お見合い
「先生、めっちゃ肩が凝ってるんですよ、どうにかなりませんかね。」
「どうにもならんわ、がんばれ。」
二週間に一度通っている、整形外科の先生は、非常にこう、フレンドリーというか、容赦ないというか。
「ロルカムとミオナール出しとくから。あとリハビリね。」
「くそう、いつまでこの痛み続くんだ…。」
首を回すたびに、ぎゅるぎゅる鳴る、肩の筋?ボキボキ、バキバキ、派手な音をたてる割に、ちっとも肩こりが治らん!!
「まあ、そんだけ乗っけてたらどうにもならんわ。」
私の肩に乗る、陰気な女子と陽気な青年、ぼんやりしたばあさんを見ながら先生がつぶやく。
…そういう先生の腰にも、いろいろひっかかってんですけど?!
ええと、気弱そうな青年に、恨めしそうな爺さん、あとは…カッパ?どこで拾ってきたぁ!!
「先生こそ!!そろそろギクッと来そうだけど?!」
「そうなんだよ、マジヤベえ…。」
お互い見えると気が付いたのは、五年前。
「「ちょ・・・!!すげえもんついてんな!!」」
まさかのハモリで判明した。
あんときはイケメンの根暗とヤンキー女学生連れてったんだよ。
先生は純真な女子と極道の兄ちゃん引っ掛けてたな。
で、お互いのつれてるもん見合いさせて、消化したのだわ。
純真女子とイケメンはラブラブになって天に昇り、ヤンキー女学生は極道兄ちゃんと共に全国浮遊の旅に出た。
さて、今回は?
見合いはうまく行くのかいかんのか。
・・・。
緊張が走る。
おお!!気弱青年と陽気な青年が意気投合しとる!!まさかのBL展開に胸アツだ!!!
陰気な女子は…婆さんと爺さんに囲まれてうれしそうだ!!なになに、三人で温泉めぐりをするとな!!
か、カッパが一匹残ってるんですけど!!
わあ!こっちきた!!
「ちょっと!!先生すっきりしたけど私の方に一匹残っちゃったじゃん!!」
「わりい!ちょっとしばらく預かっといて!じゃまたね!!」
「なんだこのくそ藪医者め!!」
「聞き捨てならねえな!!俺のヘルニア手術の腕知らんくせに!!」
「しらんわッ!!!」
怒りに任せて診察室のドアを閉めて待合室に出て行ったら、診察待ちの患者さんたちが変な顔してこっち見てた…。
ヤバイ!!まあでも、仕方ない!!変な噂立ったらそれまでだ!!ヘルニアの手術うまいんだったら気にする必要ないか!!
きもーち、肩こりは解消したけど、まだちょっと重い。
ずっと乗っかってるとねえ、ダメージも蓄積するのよ、ほんと。
リハビリで、肩をほぐしてもらってると、カッパが腰にしがみついてきた。
ぎっくり腰はちょっと困るな。動けなくなると困る。
さてどうしようかなあと考えて、リハビリを終えて帰宅すると。
河童が血相変えて、庭のほうにすっ飛んでいった。
なんだ・・・?ああ!!
そういえば、きゅうりの苗を植えたんだった。
これはいけるかも?
幸い庭にはめだか池もある。
うまくいけば、我が家の守り神になってくれるかも。
何だ、いい感じじゃん。
すっきりした私はまだ、このとき気が付いていなかった。
きゅうりの大豊作で大変な目に合うという事に。
とってもとっても生えてくるきゅうり。
どうにもならなくなって、整形外科の先生に無理やり押し付けたんだけどさ。
今年はきゅうりは植えるまいと思ったんだけど、なんでか植えてもいないのに、きゅうりの芽が出てきた。
これはいったい…!!!
大喜びのカッパを横目に、私は今年の豊作を感じ、一人頭を抱えた。