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過去への扉がひらくとき  作者: 成城諄亮
FNo.07 支配人 カノウ
131/143

第24話

 あれは十五年前、浜中剛史様と七瀬平司様がご一緒に過去への旅行をされたときです。


 七瀬平司様が、ご自身の手で結末を変えてしまった、あの出来事。


 それを見たとき、わたくしは狼狽えました。なにせ、戻らなかった方への対処方法について、商光からは何の説明も受けたことがありませんでしたからね。そして、なぜ結末を変える道を選んでしまったのか、わたくしには検討も付きませんでした。


あれだけ説明をしたのに、どうして守ってくれなかったのだろう。もっとちゃんと注意して、そして説明をしていれば、もしかしたら、こんなことにはならなかったのかもしれない。と、自責の念に駆られることもあり、焦って、自分自身のことが嫌いになって、泣きそうになっていました。


そんな時でした。一緒にいてくれた商光がわたくしに寄り添うような姿勢を取り、語りかけるように、こう言ってくれたのです。「七瀬様はこういう仕合わせを選んだんだ」と。


選んだ。その言葉にわたくしは助けられ、泣かずに済みました。泣いていたら、きっと浜中様のことをもっと不安な気持ちにさせていたことでしょう。それか、大笑いされていたかもしれませんが。


「七瀬様は現在に帰れないけど、浜中様は帰れますよね」


「うん。結末を変えたのは、あくまでも七瀬様だけだからね。辛い現実を受け止めなきゃいけなくなっちゃうけど、浜中様がご帰還されるとき、七瀬様のこと、ちゃんと伝えてあげてね」


「はい」


 商光に言われた通り、わたくしは浜中様に真実をお伝えしたのです。そのときの浜中様の表情は今でも目にしっかりと焼き付いています。わたくしが支配人となり、十五年以上経ちますが、過去に戻られた方で結末を変えてしまった人は七瀬様が最初で最後の人なのです。ですので、その一瞬一瞬を忘れることなど、わたくしにできるはずもないのです。



 浜中様の過去へのご旅行後は、しばらくの間どなた様からも依頼が来ることはありませんでした。死後の世界でも時間だけは進んでいきます。まぁ生きている世界よりもこちらの世界のほうが遥かに進むのが遅いですがね。動き出した時間は、死後の世界においても止めることはできないのです。


 依頼が来ないというのは、支配人という仕事をする楽しさを感じ始めたばかりのわたくしにとって、退屈なだけでした。仕事に関しての評判なんてものは存在しないわけですし、依頼されない限りは死後の世界から出て行くこともできませんからね。


 そこで、わたくしはある名案を思い付いたのです。


「商光」


「どうしたの?」


「生きている時代じゃなくて、死後の世界からも依頼が届けば、もっと仕事増やせると思いませんか?」


「そうだね。じゃあ、死後の世界からも依頼できるような制度創ってあげる」


「本当にできるんですか?」


「何でもやってみないと。どれくらい時間かかるか分からないから、気長に待っててね」



 そう言われてから約七年の歳月をかけて完成した制度。最初の依頼主様は、あの方でした。

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