第2話 織宮憂緋 C
それから午後は、静かに過ぎていった
残ったのは、体の痛みとシップ・・・
あの後、千恵が戻ってきてそのまま保健室に行ったのだった。
シップは貼ってもらったが、とくに
大きなケガは無いという。
よかったのか・・・どーなんだか・・・
「っっ・・・冬島は、処刑にするべきか・・・?」
そんなことを真剣に考えていたとき、声をかけられた。
「大丈夫か?」
朝にも聞いた声、杉水有志のものだ。
「え?・・・うん、へーきだよ。」
自然に振舞うように努力───
「そうか・・・悪かったな」
「べつに杉水君は、悪くないんだし・・・」
悪いのは、全部冬島なのだ。
あいつのせいで私がおかしくなっている。
この気持ちも・・・・
「まぁ、許してやってくれよ。あいつはドジすぎるだけで、
わざとじゃあないんだ。」
杉水が言うのなら許してやってもいいかな─
と思ったりする。
草陰から覗く2つの筒・・・・
望遠鏡である。織宮憂緋と杉水有志を見ている。
「なぁ、何故俺がこんなことしなくちゃならないんだ?」
言ったのは、緑色の帽子を無理矢理かぶせられた
火乃村 誠。
「だからさっきも言ったでしょ?キューピットは、
1人じゃ無理だって分かったのよ。
だから君が2号で、私をサポートするの♪」
答えるは、ピンク色の鉢巻をつけた里中千恵。
鉢巻には、『恋愛の神!!!』と書いてある。
「むっ!2人は、一緒に帰るようだ!つけるぞ2号!」
「俺帰っていいか・・・?」
下校中・・・中身の無いような時間の中にいるみたい
会話はしている──でも中身が空・・・
これは────何?
ヒョウゥゥと風が吹き
桜の花びらが一斉に巻き上がる。
「それにしても─織宮?」
「はひぃ!? 何??」
不意に名前を呼ばれ声が裏返る
「お前っていつも雪丸と追いかけっこしてるよな──」
「え?」
「案外お前って雪丸と仲良いな。」
グサッッ!
何故か・・・何故か刺さった──
胸を貫かれた感じ・・・なにこれ・・・
『脈なし』そんな言葉が頭をよぎった。
え?脈なしってどういう意味だっけ?
えーと脈が無いから・・・・死んでるってこと?
「・・・・・・・・」
「むう!見失った!ここは、エアガンを発砲して──」
「もう意味が分からんのだが・・・・帰っていいか?
てか、周りの人の目が痛いんだが・・・」
里中の更なるキャラ崩壊と織宮の得体の知れないダメージが
同時進行した1日であった・・・