ヲタッキーズ59 ノストラ・ダム子の大失言
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"がヲタクの平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第59話"ノストラ・ダム子の大予言"。さて、今回は胃袋を切除された花嫁姿の異次元人の死体が見つかります。
背後に異次元人の大脳にある"妄想葉"を秋葉原に密輸する組織の存在が浮上し"リアルの裂け目"のアチラとコチラで脱走と追跡が…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 殺された3人の花嫁
深夜の和泉パーク@東秋葉原。
とっくに人通りの絶えた街だが、公園にはコピーを片手に何かを探す人々が溢れている。
威圧的な軍服?を着た彼等は、これまたヤタラと吠える軍用犬?に何かを探させている。
何を?いや、誰?
「ココだ。止まれ!」
アチコチに散っていたライトが一点に集まり公園の一角に軍服?の集団が大集合。
吠える犬が四方から遮光器土偶(木像だけどw)?を見つけて来てドヨメキが起きる。
指揮官?が手にしたスケッチを見て叫ぶ。
「見つけたぞ!」
崖の下には…花嫁姿の死体が3体。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
約20分後。現場はパトカーと制服警官で埋まる。
「被害者は?」
「花嫁姿の女性3人。blood type"BLUE"。異次元人です。身元を秋葉原デジマ法データベースに確認中。コレ以上は、鑑識待ちで」
「血痕からスルと…ココで殺されて崖下へと投げ捨てられたって感じ?」
部下の刑事達から報告を受けるのは、万世橋警察署の敏腕警部ラギィだ。
制服警官が張った非常線の黄色いテープをくぐって現場へと入って来る。
「警部。死体は内臓を抜かれてます」
「え。また大脳を抜かれてるの?"妄想葉シンジケート"の仕業かしら?」
「違います」
異次元人の"妄想葉"は、妄想を膨らませる能力を司る大脳の1部で大変な高価で"取引"される。
末期ガンなどに劇的な効果を持つ他に、捕食によるスーパーパワーの生理活性化作用も認められる。
つまり"食べれば誰でもスーパーヒロイン"だw
「違うの?また頭をパッカリ割られて"妄想葉"だけ摘出されてルンじゃナイの?」
「いいえ。今回、頭は無傷です。その代わり、多分、その、うーん多分、心臓じゃナイかな。胸部にフランケンシュタイン並みにハデな摘出手術の痕があります」
「え。心臓が摘出されてるの?アステカの人身御供かしら。そー言えば、現場に変な木像もあったンだっけ?いずれにせょ、犯人は相当にイカれた連中みたいね」
「いや。コレはメッセージだろう。異次元人には悪魔崇拝が多いからな」
話に割り込むヤタラと上から目線な物言いに、思わずラギィ警部が振り向くと、例の軍服?姿の指揮官だ。
「恐らく3人とも次元難民だ。警部、我々は次元自警団"バカの絶壁"。本件殺人の第1発見者だ。私は、団長のバッカ」
なるほど、絶壁級のバカそうな顔をしてイルw
上から目線で手を出され嫌々握手するラギィ←
「万世橋警察署のラギィょ。貴方達は、なぜ真夜中の和泉パークを捜索してたの?」
「本部に通報があった」
「徘徊中のお爺さんから?」
「いや、家族からだ…じゃなくて!霊能者からだ」←
自信満々でヘタウマな絵を見せられるw
光速でヤル気が失せて逝くラギィ警部。
「見ろ!この絵を描いてココだと」
「霊能者が?で、彼は今どちらかしら?」
「彼女、だ。アソコで君の部下と話している」
指差す先に制服警官に何事か熱心に語る長身の人影。
「ヤレヤレ。真っ先に自分が容疑者になるコト、チャンと予知してるの?」
警部の方を振り向く霊能者は…腰まで長い黒髪の女。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋警察署の取調室。
「私の名は、ノストラ・ダム子。貴女、私が犯人だと思ってるわね?」
「やっぱりモノホンの霊能者だわ。私の心を読まれちゃった!」
「疲れるw貴方、私の力を全く理解してナイようね。違う?」
「違わない。で、貴女のヘタウマな絵だけど、ヤタラ細かいンだけど、東秋葉原には良く来るの?」
「来たコト無いわ。この肉体はね」
マジックミラーの向こう側では、警部自らの取調べを刑事達が固唾を飲んで見守っている。
「つまり?」
「私は、イメージを意識に投影出来るのょ」
「ははぁ心神喪失で無罪を主張の線ね?」
「神より授かりし才能だわ。ビジョンが次々と目に浮かぶ。ジグソーパズルのピースのように」
マジックミラーの向こう側で一斉に頭を抱える刑事達。
「ソレらをまとめ、画集として販売してルンだけど、そのついでに貴女達に通報したまで」
「自警団"バカの絶壁"は、ソンな画集を信じて、真夜中に総動員をかけたの?」
「2年前も協力した。団長の娘が家出した時に」
「その時も貴女は容疑者に?」
「何で?私は、団長から頼まれたのょ?結果、私のビジョンにより、娘は見つかって無事保護されたわ。今回も同じ協力をしたいと思ってる」
「そう…何か見える?」←
「今は、未だ何も見えないわ。でも、商業的な条件さえ揃えば見えるハズょ」
「商業的な条件?」
「私のビジョンに警察のお墨付きが欲しい」
「ええっ?何でょ?」
「次に画集を出す時に帯に一言…」
「お断り!」
「何でょ?箔がつくのに」
「貴女は殺人の容疑者なのょ?宣伝ナンか出来ません!しかし、お金を稼ぐには良い手ょね。勝手に事件を仕込んで霊能力で解決してみせる。タコが自分の脚を食べてるみたい」←
「タコ?馬鹿げたコトを言わないで!」
「秋葉原を出ないでね。パスポートも預かるわ」
「ソレこそ、お断りよっ!明日、ベトナムでビジョンを見るの。国家首席のペットの亀が逃げて…」
「あぁもぉウンザリ!今日は帰ってヨシ!」
ところが…霊能者が席を立たないw
「貴女のパパは、息子を欲しがってた。違う?」
「な、何ょ?」
「貴女は末っ子。上に姉が3人。両親には、貴女が最後のチャンスだった」
「人の性生活、じゃなかった、私生活を覗かないで!」
「悪いけど、コントロール出来ないの」
「じゃもっと修行してょ!」
「まだアルのょ?貴女の…誰も知らないコト」
怒髪天を突く勢いで取調室を飛び出したラギィ警部は隣室で頭(や腹w)を抱えてる刑事達に八つ当たりスルw
「誰か!彼女を怒らせてパスポートを押収して来て頂戴!」
「け、警部が御自分でなされば良いのでは?」
「私は…調べるコトがアルのっ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
…と逝う顛末の動画をジャドーのラボで見る僕達←
ジャドーはアキバに開いた"リアルの裂け目"からヲタクを守る、首相官邸直轄の秘密防衛組織だ。
で、僕達と逝うのは、僕と、僕の推しミユリさんが変身したムーンライトセレナーダーもルイナと…
「どう思う?」
「あの霊能者、間違い無く事件に関係してるハズね。とにかく、ビジョンなんて信じちゃダメ絶対」
「じゃインチキだと証明してくれょルイナ」
ルイナは史上最年少の首相官邸アドバイザーを務める天才でヲタッキーズの科学顧問でもアル。
ヲタッキーズとは、ミユリさん率いるスーパーヒロイン集団でジャドー傘下の民間軍事会社だ。
「科学的に見て"霊能力"が存在する証拠は無いわ。全てニセモノね」
「わからないぞ、ルイナ。僕も見たコトがアル。誰も知らない元カノの存在を言い当てる人とか…」
「ソレ、ミユリ姉様のコト?テリィたんの元カノは、連絡を取り合って同窓会とか開いてるじゃない。みんな誰でも知ってる既知の事実ょ」
「そ、そーなのか?」
「あのね。ヘタなダーツも何本も投げれば当たる。多分彼女は、ミスは無視して成功だけ見ようとスル輩、今、流行りの楽観バイアスの女ってワケ」
「うーんダーツとは違うよーな気もスルがな」
「他にも合理的な反論ならいくらでも出来るわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
事件は、万世橋のジャドーの合同捜査となる。
「被害者に関して、何か情報は?」
「3人ともインディオ系の異次元人で10代後半から20代前半。被害者第1号は、3日前まで"リアルの裂け目"の向こう側にある"妄想村"にいた。秋葉原には、来たばかりだったみたい」
「"妄想村"?あの"妄想葉シンジケート"が妄想葉を売る異次元人を集めてる村?リアル秋葉原へ送り込むためのゲートシティなのね」
「高輪ゲートウェイ的な?」
ちょっち違うが…
ヲタッキーズのエアリとマリレが万世橋に設置された捜査本部で情報交換中だ。
エアリは、ヲタッキーズの妖精担当。マリレはロケットガール装備の空飛ぶ系。
「秋葉原デジマ法に登録ながないと身元が割れないわ。入"秋"審査の際の指紋データも無いし」
「どの次元から来たかも不明ね。刑事さん、検視報告は?」
「おぅヲタッキーズの姐さん達。まだ現場の所見しか手元にねぇ。犯人は3人の花嫁の腹を切り裂いた。しかし、裂いた奴に医学的な知識はなさそうだ。後は解剖待ちだが、例の土偶に関する情報なら入って来た」
「ユーネックスなになに?やはり悪魔教?」
「いや、逆だった。聖週間と呼ばれるお祭りで使われる土偶で、本来は、婚姻の儀に使われる"ケコーンの木"らしい」
「華厳の滝?日光?そんなのアリ?」
「現代の宗教と縄文精神文化が融合だ。宗教と科学は紙一重だからな。確かに結婚自体は悪魔の儀式だが…」
「ソレで死んだ3人は花嫁姿だったのね?でも、花婿の死体が無いとは差別だわ」
「オカルト雑誌"ラー"編集部から寄せられた情報に拠れば、あの3人はヲタクとの婚姻に際し、神への生贄として捧げられた可能性がアル」
光速で溜め息をつくヲタッキーズw
「何ソレ?ヲタクと結婚スルための人身御供?あり得ない。キモ過ぎ」
「ソレがそーでもナイ。"リアルの裂け目"の向こう側では、ヲタクとの結婚を夢見て次元を渡る異次元人の女が増えている。ヲタクと結婚すれば、魂のアウフヘーベン、つまり浄化が行われ、現状を超越・昇華した高次の存在になれると思ってる」
エアリがボードに貼られた死体の写真を指差す。
「こうなるとは、夢にも思わずに?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時にエレベーターのボタンを押そうとスル2本の指。
「あら」
「おっと。ごめんなさい」
「私こそ」
万世橋の捜査本部を出たエレベーターホールで、互いの顔を見合わすのはルイナと…ノストラ・ダム子だw
「何?」
「失礼。見つめる気はなかったの」
「貴女…和泉パークの現場で私を見てた人ね?」
鋭く突っ込むのはダム子だ。
「驚かないわ。私が見えたンでしょ?」
「おや?貴女は霊能力を信じてないのね?」
「YES。貴女自身は信じてルンでしょうけど。自分に超能力がアルと固く思い込む霊能者は多いから」
「でも、貴女は信じてない。論理的じゃないし、明確な証拠がナイから」
「…YES」
慎重に答えるルイナ。
「では、こう言っても驚かないわね?亡くなった貴女の母親の霊が隣に見えるわ」
「ソコまで行くと貴女、立派に詐欺師の仲間入りだわ」
「あら。どーして?」
「私について、何を言い当てても無意味ょ。秋葉原では、私は知られた存在だから。従って、母が死んだコトはヲタクなら誰でも知ってる。せっかく調べてくれたのに悪いけど、ソレを超能力に見せかけようなんて立派なペテン師だわ。気に入らない」
エレベーターが来てドアが開くが…今度は無人w
「お先にどうぞ。私は次のに乗るから」
ダム子は答えズ会釈しエレベーターに乗る。
ドアが閉まる瞬間まで、その顔には薄笑い←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌朝。銀行強盗の現場を片付けた鑑識が、やっと和泉パークにやって来る。そして、現場を一目見るなり…
「キャタピラの跡だわ」
「え。あら、ホントだわ?」
「最近雨が降ったばかりだから、最近のモノですね。
どちらにせよ、車じゃ公園の中は走れません。小型のハーフトラックでしょう。しかも、相当走り込んでますね。前輪がスリ減ってます」
「コロナで戦争映画がリバイバルヒットし、世界中でケッテンクラート症候群が再燃したけど…この夏には製造中止になったハズょ」
「再販仕様のケッテンクラートか」
「早速メーカーに当たります」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ジャドーの社食。カフェテリア方式だ。
「太平洋の向こう岸の国でも、情報機関は霊能者を使ってるわ。ルイナがソレを認めるかは別だけど」
「その結果、世界中で治安への信頼が崩れたのでは?」
「ねぇ…ルイナが超心理学的な現象を否定する証拠は何なの?」
「ズバリ現実性です、司令官」
「それじゃあニュートンは?アインシュタインや量子論はどーなるの?」
口論しながらレジを済ませるのは、ジャドーのレイカ最高司令官とルイナ。
レイカは、好意でルイナの分まで払おうとスルがルイナは断固として拒否←
「あ、司令官。自分で払います…霊能力は科学じゃないですょ」
「海の向こうの大学で、研究成果が2つ発表されたわ。今も人の脳は進化を続けていて、働きを強める2大遺伝子が急激に変異を遂げてるらしい。だとすれば、単純な遺伝子変異によって、私達にだって特殊な知覚が生じる可能性がアル」
「シカゴでの研究なら良く存じております。私の認知発現の研究にも組み入れるつもりだし」
「あのね。脳が素粒子レベルまで感知出来るよう進化すれば、モノが現れたり消えたりスルし、時間を進めたり戻したりするコトも出来る。その可能性を否定スルつもり?」
「司令官。市ケ谷の社食で、ヘンなモノを食べました?」
最高司令官は絶句スル。
「ヘンな…モノ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、現場で鑑識が写真を撮る横で、タマタマ?通りかかった自警団"バカの絶壁"団長のバッカに刑事が事情を聴取。合同捜査なのでエアリも立ち会う。
メイド服でw
「凄惨な事件だ。"壁"は捜査に協力を惜しまない。何でも協力する」
「では、東秋葉原に詳しい貴方に伺いたい。この土偶を見たコトあるか?東北由来のモノのようだが」
「次元難民の多くが持ち込むのは、タロットカードや蝋燭だ。コレは…初めて見るな。殺人と関係があるのか?」
「否定出来ない。腹を裂かれた崖の周囲にコレが置かれていたンだ」
「ソレは…メッセージかもしれない」
「誰からの?」
「サボテン」
「え。」
「幻覚サボテンだ。ペヨーテはサボテンの一種で、陶酔性成分メスカリンが鮮やかな色彩幻覚を見せる。昭和に流行ったマジックマッシュルーム、
テオナナカトルはシビレタケ属の毒キノコで、やはり幻覚成分サイロシンを含み乾燥させたモノだ。コカの木から抽出精製されるコカイン同様、幸福感、楽天感、性欲亢進に効果があるが、精魂的依存性も高いw」
「まさに、快楽、宗教、医療は紙一重だな」
「さらに、ペヨーテは集合的無意識としての地球が持つ電離層のプラズマ振動周波数と妄想葉の周波数をシンクロさせるコトにより、全ての閉塞感に突破口を開き、あらゆる魂を高次に覚醒させる」
「うーんサボテンのコトじゃないね?」
「YES。異次元人の妄想葉を刺激スル分泌物を密輸スル組織があるンだ。残虐な連中だょ」
「またか?今度もシンジケートかょ?」
「大金が絡む商売だ。異次元人も業者を間違えると…あーなる」
崖の下には、殺された3人の花嫁w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
バッカと別れ、エアリと刑事達は和泉パークを歩く。
「ヲタッキーズのメイドさん。犯人はペヨーテだと思うか?残虐な点は合っているが、蝋燭や遮光器土偶を置く理由がワカランなぁ」
「やっぱりメッセージじゃないかしら…あら?」
「どうした?」
「ケッテンクラートだわ!」
和泉パークの一角は、さながらバラック村のようになっており次元難民がホームレスのように暮らしてるw
ソンなバラック村の中に、オートバイの後輪がキャタピラになったよーなケッテンクラートが停車してる。
「近くでキャタピラを調べよう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あのケッテンクラートは誰のだ?」
刑事がバラック村の中で大声を出すと、何ゴトかとアチコチから心配そうな顔が覗く。その中でイキナリ…
脱兎の如く駆け出す男がいるw
「待て!万世橋警察署だ!」
よせば良いのに刑事が拳銃を構えて追うモノだから、男は余計に必死になって逃げ回り、バラック村を大きく1周しスタート地点に戻りケッテンクラートに乗るw
「ヤメろ!」
エンジンキーを回したトコロで追いついた刑事に拳銃をつきつけられ、アッサリとホールドアップする男w
「動くな!」
「動かない!逃げる気は無い!」
「じゃ何で逃げた…ま、いいや。手は挙げとけ!」
うなずく男。刑事に手荒く操縦席から引きずり出されて、ケッテンクラートに手をついて脚を広げて立つw
「キャタピラの跡が一致しそうだ。お前には限りなく不利な展開だょ。同情スルな」
さらにエアリがケッテンクラートの荷台を調べると…
「ねぇコレを見て」
遮光器土偶が出て来るw
第2章 国境の街
早速"ケッテンクラート男"は捜査本部の取調室だ。
「ビクタ・ボルボ。お前の身元は確認した」
「なら、帰してくれ。俺は、秋葉原デジマ法に登録した合法次元移民だ。法的権利も保障されてイル」
「死刑になる権利もな」
「な、何の話だ?」
今やお馴染みの殺された3人の花嫁写真を見せられる。
「ヒ、ヒドいな…でも、俺が犯人だと?冗談だろ?」
「俺達とコチラのメイドさんが冗談を言ってる顔に見えるか?現場のキャタピラが、お前のケッテンクラートと見事に一致した」
「当たり前だ。和泉パークには仕事で毎日行ってる」
「仕事って、どんな仕事だ?」
「次元難民の支援だ。団体名は"ヤンゴトなき騎士団"」
「お前が騎士か?!で、どんな支援をしてルンだ?」
「給水所を作ったり、寒い時期には、毛布や服を配給スル。夏には暑さで68人も死んだ。夢を追って東秋葉原に来たのに」
「この土偶は何だ?お前のケッテンクラートに積んであった」
「和泉パークの難民キャンプの近くで拾った。婚姻の儀に使われるケコーンの木だ」
「なぜ逃げた?」
「奴等かと思った」
「誰だ?」
「次元難民を敵視スル自警団"バカの絶壁"だ。団長のバッカは、俺のコトを敵視している」
ヲタッキーズのエアリ(メイド服w)と刑事達は、顔を見合わせコッソリ溜め息、肩を落として取調室を出る。
「ヲタッキーズのメイドさん。悪い話だ。ダム子は以前、内調にいたらしい」
「え。スパイだったの?」
「スパイと言うより、兵士だな。超能力者を兵器として使おうとした"バビル酸性雨計画"にエスパーとして採用されてる」
「国家に認められた超能力者?私達スーパーヒロインも認定してょ!で、次元花嫁が殺された夜のアリバイは?」
「ダム子は、ベトナムにいた。誰かのカメが逃げたとか何とか…アリバイは成立してる」
若い刑事が口を挟む。
「ボルボの方は、確かに人権団体の代表として、次元難民を支援してます。そのボルボが怪しいと言ってるのが自警団"バカの絶壁"。前から次元難民に嫌がらせをしていたそうで"ヤンゴトなき騎士団"とは、揉めゴトが絶えなかったようです」
「"ペヨーテ"の名が出て来ないわね」
「幻覚サボテンを密輸スルのに儀式を装う必要はありませんから。ところで、アレはイニシエーションラブを呼ぶ像だそうです」
「射幸心を煽って次元難民を呼び込むマーケ(ティング)なんだな」
「乙女の越境意欲を掻き立てる作戦ね。パワーストーンみたいな」
若い刑事が応じる。
「YES, my maid。ただし、異次元人の乙女です」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ジャドーの司令部は、パーツ通りの、とあるゲーセンの地下深く秘密裡に作られて、ルイナのラボがアル。
「レイカ司令官!"バビル酸性雨計画"について、首相官邸で何か聞いて来ました?税金の無駄遣いだったって散々な評価でしょ?」
「ルイナ、決めつけないで。私も調べたけど、メリットもあったみたい。その後も、官邸は超能力者なる人材を採用し…」
レイカは、ココで口を挟もうとしたルイナを制して…
「遠隔透視の訓練をして成果を上げてるわ。アベノマスク時代、大陸の国の爆撃機が南西諸島に墜落した。その時も鹿児島の霊能メイドが墜落現場を正確に透視し捜索隊を導いてる」
「声帯を切り取ったヤギを何時間も見つめて、誰かを呪い殺そうとしながら?」
やっと口を挟むルイナ。因みに、ルイナはメイド服でレイカはゲーセン店員のコスプレでコスモルックだw
「とにかく!ダム子も"バビル酸性雨計画"に参加していたワケょ」
「あ!ラギィ警部、助けて!レイカ司令官は、もう救いようがないけど、貴女はダム子ナンて信じないわょね?」
会話アプリを使って捜査本部のラギィに話しかける。
「ソレが、彼女に言われちゃって…」
「げ。何て?」
「その、あの、何て言うかスゴい個人的なコトなんだけど」
「私だってエレベーターの前で言われたわ。きっと、ネットで下調べしただけょ」
「ソレが調べても何処にも載ってないコトなのょねw実は私…10年間もパパと口をきいてナイ」
「わ。ヒドい。ナゼ?」
「そうねー。パパの期待に応えられなかったからカモ。でも、ソレがなぜかダム子にバレてるw」
「あのね、警部。確かにダム子は巧妙だけど、適当なコトを言ってるだけなの。警部の誰かを信じたい気持ちにつけ込んでるだけ。ダマされないで」
「ルイナにしては、珍しく非科学的な仮説ね」
「根拠ある理論ですぅ」
「ソレは、ルイナの見解ょ」
「じゃあ司令官。テストしましょ!その黒魔術の子を。思い知らせてやるわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
次元自衛団"バカの絶壁"のバッカ団長宅。
何処でどう儲けているのか、駅に直結した高級タワマンの中層階だ。
メイド服のエアリと刑事が深夜の訪問者となってピンポンを鳴らす。
「バッカ団長?ちょっとお話を。ナゼ自警団を?」
「東秋葉原で起きている問題をどうにかしたくてね」
「どんな問題ですか?」
「不法な次元難民だょ。700万人もいたら、秋葉原の経済が傾く」
「だから、ケッテンクラートで次元難民を追い回して異次元に送り返そうとしてるの?」
「万世橋警察署は、もっと警戒すべきだ。テロリストが難民に紛れて秋葉原の地下に潜入したら?」
「その心配は、我々に任せてください。今は異次元人の花嫁3人が殺された件です」
「恐ろしい事件だね」
「貴方達には好都合でしょ?コレでしばらく異次元からの違法難民も減るわ」
「おやおや。俺達は、君達のような秋葉原メイドの安全を守っているンだょ」
「団長。メンバーの当番表を拝見出来ます?」
「断る」
「バッカ団長。我々は、犯人を必ず捕まえる。もし、犯人が自警団員だったら"バカの絶壁"は秋葉原の笑い者だ。少なくとも昭和通りより西には出入り出来なくなるぞ」
「そ、そーかな?」
「当たり前だょ。たった1人の不心得者のために"壁"全体の名誉が損なわれる。諸君の純粋な動機が一般人に踏み躙られルンだ」
「きゃー!どーしょー?おまわりさーん!」
「ソコで相談だ。内密に調査すれば被害は出ないし、誰にも知られずに済む。さぁ"壁"の当番表を見せてくれ」
第3章 大予言の光と影
再び捜査本部の取調室だが、今度はダム子の番だw
「ドッグショーの犬になった気分だわ。棒でもくわえようかしら」
「御自由に。でも、証明がないと信用出来ないの。貴女の著書に"カード当てナンてヘッチャラ"と描いてあったわ」
「まぁ!未だ私を疑ってるのね?」
答えズにカメラをセットするルイナ。
「始めて」
正面の刑事がダム子にトランプを裏にして見せる。
「黒」
即座に応えるダム子。
刑事は もう1枚引く。
「黒」「赤」「黒」「黒」…
延々と続くw
「OK!もう良いわ!」
取調室を飛び出したルイナをレイカが呼び止める。
「ルイナ!どーしたの?百発百中?」
「ううん。ハズしてる」
「やっぱりインチキだったのね?」
「いいえ…25枚とも全部ハズレです」
「全部?」
「司令官。全部外れる確率は、全部合ってる確率と同じです。つまり… 3350万分の1」
「…からかわれてる?」
再びドアが開き、顔を出したダム子がニヤリと笑う。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラボで先程の動画を食い入るように見るルイナ。
「ココょ!後ろの窓に反射してるわ!司令官、ジャドーの技術班にデジタル画像処理をお願い出来ないかしら?」
「ルイナ。確かに、不正行為の可能性は否定出来ナイけど…」
「ノストラ・ダム子は稀代のペテン師ょ!」
「中世にも、1字違いで同じコトを言われた人がいたけど、気になるのはルイナの強硬な姿勢なの。他の可能性も考えるべきじゃナイかしら?」
レイカ司令官自ら天才のナダメにかかるw
「とにかく!あの実験で霊能者が証明されたワケではありません!」
「オリオン星雲の原始惑星系円盤は、ハッブル望遠鏡が作られるまで見えなかった。でも、実は何千年も前から存在し、その存在を知っていた人々がアフリカにいたのょ」
「超感覚的知覚は、見えなくても存在するとおっしゃるのですか、司令官は?」
「あのね。私達は、限られた知覚で宇宙を観測しているの。私は可能性を認めるわ。この宇宙には、我々の知覚を超えた現実があるハズょ」
「司令官!しかし、ソレを科学とは呼びません」
「シェイクスピアをもじると"天地には数学も及ばぬコトもありき"」
「所詮は、妖精の話を描いた作家の言葉です」
「信念体系ではなく方法論の問題だわ。1つの過程に固執スルばかりに、相反する情報を除外スルのは、科学じゃナイわ。ソレは政治ょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。万世橋の捜査本部。
「自警団"バカの絶壁"のメンバー全員の経歴を調べたけど…特に怪しい者はいないな」
「普通の家庭人や会社役員ばかりね。思想的な偏りも無さそうだわ」
「あ、警部。そーなんですょ独り者でイカれた奴とかはいません」
「あーあ容疑者なし、か。被害者の身元も不明だし、相変わらず突破口が見つからないわ」
「なるほど。あの霊能者は?」
「ダム子?ソレが立派なアリバイがあるのょ」
頭を抱えるラギィ警部。
エアリが思案顔で逝う。
「そうじゃなくて…協力を頼んでみたら?」
全員が思わズ顔を見合わせる中、捜査員が駆け込んで来て、ラギィ警部に敬礼、ファイルを手渡して去る。
「警部、何の書類ですか?」
「残り2人の検視報告が上がったわ。被害者第1号とほぼ同じょ。20歳前後インディオ系の異次元人。おや?コチラは熟練者による切創とアルわ…待って!」
「何です?」
「死亡時刻が…3人とも違ってる」
「違うってどの程度?」
「被害者第2号が殺されたのは、第1号の前日ょ。第3号は、さらにその2日前」
「え。連続殺人?」
「とゆーコトは、他にも遺体がアル?」
「他にもアルどころか、今後増える可能性もアルわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ダム子宅。コチラも立派なタワマンだ。
霊能者って案外儲かるのカモしれない。
「あら?可愛いメイドさんの訪問だわ。おかえりなさいませ、お嬢様って、私が言うべき?」
「え。私達の来訪は予知出来なかったの?」
「う。ソ、ソレは…あら、コチラは?」
「アキバのヲタク代表でテリィと申します」
「あの"地下鉄戦隊メトロんX"原作者のテリィたん?キャー!抱いて!」
冗談じゃナイょ。ダム子を捜査に加えたがるエアリのコトをラギィが持て余し僕に押しつけただけなのにw
「で、どーなの?その"ビジョン"は?何か"未来"が見える?」
「YES。また女性に危険が迫ってるわ。コレを見てくれる?」
「わ。お得意のヘタウマスケッチ、キター。でも、全力でわからないわ。コレ、何の絵?」
「ソレが…未だビジョンが不鮮明で…実は、私にもわからないのw」←
「全然ダメじゃん」
「で、でも、別の女がハッキリ見えるわ!複数カモしれない」
「まだ生きているの?」
「今は動いてるわ。移動してる」
次々スケッチを見せられ…ますますわからなくなるw
「ああっ!他にも見えるわっ!」
伊達メガネを外して、大袈裟にこめかみを押さえる。
「彼女達は妊娠している!前の3人の時も同じに感じたの。全員シングルマザーょ!」
「ソンな…検視では確認されてナイわ」
「あのね。コレは夢と同じで、解釈の問題なの!」
だから何?黙ってお手上げポーズをするエアリw
「じゃ!とりあえずスケッチ全部持って、ジャドー司令部に出頭して」
「あら?私のリクエストは?」
「こんな時にも交渉かょ」
「YES。交渉スルには今を置いて他にないわ、テリィたん」
「君って編集者要らずだなw羨ましいょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ジャドー司令部。
ラボから出て来たルイナは、ダム子がレイカ司令官と話し込んでるのを見て肝を潰し、エアリを詰問スルw
「ナゼ彼女が?!」
「あ、ルイナ。また殺人が起きそうな気配なの」
「そーゆー予言なの?」
エアリは頭をヒネる。
「まぁ証拠は無いンだけどね」
「ジャドーが霊能者を信じるナンて!」
「でも、カードを全て当てたわ」
「あ!私、その件でみんなに話がアルわ」
「捜査が行き詰まり、今はどんな協力でも欲しいの。ソレから、ダム子を使うと決めたのはテリィたんだから」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
レイカとダム子の話に、ムリヤリ割り込むルイナ。
「貴女!カード当てだけど、全部わかってたのにワザと間違えたわね?」
「私をテストしたのは貴女?分析したのも貴女ね?」
「あらあら。また霊能力のアピール?」
ココでダム子は、ルイナだけに聞こえる小さな声で。
「貴女。私に仕事を奪われると思ってる?」
「まさか。どーせイカサマでしょ?」
「違うわ」
ルイナはヒソヒソ話に終止符を打ち、再び大声で。
「貴女。そのメガネ、いつもいじってるわね?」
「緊張すると…癖ょ」
「私も最初そう思った。でも、その後画像を拡大してみたら、緊張の癖はトリックだと分かったわ。貴女は伊達メガネにカードを写してたのょ!どぉ?モノホンの科学の力、思い知った?」
すると、ダム子はケラケラ笑い出すが、全く動じズに笑うサマは…見ようによっては爽やかでスラあるw
「ねぇ貴女に1つ聞くけど。もし、貴女に誰かを救う力があったとしたら…その力を使う時に、いちいち他人の目を気にスルかしら?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ノストラ・ダム子の最新のスケッチょ」
捜査本部のボードにスケッチを貼るラギィ警部。
「犠牲になりそうな女性は、今も移動してるそーょ」
「移動してる?バスか飛行艇かな」
「異次元からとなると飛行艇ね」
「バッハデルソルとシエラボタの2社は"リアルの裂け目"を渡るエアルートがあります」
「飛行艇の便を特定出来ても誰を探せば良いやら」
「死んだ3人の花嫁の情報がもっと必要だわ」
「身元さえ特定出来れば、犯人の正体や動機に迫れるカモしれない」
「やはり…ダム子に透視させましょう!」
ソコへ凛とした声。
「ねぇマジックより科学を試そ?ジャドーは、科学組織なのょ?」
「ルイナ!何か手がアルのか?被害者と共に"リアルの裂け目"を越境した異次元人がわかれば」
「フォッカープランク方程式なら、ある外力下に置かれた物体のカオス的動きが割り出せる。例えば動物の群れょ。群れは動きを決める外力は様々。群を惹きつけるのは、水飲み場や食料源、安全な休息場など。逆に群を遠ざけるのは、捕食者の存在や敵のテリトリー。この外力が群の移動する方向や距離を決定スルわ」
「その方程式が次元難民にも当てはまると?」
「YES。どんな群の動きにも応用出来る。水飲み場に当たる外力は、安全な仕事や清潔な難民キャンプね」
「ふーん」
「捕食者に当たる外力は、自警団や警察ね。被害者第1号の越境は3日前。ソレが出発点ょ。もし、同行者がいたらフォッカープランク方程式で現在の居場所までわかるハズ」
「マジか。やってみてょソレ。その間、ダム子のスケッチをもとに捜査も進めとけば?ラギィ」
「そっね」
ルイナは、抗議するような目で僕を見るw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードを改装したらヤタラ居心地良くなっちゃってスッカリ常連の溜り場だw
ただし、女子は僕の推しである、メイド長のミユリさんの流儀に従ってメイド服着用だけど。
「うーんフォッカープランク方程式が人の動きに応用出来るかわからなくなった!何でっ?」
「そんなコトだと思ったわ、クスクス」
「何ょミユリ姉様まで…秋葉原はいつから合理的思考を捨てちゃったの?」
すっかり煮詰まってるルイナがフレンチなメイド服で御帰宅して来る。
カウンターの中からヴィクトリアンなメイド服のミユリさんが応じる。
「ヲタク的意見としては、合理性でくくれない妄想にこそ、人はホッとするモノなの」
「確かに未解明の事象はアルわ。でも、ミユリ姉様。その謎を解くのが科学なの。合理的方法論にこそ事象を解く鍵がアルと思うの」
「確かに。でもね、アキバの全てが合理的とは限らないわ。ルイナはお利口さんだけど、その辺りがわかってないわ」
今にして思えばソンな最悪タイミングに僕は御帰宅w
「テリィたん!今度、占い盤でP-NP問題を解いてみてょ!遮光器土偶やケコーンの木でも使って」
「え。華厳の滝?今年は凍るかな…以前も首相官邸は霊能者を使ってる。マグレ当たりでも、捜査が進展すればラギィは万々歳さ」
「悪いコトは言わない。時間の無駄だわ。私の仕事を認めて。ファッカープランク方程式をペテンと一緒にスルのはヤメて!」
ミユリさんがカウンターから身を乗り出す。
「テリィ様、ルイナ!2人とも冷静になって」
「テリィたん。私、今回は降りるわ。後はダム子に頼んで。霊能者のノストラ・ダム子に」
「待てょルイナ!何処へ逝くンだょ?」
「ルイナ、待って!」
ルイナはお出かけ、今度はミユリさんに睨まれる僕w
第4章 国境を越えた女
その頃、捜査本部でテンパるダム子w
「水よっ!水を強く感じるわっ!何か重要な意味があるハズなんだけど!」
「水と言っても…水たまり?川?海?」
「わからないわっ!ただ水を感じるのっ!」
埒があかない。お手上げ顔のエアリ。
「ソレだけじゃ正確な場所は割り出せないわ」
「すまないケド、今はコレしか言えないの。多分も少し後で…」
「後って?どれくらい?」
「最初の事件の時も、ビジョンがハッキリしたのは…死人が出てからなのw」
ますます埒があかないwソコへ…
「わかったわ!どうせまだ未解決でしょ?」
「ルイナ!この件からは降りたンじゃなかったの?」
「私に人を救う力があるなら、雑音は気にしないコトにしたの」
雑音って僕?笑
勢いよく捜査本部に入って来たのはルイナで"潜り酒場"を出てからズッと考え事をしてたのかメイド服のママだwソレを見たダム子は不安そうに顔を伏せるw
「東秋葉原の地図を!はい、この辺りが難民キャンプね?被害者第1号の同行者数が不明なので、3種類に分けてアルゴリズムにかけてみたわ。5人から10人。10人から20人。20から30人の3グループょ。結果はコレ。彼女と"リアルの裂け目"を渡った人物は、68%の確率で、この3箇所のどこかで見つかるハズ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「パツキン姐さんの予測が出た!力を貸してくれ!」
万世橋の全署員が制服も私服も、警官もコックも業者も"ルイナの地図"のコピー片手に現場へ飛び出すw
「やぁ。この写真の女子、知らない?」
「え。何も知らない?マジ?」
「どうも。こんにちは」
"ルイナの地図"が示す3箇所の内2箇所までが、異次元人の難民キャンプだ。もちろん1箇所は和泉パーク。
「すみませんセニョリータ。お元気?」
「見たコトありませんか?」
「いや、知らないょ」
でも、異次元人達は皆、悲しげに首を振るばかりだ。
「知りません?見かけたとか…」
「全然?スミマセン。この人を見たコトは?」
「コッチはどーかな?」
勢い余って殺された3人の花嫁画像を見せる者もいる。
「どうだ?」
「ダメだ。怖がって誰も話さない」
「怖がられてるのは、俺達警察なのか、殺した犯人なのか…ちょっと失礼、こんにちは。殺された花嫁を見かけませんか?」
遂に1人、写真を凝視、目を逸らす異次元人が現れる。
「セニョール!花嫁を見たのか?」
「どうか教えてください。彼女は誰ですか?」
「面倒は御免だ。困るょ」
冬直前だというのに、麦わら帽子をかぶった農夫のような風体の異次元人の男。意を決して重い口を開くw
「…その子なら知ってる。彼女とは"妄想村"で出会い、一緒に"リアルの裂け目"を渡った。彼女の名前はアルパ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部。
「警部!被害者第1号の面が割れました!花嫁達は"妄想村"で合流し、暗くなるのを待って"リアルの裂け目"を越えた模様」
「彼女の名は?」
「アルパ。"リアルの裂け目"の向こうにある小さな街メタパの出身だそうです」
「"リアルの裂け目"の向こうに写真と指紋を送って確認を取って。小さな街なら確認出来るカモ」
「ソレから警部、アルパは秋葉原に働きに来たのではなく、数日後には異次元に帰ると言っていたそうです!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「警部!"リアルの裂け目"の向こう側に、花嫁3人の写真と指紋を送りました」
「身元が割れそう?」
「異次元でも捜索願が出てたそうです。花嫁3人は、同じメタパの出身ですが、知り合いではなかったらしい」
「友達じゃない?でも、一緒に越境したンでしょ?そして、恐らく同じ人物の手で殺された。なぜ彼女達が狙われたのかしら?」
「メタパ当局によると、失踪者はあと2人います。1人はロメメ。1週間でリアル秋葉原から戻ると言い残し越境したママ行方不明w」
「花嫁3人と同じパターンだわ。彼女達の共通点は何なの?数日で帰る秋葉原ショートステイ。何か目的があるハズょ」
「ヲタクと結婚しに秋葉原へ来る異次元人女子は多いと聞きました。出産が目的では?」
「そー言えば、確かダム子も妊娠のビジョンを見たとか口走ってたわね」
「でも、検視では誰も妊娠してなかった」
ココで珍しくヒラメく僕←
「ちょっち待った!Baby じゃなくて、何かを捕食してお腹に入れてきたンじゃナイかな?」
「ま、まさかS2機関?」←
「確かに blood type は"BLUE"だし…麻薬の運び屋なら、麻薬の入ったラテックス製の風船を飲み込んで越境スルって聞くけど」
「恐らく"妄想葉"だ。花嫁は"妄想葉"を飲み込んで"リアルの裂け目"を渡って来ルンだ!」
「確かに、ソレなら秋葉原ショートステイの説明もつくわ。秋葉原で"妄想葉"を胃から取り出して異次元にトンボ帰りってワケか」
「でも、今回は上手くイカなかった。問題が起きたンだ」
「"妄想葉"が買い手に渡らなかったか、買い手が金を惜しんだか?」
「ちくしょう!現場の蝋燭や遮光器土偶は捜査を撹乱スルための小道具だったのか!」
「何者かが、花嫁が捕食した妄想葉を取り出すために彼女達を殺したw」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ほぼ同時刻の"潜り酒場"。捜査本部とは会議アプリを使いオンラインで繋がってる。リモート勤務だねw
「しかし、異次元人とは逝え、若い娘が3人も揃って妄想葉を飲み込むとはなwどー思う?"潜り酒場"のミユリさん」
「とても信じられません、捜査本部のテリィ様。もし捕まったり風船が胃袋で破けたら?」
「麻薬の密輸なら死亡確実だね」
「なのになぜ…」
「他に2人いるンだろ?どうやって救う?」
「万世橋がジャドー経由で"リアルの裂け目"の向こう側に写真をバラ撒いたから…ソコから何か手掛かりが見つかれば良いけど。今はソレしか手がナイょね」
「じゃあ…塩を貸して」
割り込んで来たのはルイナ。またも煮詰まってしまい"潜り酒場"にリフレッシュで御帰宅(メイド服でw)。
「今からカウンターの上に簡単な図形を作るわね。頂点は3つ。塩は出発点ね。花嫁達が住んでた"リアルの裂け目"の向こう側の小さな街…」
「メタパ」
「じゃ塩がメタパ。胡椒は"妄想村"ょ。3つ目の頂点は水の入ったコップで秋葉原。順に考えょ?妄想葉を捕食した場所はメタパじゃないわ。秋葉原に着く前に排泄されてしまうから」
「ソレじゃ虚しいな」
「だから、捕食したのは"リアルの裂け目"を渡る直前の"妄想村"だわ。"妄想村"で捕食し、秋葉原に入った。この3つの点には関係性がアル。ソレを数値化出来れば犯人像が浮かぶわ」
ココでラギィ警部が素っ頓狂な声をあげるw
「わあっ!」
「どーしたラギィ?宝くじでも落ちてた?」
「殺された3人の花嫁は、開胸手術で胃袋を抽出されて捕食した妄想葉を回収されてたンだっけ?」
「YES。ソレが何か?」
「"リアルの裂け目"の向こう側からの情報に拠れば、異次元人は妄想への渇望から妄想葉を捕食スルらしいの」
「確かオカルト雑誌"ラー"にもソンなコトが描いてあったな」
「異次元では、妄想葉の捕食には処方箋が必要なの。ココにメタパの薬局が発行した処方箋のコピーがあるンだけど…」
「え。」
「薬剤師の免許証の名前と顔写真を見て!」
「レハド・ボルボ?…くそっ!移民支援団体のボルボか。しまった!せっかく捕まえたのに保釈してしまった(警部がw)!」
「次元難民の支援を口実に、妄想葉の運び屋が花嫁姿で来るのを難民キャンプで待っていたのか!」
さらに背後で大きなドヨメキが起こるw
「"外神田ER"に異次元人女子ロォズ・デルリが担ぎ込まれました。胸腹部のエックス線で"妄想葉"の捕食を確認!」
「ロメメ・ヴァルじゃない?彼女は?」
「既に"リアルの裂け目"を渡ったのか?」
「もう秋葉原に来てる。今頃、ボルボのトコロへ向かってるハズよっ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ボルボのアパートを強襲したチームから緊急連絡!
「どう?ボルボは見つかったの?」
「警部、アパートはマヌケのカラです!目下、携帯のGPSで位置を確認中」
「ダメダメ"リアルの裂け目"周囲は圏外ょ。ソレからマヌケじゃなくてモヌケだから…ダム子!ソッチは何か見えた?」
「今も水を感じるわっ!女性はその近くにいるハズよっ!」
「水って…神田リバーか、東京湾か、神田駅前ソープか」
「ヤメて、テリィたん…確かなデータは、ロメメが"妄想村"を出た時間ょ。その6〜8時間後には、妄想葉は排泄されてしまうから」
ルイナの言葉にうなずくラギィ。
「前の犯行現場からすると、恐らく人里離れた僻地が選ばれるハズ」
「では、ソコは捜索範囲から外しましょう」
「万世橋や自警団も避けるハズだわ」
「"バカの絶壁"の巡回ルートはわかってる。ソレでも…未だ広過ぎるわ」
「空からなら捜索可能です、テリィ様。エアリ、マリレ。ヲタッキーズ、出撃ょ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
何とミユリさんと入れ違いでジャドー率いる沈着冷静なレイカ最高司令官が御帰宅…フレンチなメイド服w
「ルイナ。よく戻って来てくれたわね」
「司令官!私こそ、ゴメンなさい。ただ…」
「わかってるわ。気にしないで」
ソコへレイカのスマホが鳴動。
スピーカーに切替えるレイカ。
「こちらジャドー司令部。司令官、量子コンピューター衛星"シドレ"がボルボのトラックを発見しました。ヲタッキーズが追跡中」
「ロメメも?」
「衛星軌道からの赤外線探査では、確認出来たのはドライバー1名のみ」
「もう殺されてる?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田明神通りを疾駆するトラック!
ところが、中央通りとの合流点には、ライトを明滅させ満艦全飾のパトカーが何台も逝く手を阻む!
だが、トラックは全くスピードを落とさズ強行突破…スル直前に青白い閃光が走りトラックを直撃!
どっかーん!
ムーンライトセレナーダーの"雷キネシス"を喰らったトラックが大爆発!ドライバーが飛び出す!
萌えるジャンパーを転げ回って脱ぎ捨てたトコロで…ヲタッキーズに取り囲まれてるコトに気づくw
「待て!何かの間違いだ!」
「そうね。貴方が保釈されたのが間違いだわ」
「助けてくれ!ムーンライトセレナーダー!」
「最後のチャンスをあげるわ。ロメメは何処?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田川沿いの廃ビルの地下室。
ヲタッキーズとジャドーの特殊部隊と制服の警官隊が踏み込む。
手にしたライトが、地下室の四方の壁、床、天井を照らし出す。
水のペットボトルが落ちてるw
その奥に後ろ手に縛られて、猿轡を噛まされてる異次元人女子w
ブービートラップを警戒しながらも、全員が全速力で駆け寄る!
「It's OK!私達はヲタッキーズ。もう誰も貴女を傷つけないわ」
泣き崩れるロメメ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
暁の万世橋 捜査本部。
「ロメメもロォズも"外神田ER"で胃袋から"妄想葉"を取り出せたわ」
「ラギィ警部。ソレは良かったわ。率直に事件の解決を喜びましょう。ソレから…貴女には天賦の才がアルわ」
ダム子は、会議アプリを通じルイナに語りかける。
「どーも。でも、貴女に言われたくナイの」
「…さて。ラギィ警部、約束通り今回の捜査記録に私の名前の記載をお願いね」
「わかってる。後で書類に署名だけして」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
暁の"潜り酒場"。
「最悪よっ!コレでノストラ・ダム子は秋葉原で大活躍したと触れ回るわ!」
「でも、ルイナ。ペテン師とは言い切れないカモょ?」
「テリィたんまで!いいえ、絶対にペテン師だわっ!」
「新たな被害を予知したのは確かだし…」
「テリィ様、また口論ですか?ルイナも、もともと意見が違うんだからヤメたら?」
「いや、ヤメない。ルイナ、ダム子のスケッチから花嫁の死体が見つかったコトの説明は?」
「ヘッチャラょ。きっと、若い頃に麻取にいたンだわ!」
「論拠薄弱だろ、ルイナ」
「じゃテリィたん、霊感に導かれたって説の論拠は?」
「いや、全面的に信じてるワケでは…ってかソンなコト逝ったっけ?」
物音。振り向くと"前カノ"の写真が床に落ちてる。
「霊だとか言い出さないでね、テリィたん」
「よせょ。未だ死んでナイし。でも、不思議だな」
「タダの偶然だと言うの?」
「YES。ってかソレしかナイし」
「絶妙のタイミングですね、テリィ様」
「単なる偶然だって」
ミユリさんの愉快そうな笑顔が、実に気に喰わないw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜。神田川沿いに停車中のパトカー。
「あ、ママ?私ょラギィ。いいえ、元気ょ。ごめん。今、仕事が終わったの…パパはいる?…そうょね。水曜の夜はバンドだモノね。いいの。大した用事じゃナイから。また電話する。えぇ大丈夫。もう寝て。またね」
おしまい
今回は、海外ドラマでよくテーマとなる"臓器売買"を軸に"妄想葉"を売る異次元人達、ヲタク優越主義の自警団、ヲタクとの結婚を餌に異次元人乙女に"妄想葉"の捕食を強いる臓器ブローカーとその組織、その全貌解明に奔走するヲタッキーズと天才顧問などが登場しました。
さらに、東秋葉原の次元難民の世界や臓器を売る異次元人乙女のダマされ方などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、第4次コロナ宣言解除後のコロナは何処?状態の秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。