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過去への扉がひらくとき  作者: 成城諄亮
FNo.07 支配人 カノウ
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第21話

 商光はキラキラと輝く瞳から光を消し、配色も暗くし、少し俯き加減で「じゃあ、自分の過去について話するね」と言いました。


わたくしは商光の輝く瞳をまっすぐ見つめ、ごくりと生唾を呑み、深呼吸をしました。


「自分は、商光彰芳として生を受ける前に、升田敢太ますだかんたという人物として、一度目の生を受けたんだ。その升田敢太は、さっき仕事の依頼をくれた升田千枝様の弟なんだけどね。で、その升田敢太は九歳のときに病気で死んだんだ。あの当時は衛生状況とかが今みたいに整ってたわけじゃないからね。そこで自分の、升田敢太としての一度目の人生が終わりを迎えたんだ。それでやって来たのが死後の世界だったってわけ」


「ということは、商光は商光彰芳様の前に、升田敢太様として九年間、生きていたってことですよね?」


「そういうことだよ」


「では、いつから升田敢太様ではなく、商光彰芳様として生き始めたのです?」


「升田敢太として死後の世界に来てから、たった半年ほどで、今度は商光彰芳として生きることになったんだ。だから、半年しか死後の世界にはいられなかったってこと」


「半年で次の生を受けることもあるんですか?」


「たった半年しか死後の世界にいないってのは、かなりのレアケースみたいだけどね。まぁ、自分はそういう宿命だったんだよ」


少し自慢げな感じで言う商光でしたが、何となくスターの素質があるような気がしました。なので、半年で次の人生を歩めるということに、納得できたのです。


「では、その升田敢太様は、ん? どうなられるのです?」


「どうなったんだろうね」


「・・・、ん?」


「実は、自分も知らないんだ、升田敢太様のその後を」


「えっっ、知らない、のです?」


「うん。だって、突然強い睡魔に襲われたから、まあその場で眠りについたんだけどね、いざ起きて、辺りを見渡したら、すでに違う子供の身体として生まれてたんだもん」


 想像をはるかに超えてくる商光の話。すべてが耳に留まりました。


「それで今度は商光彰芳として、二度目の生を受けたということです?」


「そういうこと。話、よーく理解できてるじゃん。すごいね」


「すごくはないです。それは、商光の話し方が上手いからです」


 褒められるとわたくし自身が嬉しくなるので、試しに商光を褒めてみました。すると案の定、商光は満面の笑みを浮かべたのです。この瞬間に、わたくしはこれからも商光のことを褒めてあげようと思ったのです。誰かを褒めるなんて、初めてのことでしたから。

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