットンやウィリアムの口ぶりではそんなことはさせないと思っているようだが、実際に三週間後、どうなるかはわからない。


気を引き締めることにしよう。


僕は講堂に向かって歩き始めた。


そういえば、あの不思議な声が起きてから聞こえないな。

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