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過去への扉がひらくとき  作者: 成城諄亮
FNo.07 支配人 カノウ
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第19話

 わたくしは、流石にそれは、と思い、「また揶揄うのですか?」と言ったのです。すると商光は「揶揄ってないよ」と、まぁまぁ真剣というか、本気だという目をしていました。でも、先ほども嘘をつかれてしまったために、そう簡単には信じられません。


「いーや、商光は嘘を言っているとしか」


「なんで信じてくれないの?」


「さっき、嘘をつかれたから。しかも人を騙すような釣り目と言うか、とにかく、そういう瞳をしているので、だから」


「それは、猫だから仕方ないでしょ。釣り目気味な猫になっちゃったんだし、人間の目じゃないんだから」


「あ、そうだった・・・、ですね」


「でさ、信じてくれないの? 自分の言っていること」


「商光と出会ってから嘘を言われたことは一度もないです。だから、言ってることを信じたいとは・・・・・・、いやいや、やっぱりそんなことあるわけな―」


「ホントだよ」


商光は毅然たる態度でいました。わたくしは、この瞬間に、あぁ、嘘じゃない。揶揄われてもいない。本当のことを言っているのだ。と気付いたのです。商光の発言内容が、嘘なのか本当なのか、それすらも見抜けない。わたくしは力不足でもあり、商光のことをよく知らないのだと思いました。


「今よりも前に、死後の世界に来たことがあるってことです?」


「そうだよ」


内容の割には軽いトーンと態度で答える商光。この答えに、最初から辿り着くように計算されていたのかと思わざるを得ない状況でした。


「商光、説明してください」


「えー、やだ」


「っちょっと・・・、教えてくださいよ」


「えー、それじゃ、なかなか依頼主様の元へ仕事に行けないじゃん!」


「仕事は別にいいから、話聞かせてください」


「駄目! 仕事が優先!」


「なぜですか」


「依頼主、升田様の気持ちが変わる前に行かなきゃいけないの。そういう決まりなの」


 わたくしが支配人となって、依頼主様を過去への旅行にお連れするという、よく分からない仕事よりも、商光が死後の世界に一度来たことがあるという、大それた話のほうに興味津々でした。


死後の世界を経験したことがある人・・・、猫とは出会ったことがありませんからね。いずれ、わたくし自身もそのような経験を積むのかと思うと、やはり、商光の話は貴重なものになると思ったのです。

 

 話を訊きたくて、意気込んだのですが、茶色い扉が商光によって、半ば強制的に開けられてしまったために、仕方なくですが仕事に行くしかないと覚悟を決めたのです。諦めきれない気持ちだけは、揺るぎませんでした。


「よし、行くよ!」


 商光に誘導される形で扉の中へと入り、わたくしは生きた世界へと足を踏み入れました。

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