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過去への扉がひらくとき  作者: 成城諄亮
FNo.07 支配人 カノウ
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第33話

 七瀬ゆず奈様、山下柚美様と別れてから、これまた数日の間に、次なる依頼が舞い込んできました。その依頼主は、終夜綾音様という方でした。


 ファイリングナンバー5番の終夜綾音様、わたくしはこの方のことをよく覚えておりました。なぜなら、終夜綾音様のご両親は、スナックの常連客だった、終夜大地様と終夜まや様の娘さんなのですから。


 当時、まだ保育園に通っていた時期までしか見ていなかったために、二十七歳になられた綾音様を見たときは、大人な女性へと成長されたのだなと、その変貌ぶりに驚かされました。そして、お父様譲りの美貌と、お母様譲りの心優しい性格をお持ちになった、立派な方になられていたのです。


わたくしが、もし現代に生きていて、運命の再会なんてものを果たしたら・・・、えぇ、きっと終夜綾音様に恋をしていたでしょう。下手したら、付き合ってくださいと告白していたかもしれません。それぐらい、お美しくて、品があって・・・。あぁ、でも、わたくしは性格も悪ければ、言ってしまえば小汚い人間なので、不釣り合いな方です。付き合ってもらえるはずもありません。


 そんな話はさておき、終夜綾音様も大人になられ、見た目は変わりましたが、芯の強さに関しては子供の頃からずっと変わらず、そのままでいらっしゃいました。弟さんである終夜結音様のために過去へ戻られ、困っている誰かを助けたいという一心で、ほぼ初対面の山下柚美様を支えられました。その似た部分が、山下柚美様の心をも掴んだのでしょう。そのお気持ち、わたくしは充分理解することができるのです。


 過去に戻られた終夜綾音様は、大切な何かをお持ち帰りになられたようでした。現代に戻ろうとする自分自身がいる。しかし、現代に戻ってしまえば、結果として終夜結音様に辛い思いをさせてしまう。そのことで葛藤された末、現代に戻るという選択肢を取られました。それでも、やはりとても悩んでおられました。


 そんな終夜綾音様に、わたくしは本音をぶつけました。もちろん、終夜綾音様以外の方にも本音をぶつけておりますが、わたくし自身まで伝えるか思い悩むような内容をぶつけたのは、これが初めてのことでした。


 伝え終わった際、わたくしには終夜綾音様が光り輝いて見えました。帰ってきたばかりの頃とは違う、未来を生きるという決意が色として現れていたのです。それを見て、本音を伝えることの大切さについて、改めて感じることができました。


 これからわたくしに依頼をくださった方にも、ちゃんと向き合っていこうと、そう心の中で呟いたのです。

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