チョコミントアイスなんて歯磨き粉の味だよなと言ったらパーティ追放された俺。トラップの呪いで『チョコミント化』スキルに目覚める。私にも分けてなんて言われても、チョコミント味の良さに気付いたのでもう遅い。
※注意書き
本作はお下品要素を多分に含みます。
紳士淑女の方々はご注意ください。
ミントウ
「ふぅ……」
リア
「はぁ……はぁ……」
ホテルの1室。
ダブルベッドの上に、1組の男女の姿が有った。
格好は、全裸だ。
2人はちょうど、一仕事を終えたところだった。
ミントウ
「おい。アイス取ってこい」
男が女に命じた。
男の名はミントウ。
育ちの悪い平民の男だ。
彼はニンジャのクラスを持つ、冒険者だった。
黒髪で背が高く、逞しい細マッチョだ。
左マユゲの端に、刀傷が有る。
目つきが鋭く、悪人面をしていた。
リア
「はい」
血色の良い女が、ベッドから起き上がった。
女の名は、リア。
ミントウのセックスフレンドだ。
少なくとも、ミントウの側は、そう認識していた。
この国の第2王女で、『聖女』というレアスキルを持っている。
長い銀の髪を持つ、清純そうな美少女だ。
すらりとした体つきだが、胸だけは大きい。
彼女は『聖女』としての力を磨くため、ダンジョンに挑む冒険者になった。
そして、パーティ募集でミントウと出会った。
ミントウはリアを酔わせ、強引に一夜を共にした。
強姦に近い手口だったが、リアは寛容に、ミントウを許した。
優しくすれば、つけあがるのが悪党というものだ。
ミントウは、その次の晩も、リアを抱いた。
それからは度々、2人は寝室を同じくしていた。
リアはホテルの冷蔵庫を開け、カップアイスを取った。
2つのカップアイスを手に、リアはベッドに戻ってきた。
リア
「どうぞ。ミントウさま」
リアはアイスの片方を、ミントウに差し出した。
ミントウは上体を起こし、アイスを受け取った。
そして、呻いた。
ミントウ
「げっ……チョコミントじゃねーか」
リア
「ミントウさま?」
ミントウ
「歯磨き粉味なんか、食えるかよ」
その瞬間。
大気が、凍った。
リア
「…………」
異様な雰囲気を感じ、ミントウは思わず、リアの顔を見た。
ミントウ
「ヒッ……!?」
慈母のようだったリアの顔が、鬼神のそれに変わっていた。
……。
翌朝。
ホテルのミントウの部屋。
ミントウたちのパーティの、緊急会議が開かれていた。
ミントウ
「…………」
ミントウは、寝室の床に正座させられていた。
今のミントウは、冒険者スタイルの衣服を、身に纏っていた。
そんな彼を、3人の少女が見下ろしていた。
リア
「信じられません」
リア
「まさか、チョコミント味を、歯磨き粉だなどと……」
神官服を着たリアが、深刻そうに言った。
ミントウ
「いや。実際あの味は……」
レイナ
「はぁ!?」
リアの右。
金髪ツインテールの少女が、ミントウを威圧した。
彼女の名はレイナ。
軽装鎧を身に付けている。
彼女も、ミントウのセックスフレンドだ。
少なくとも、ミントウの側は、そう認識していた。
彼女は、聖騎士のクラスを持つ冒険者だ。
元は王宮に仕える騎士だったが、リアを守るため、冒険者になった。
ミントウは、レイナを賭けで負かし、強引に一夜を共にした。
詐欺に近い手口だったが、レイナは寛容に、ミントウを許した。
優しくすれば、つけあがるのが悪党というものだ。
ミントウは、その次の晩も、レイナを抱いた。
それからは度々、2人は寝室を同じくしていた。
レイナ
「チョコミントが歯磨き粉だなんて、舌が腐ってるんじゃないの?」
彼女は、ミントウにだけは口が悪い。
嫌われているのかもしれない。
ミントウはそう思っていた。
だが、いざベッドに入ると、しおらしく甘えてくる。
なのでミントウは、レイナのことが嫌いでは無かった。
さておき。
2対1で責められるのは、辛いものが有った。
ミントウ
「ミルル。助けてくれよ」
ミントウは、3人目の少女に、助けを求めた。
ミルル
「ミントウ……」
リアの左側に、ローブ姿の少女が立っていた。
彼女の名前はミルル。
当然、ミントウのセックスフレンドだ。
ミルルは青髪の、小柄な少女だ。
その見た目からは想像がつかないが、彼女は有名な宮廷魔術師だった。
将来を約束された身だったが、リアを守るため、冒険者になった。
ミントウは、なし崩し的にミルルを押し倒し、強引に一夜を共にした。
99割強姦だったが、ミルルは寛容に、ミントウを許した。
優しくすれば、つけあがるのが悪党というものだ。
ミントウは、その次の晩も、ミルルを抱いた。
それからは度々、2人は寝室を同じくしていた。
ミルルは、声を出すのを恥ずかしいと思う性分だ。
行為の最中に、なるべく声を抑えようとする。
それを強引に鳴かせるのが、ミントウの楽しみだった。
ミルル
「今回ばかりは、あなたを庇ってはあげられない」
ミントウ
「えっ? どうして?」
ミルル
「チョコミントを歯磨き粉と言うのは、脳に障害が有るとしか思えない」
ミルル
「もうあなたとは、やっていけないかもしれない……」
ミルルは悲しそうな顔で、そう言った。
ミントウ
「そこまで!?」
1度セックスして以来、ミルルはミントウに甘かった。
そんな彼女がミントウを拒絶するなど、初めてのことだった。
レイナ
「そうね。ミルルの言うとおりだわ」
レイナ
「チョコミントを歯磨き粉と言う男と一緒に居たら、いずれパーティは全滅するわ」
ミントウ
「ナンデ?」
リア
「確かに、その通りです」
リア
「ミントウさまには、パーティを出て行ってもらうしか、無いようですね」
ミントウ
「えっ? 冗談だよな?」
ミルル
「…………」
レイナ
「…………」
リア
「…………」
ミントウ
「……………………」
ミントウ
「マジで?」
こうしてミントウは、パーティを追放された。
……。
数日後。
ミントウ
「クソが……」
ミントウはたった1人で、ダンジョンに潜っていた。
パーティを追放された以上、王家の金は当てにできない。
3人のセフレを同時に失ったせいで、金が無ければ女も抱けない。
自力で遊ぶ金を、稼ぐ必要が有った。
ミントウは、一応は冒険者だ。
稼ぎたいのなら、ダンジョンに潜る必要があった。
幸いミントウは、SSS級という、そこそこ高いランクの冒険者だ。
それにニンジャというクラスは、単独行動に向いている。
1人でも、戦闘は可能だった。
とはいえ、1人で潜るダンジョンというのは、わびしいものだ。
色気が無い。
ミントウの心は、ささくれ立っていた。
ミントウ
「あー、面倒くせえ」
ミントウは、モンスターがドロップした宝箱と、向き合っていた。
宝箱には、罠がかかっている。
ニンジャのクラススキルで、解除する必要が有った。
金のためとはいえ、地味な作業だ。
ミントウは苛立っていた。
ミントウ
(これが普段なら、リアがこっそり、おっぱいを腕に当ててくれたりするのに)
苛立ちは、スキルの成否に影響した。
ガチリ。
嫌な音が聞こえた。
宝箱が開く音では無い。
トラップの作動音だった。
ミントウは珍しく、トラップの解除に失敗していた。
15年ぶりの失敗だった。
ミントウ
「しまっ……!」
閃光が、ミントウの体を包み込んだ。
ミントウ
「……………………」
ミントウは身構えたが、特に痛みなどはやって来なかった。
ミントウ
「…………?」
ミントウは、自身の体を見回した。
だが、外傷は見当たらなかった。
立ち上がって手足を動かしても、異常は感じられない。
ミントウ
(何だ? ただの目くらましか?)
ミントウ
(いや。ここは深層だ)
ミントウ
(そんな生温いトラップが、有るわけがねえ)
ミントウ
(即死級のトラップ。そのはずだ)
ミントウ
(だったらこれはいったい……)
ミントウは、左腕を見た。
そこには冒険者の腕輪がはめられていた。
ステータスなどを表示してくれる、冒険者の必需品だ。
ミントウ
(ステータスウィンドウ)
ミントウは、腕輪を胸の高さまで上げると、そう念じた。
すると空中に、半透明の、薄い板のようなものが浮かび上がった。
そこには、ミントウのステータスが表示されていた。
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ミントウ=ゴロツキー
クラス ニンジャ レベル93
スキル 影潜り レベル9
サブスキル 戦力評価 レベル3
ユニークスキル デスストリングス
カースドスキル チョコミント化
効果 触れたアイスクリームが全てチョコミント味になる
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ミントウ
「ちょ……」
ミントウ
「『チョコミント化』……?」
ミントウ
「なんじゃこりゃあああああああああぁぁぁぁっ!?」
ミントウはのろわれてしまった。
……。
ミントウ
「ウソだろ……?」
ホテルの自室に、ミントウの姿が有った。
室内のテーブルに、カップアイスが並べられていた。
カップの蓋は、全て開けられていた。
カップには、バニラ味、チョコ味、ストロベリー味などと表記されている。
だが、中身は全て、チョコミント味だった。
最初からそうだったわけでは無い。
ミントウのカースが、アイスをチョコミント味に変えてしまっていた。
中身に直接触れたわけでは無い。
カップに触れただけだ。
それだけで、全てのアイスは、チョコミント味に変貌してしまった。
ミントウ
「そんな……俺の命より大切なアイスタイムが……」
ミントウがこの世で最も愛するものが、アイスクリームだ。
2番目がセックスで、3番目は自分の命だ。
アイスの楽しみが奪われたということは、ミントウにとって、死の宣告に等しかった。
ミントウ
「ぐ……ふぐぅぅ……」
ミントウは泣いた。
そしてアイスのカップを掴み、放り投げようとした。
ミントウ
「こんなもの……!」
だが、できなかった。
たとえそれがチョコミント味でも、アイスをゴミにすることなど、彼にはできなかった。
ミントウ
「こんなもの……こんなもの……」
ミントウは泣きながら、スプーンを手に取った。
そしてアイスを1すくい、口に含んだ。
ミントウ
「やぱり……歯磨き粉の味じゃねーか……」
ミントウはそう言って、スプーン2杯目のアイスをくわえた。
3杯、そして4杯。
そして彼は、あることに気付いた。
ミントウ
「あれ……?」
ミントウ
「チョコミント、うまくね?」
彼は今まで、まともにチョコミントアイスを食べたことが無かった。
1口だけ食べて、歯磨き粉っぽさが嫌になって、家族に押し付けた。
それが、彼にとってのチョコミント体験の、全てだった。
だが、きちんと何度も口に含むことで、チョコミントの良い部分が見えてきた。
そうして彼は、チョコミントのおいしさに気付いたのだった。
……。
ミントウ
「うめえうめえ」
ミントウは、一心不乱にチョコミントアイスを食べていた。
アイスは1日5杯まで。
そんな自身が決めたルールも破り、6杯目のアイスに手をつけていた。
そのとき、部屋のインターホンが鳴った。
ミントウ
「何だァ?」
ミントウは、アイスとスプーンを手に、部屋の出入り口に向かった。
リア
「ミントウさま……」
レイナ
「…………」
ミルル
「…………」
部屋の前の廊下には、リアたち3人が立っていた。
ミントウ
「リア? それに、お前らも、どうした?」
レイナ
「その……」
レイナ
「あなたは頭おかしいかもしれないけど、さすがにパーティから追い出したのは……って」
レイナはびしりと、ミントウが持つカップを指差した。
レイナ
「チョコミント食べてるじゃない!?」
ミントウ
「ああ。美味いなコレ」
ミルル
「良かった……」
ミントウ
「うん?」
ミルル
「あなたの知性が正常化したのなら、また一緒に冒険出来る」
ミントウ
「えぇ……」
リア
「どうしてカップはバニラなのに、中身はチョコミントなのですか?」
ミントウ
「いろいろ有ってな」
レイナ
「おいしそうね。私たちの分も有る?」
ミントウ
「やらんぞ」
レイナ
「えっ?」
ミントウはバタリと、部屋の扉を閉めた。
ミントウ
「チョコミントは全部俺のもんだ! ふはははははっ!」
レイナ
「こらーっ! 開けなさいよーっ!」
……。
10分後。
ホテルのドアはミルルの呪文で爆散し、4人はチョコミントアイスを食べていた。
ミントウ
「ってなことが有ったわけさ」
レイナ
「なるほどねー」
レイナ
「けど、ピンポイントでチョコミント化って、そんなこと有る?」
ミルル
「不思議」
リア
「ひょっとすると、神さまが私たちを、見ていらっしゃったのかもしれませんね」
ミントウ
「暇だな。神」
ミルル
「リアが聖女だからかも」
ミントウ
「聖女さまの奇跡ってか?」
ミントウ
「……まあ良いか」
リア
「そうですね」
リア
「うまく物事が収まって、良かったと思います」
リア
「いくらなんでも、チョコミントを歯磨き粉と言うような人では……」
リア
「お父様に結婚を認めていただくのは、難しいと思いますから」
ミントウ
「結婚って?」
リア
「えっ?」
ミントウ
「えっ?」
レイナ
「えっ?」
ミルル
「えっ?」
リア
「ミントウさまは、私の婚約者……ですよね?」
ミントウ
「いや……」
ミントウ
「セフレだと思うけど?」
リア
「…………」
レイナ
「…………」
ミルル
「…………」
3人の少女が、チョコミントアイスをテーブルに置いた。
その後、ミルルの妊娠が発覚したり、色々と有ったが……。
それはまた、別のお話。
めでたしめでたし。
お読みくださりありがとうございました。