第14話 もう冬で、そして C
「憂緋っ! 話があるの、来て!」
朝、学校についてすぐに唯に呼ばれた。
話の内容は大体分かる。それは……クリスマスについてだと思う。
千恵も昨日言っていた。『唯ちゃんとのことも考えないとね~』と。
もう、腹をくくらなければいけない。
久しぶりに木刀を携え、行こう。※戦いに行くわけではありません。
「織宮どーしたんだ? いつもにも増してオーラが出てるぞ?」
「さぁ?………大方、戦争にも行くんじゃないのか?」
視界の端で火乃村君と冬島君が何かを話しているが聞こえない。
聞かなくていい。聞こえなくていい。
戦場では、他人の言葉なんて必要ない。※何度も言いますが戦いに行くわけではありません。
「よし、……唯! 今、行く!」
木刀を仕込み、いざ戦場へ。
「今日の織宮すげーな」
「雪丸君……女の戦争は男の戦争より激しいらしいよ」
「そうなのか。俺の知識がまた増えたな……」
「火乃村っ! それ多分違うよっ、ってか俺初めて突っ込みしたかも!」
「誠君! これは僕しか知らない情報だっ!」
「そうか……偽情報か」
「憂緋、ついに避けられない対戦の日がきたんだよ」
「そうね、唯。逃げることなんて許されないからね」
「「クリスマスの日をどうするか」」
2人の声が重なった。
場所は屋上へと続く階段の踊り場。
唯は、雰囲気出るから屋上のほうがよかったね。などと言っていたが、
あまり関係ないように思える。
「昨日黒板にあれを書いたのは間違いなく千恵よ」
「そうみたいだね。確信はないけど」
なかなか話し合いが始まらない。2人とも切り出すべきところが見つからないのだろう。
私もそう。恐いんだ。
その日にどうなっているかなんて分からないから。
ましてや、どちらかだけが選ばれるというところから。
「決着をつける方法………考えたんだ」
「何?」
「それは………やっぱり有志に選んでもらうことだよ。それでね、………
私達が2人同時にクリスマスのことについて言うの。『クリスマスの日に、どちらかを選んで』
って。それで、選ばれたほうが………」
「分かった。そうしよう」
話し合いはだんだんぎこちなくなってくる。
空気が重いので話題転換を図る。
「え、あ、唯?」
「なに? 憂緋」
「千恵ってさ………人のことどうこういうけどさ、………あの子には好きな人とかいないわけ?」
「………そうだよ! なんか人のこと遊んどいて本人は?って話だよ! よし行こう、
今すぐに聞きに行こう!」
「ちょ、えぇぇ?」
予想外の食いつき+行動力………
別にこんなことになるなんて期待なんかはしてなかったのに。
半ば強引に手を引かれ、階段を駆け下りた。
たどり着いたのはいつもの教室。
唯は、ドアを開け、叫んだ。
「千恵はどっこだー!」
クラスの連中は、「なんだ一ノ瀬か」、「今日は杉水じゃないんだな」
などと好き勝手言っている。
「おっれはここだぜぃ!」
声のした方向を見ると、栗原 雅と一緒に、教室の後ろにたまっていた。
「単刀直入に言うよっ! 千恵の好きな人はだれだっ!」
うわあ、いっちゃったよ。ほんとに単刀直入だ………。
「えー?おお?どうしたいきなり」
「かくかくしかじかだからだよっ!」
かくかくしかじかなんて久々に聞いたよ。
「そうか………ついに私の秘密を聞こうとするのか」
「いや、千恵。そこ意味わかんないから」
「おおっ! 秘密なのか!」
「あんさー、私置いて何の話してんのさ! 学級委員長の私にも聞く権利があるよ!」
ついには雅まで加わってきた。
「私は………お父さんが好きだぁー!」
「まさかのファザコンなの!? 千恵は!」
「いや、ギャグだからね、唯。気づこうよ」
「ファザコン………? 新キャラ?」
だいぶ収集がつかなくなってきた気がする。私が余計なこと言ったせいか。
「こほん。ま、実のことをいうとね………。私彼氏いるんだ」
ピキッ っと一瞬にして教室の空気まで凍った。
みんな、ありえないといった顔でこちらを見ている。
「い、いつもの冗談だよね……?」
恐る恐る聞いてみる。冗談でしょ?
「いやー、こればかりは本当。なんか黙ってて悪かったねぃ憂緋」
「え!お父さんじゃなくて!?」
「唯。そこまで引っ張るのはいいよ」
「学級委員長にも報告無しかぃ!」
「悪いね、雅いんちょー」
「「「……………」」」
3人は黙る。
まさか、まさかの超展開!?
「ああああ、相手は誰?」
「八百屋のてんちょーさん」
「犯罪じゃなくて!?」
「失敬な! てんちょーはまだ20代だよっ!」
「若っ! 馬路ヵよ千恵っち!」
「雅、あまりの驚きにおかしくなってるから」
私も本当に驚いた。何でもよく通ってるスーパーの前の八百屋だとか。
私と千恵は住んでいる区域が違うからわかんなかった。
さっき、黙っててごめんねーって千恵は言ったけど。
違う。みんなちゃんと自分で進んでいるんだ。
「彼女特典で、いつも割引だよー!」
………あまり愛とか関係なさそうだ。