第7話
扉に貼られた紙の下部には、戻りかたについての説明も書かれてあった。
「戻りかたの説明も受けられますか?」
「はい。早速ご説明させていただいてもよろしいですか?」
「お願いします」
「かしこまりました」律儀に礼をして、シルクハットを被り直す。
「向こうに着きましても、こちらの扉は場所を変えずにそのまま残っております。タイムリミットまでに扉の前に立って、『支配人さん。何年後の何月何日、何時に戻らせていただきます』と言ってください。わたくしが許可しましたら扉が自動的に開きます。そのまま中へ入っていただけたら、お戻りになれますので」
「分かりました。あ、あの、戻って来るほうの扉にも、こんな感じで貼ってますか?」
「あったほうがよろしいですか?」
「ないと困ります。忘れちゃって戻って来れないと怖いし」
「それもそうですね。タイムリミットまでには手配しておきますので、ご安心を」
「お願いします」
「はい」加能さんはフフッと笑う。何がおかしいのか分からなかったが、私も「ハハハ」と愛想笑いで誤魔化した。
「あ、あと訊いておきたいことがあるんだけど、いい?」
「何でしょう」
「規則に従わなかったらどうなるの?」
「そのような場合、許可が下りることは絶対にありません」
「えっと・・・」
「つまり、現在に戻って来られないということです」
加能さんが出すオーラによって、時が一瞬止まったように感じられた。
「要は規則を守らなかったり、過去を変えたりしたら、扉の前に立っても許可が下りないってこと?」
「さようでございます。ご理解いただけて良かったです」
「記憶力は悪いけど、言葉は理解できるし。まぁ、私、一応高校生なんで。ふふ」
「そうですね」
またも加能さんが喜色を浮かべた。何に対する笑みなのか、私にはまったく分からなかった。
「説明は以上となります。何かご不明な点はございますか?」
「あの、また一ついいですか?」
「今日土曜日だから、明後日には学校行かなきゃなんだけど、三日も戻ったら月曜日は休まないといけないよね?」
「学校での予定があるのですか?」
「数学で小テストがあって。休んじゃうと別日に受けないといけないから面倒で」
「それは休めないですね」
「そうなんだけど、こればっかりは仕方ないんでしょ?」
「いえ。ご安心ください。実はですね、現代の五分が過去では一時間となっております。そのため、過去での七十二時間は、こちらでは六時間しか進んでいないということになります」
「じゃあ、休まなくても大丈夫ってことね」
「はい。そういうことです」
「よかった」私が思わず笑みを零すと、加能さんも「よかったです」と言って目尻を垂らした。
「それに、お母さんも今から六時間の間には帰ってこないし、タイムリミットよりも早く扉の前に立てば、六時間よりも早く帰って来ることができるんだもんね」
「はい。早くお戻りになりたければ、事実を早くお掴みになる必要がございますが」
「うん、だよね。まぁ、頑張ろうかな」
「はい」
こんな不思議体験を経験できるのは、同級生の中できっと私ぐらいしかいない。帰ったら自慢話じゃないけど、自分が体験した面白話としてクラスのみんなに話そう。良かった・・・。まだ人気者の立ち位置は保てそうだ。




