茂の本気には誰も勝てない
俺と腕相撲をした向井は俺に負け呆気にとられているが同じグループの三年生が沈黙の中言葉を発した。
「う、うそだろ....。向井が負けたのか?」
喋っていた先輩は心ここにあらずの顔をしている。
「ふざけんなー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
向井がいきなり雄たけびを上げた。教室にいた全員が耳をふさいで目をつぶっていた。
「いきなりなんですか向井先輩?」
俺はただただ疑問を投げかけました。
「なんですかじゃねー!!お前インチキしやがったな!!」
「腕相撲でインチキって何ですか?面白いこと言うんですね」
俺は、クスクスと笑って言った。俺のグループの人どころか教室にいる大多数が笑っていた。
すると向井は、
「うるせー!とにかく俺は負けてない!もう一回俺とやりやがれ!!」
「どうせグループで勝った二人がトーナメントにいけるんだからそこでやりましょうよ」
俺は笑みを崩さずに言った。
面白いほど短気な先輩だな。俺に力比べで勝てるわけないのにな。
「ふざけんな!!もう一回って言ったらもう一回だ!!今やりやがれ!!!」
荒々しい口調で鋭い眼つきをして殺気を放ちながら言った。
すごい殺気を感じるんだけど....。どれだけ負けたのが悔しいんだよまったく。
俺は、ハァーとため息をはいて言った。
「わかりました。その代わり左で勝負をしましょう。それでしたら今すぐ勝負しましょう」
「いいだろう!!早くしろ!!!」
「悪いが和樹掛け声をかけてくれ」
了承をもらい和樹のほうを見てお願いした。
和樹は頷いた。俺と向井は左手を机の前に出して再び腕を組む。
さっきより明らかに力が強いな。なんだよこの人も左利きか。関係ないけどな。次は本気でやらせてもらおう。あそこまで挑発されたんだからお返しされても文句言うなよ。
俺は左手に思いっきり力を入れて向井の手を握った。和樹は俺と向井が組み終わるのを確認して掛け声をした。
「よーい!スタート!」
と次の瞬間。土台にしていた机が壊れて向井の腕が地面にたたきつけられた。向井は完全に気を失っていて地面にのびている。先生を含める俺以外の全員が目が点になっている。
本気出すとすげースッキリするよな!
「ね、ねぇ茂君。なんでそんなに力が強いのよ?」
近くにいた舞が俺に話しかけてきた。舞の表情が少々険しくなっている。
「俺は小学生のころから趣味で筋トレをしているからな。机は壊す気なかったけど間違えて壊しちまった」
俺は舞のほうに向き笑顔で言った。
舞がびっくりするのは無理はない。俺もほんの少しだけど自分の腕力にびっくりしてるんだ。本気でやったのは五年ぶりだからな。
クラス中からいろいろな声が聞こえる。一年生は主に、
「茂が三年生倒しちゃったよ」とか、「あの人強い」だった。
三年生からは、
「おい!あの向井がやられちまったぞ」や「あの一年生かっこいい」
などが多かった。中には小声で、
「あいついなくなったら計画中止になるじゃねえか」
もあった。俺以外には聞こえてないだろうけどな。
向井との試合が終わり呆気なく俺は腕相撲に優勝した。