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第13話 再来 E

4時限目のことだった。ケータイが震える振動で目を覚ます。

「ありゃ………?」

普段授業中に居眠りするようなことはなかったが、今日はいつの間にか

寝てしまっていたらしい。

そりゃあ……授業が嫌な英語だからかもしれないけど。

それでも寝るようなことはなかった。

昼食後とかなら分かるんだけどな。

そんなテキトーな理由探しを止め、ケータイを開いてみる。

ちなみに今は授業中。

着信が何回かあったらしい。その後にメールがきている。

俺は目を見開いた。




──────君のお父さんが交通事故で病院に運ばれた

      危険な状態らしい、今すぐ病院にくるんだ──────




どこの迷惑メールかと疑ったが─────いや、疑いたかったが

その差出人は糞親父の弟だった。

なぜ俺のメールアドレスを知っているかなんて問題じゃない。

なぜあいつがこんなことになっているのか、ということだ。

また、嘘をつくのか。

いや、本当かもしれない。

だったらどうする、駆けつける?

そしてなんて言う?「死ぬな」か?………馬鹿げている。

いまさらあいつがどうなろうと──────


そこで授業終了のベルが鳴った。

先生が教科書をまとめて出て行ったと同時にケータイが震える。

着信。

俺はそれに出た。


「はい────もしもし」

『もしもし? 有志くん、君のお父さんが────』

「知ってますよ。だからどうしろと?」

自分でも驚くくらいの冷たい声が出た。

電話の相手方も驚いたのか、黙ったままでいる。

「有志……?」

不安そうに雪丸たちが集まってくる。

『と、とりあえず危険な状態だから、来てくれないか』

「行って────どうなるんですか? それで救われるんですか?第一、なんで

 行かなきゃならないんですか。あいつは………駄目な奴だ」

『………来てくれること、きっとお父さんも待って───


プツン。と電話を切った。


「どうしたんだ。有志?」

雪丸が訊いてきた。

なんでもないよ、と返そうとするのだが、声が出ない。

「杉水君? どうしたの………ひょっとして、あの人?」

里中が感づいた。

「そっか、あの人が────どうしたの?」

もう隠すことはできないだろう。こういうときの里中はやけに鋭い。

「交通事故にあったって……」

「それで……行かないの?」

「ああ、いかねぇ」

少しの沈黙が訪れる。周りは昼休みで騒いでいるというのにここだけが

温度が下がったように思えた。


パタン、と教科書の閉じる音がして、それに振り返る。


火乃村が真剣なまなざしでこっちを見据えていた。

「それでいいのか?」

ずしり、とのしかかる言葉。

「後悔はしないか?……この選択で。どうなってっもいいと思えるか?」

「………」

言葉にはできなかった。

「伝えることが、あるんじゃないのか?………そうだな、俺だったら────ある」

火乃村は続ける。

「父は、どんな父だろうが………一人しかいないのだからな」


言うべきこと、………たくさんあるじゃないか。

原稿用紙にも収まらない数ほどの言葉が。

あった──────だろう。









その病院は皮肉にも、母さんが死んだ病院と同じだった。

今は危険な状態で、意識が戻っていないらしい。

医者曰く、あとは本人しだい。

そんな奴にかけてやるやさしい言葉なんて持ち合わせてないないがな。


横開きのドアを開けると、いつもの姿からは想像出来ないくらいの

痛々しく包帯が巻かれた父が横になっていた。

「調子に乗って外国車なんか乗りまわしてっからこういうことになるんだろうが」

乱れた息を整えつつ部屋に踏み込む。

「まったく……どれだけ傲慢なんだよ。また俺に嫌がらせか?」

言葉は、止まらない。

「本当にクズだな………逃げんのか、このまま」

父は言葉を返さない。

「何とか言ったらどうなんだよ、俺はまだてめぇを許しちゃいねぇんだよ! ふざけんな、 

 どこまで俺を馬鹿にすれば気がすむんだよ! てめぇはまだやり残してることがあんだよ!」

室内に自分の言葉だけが空しく響く。

「謝ってねぇだろうがよ、………そんなことやり残して死のうなんて勝手がよすぎんだよ!」


ドアが開き、アイツの弟が入ってきた。


「有志くん……来てくれたんだね」

「………」

「君のお父さんは……謝っていたよ。気絶しながら、何度も」

「それは……又聞きじゃあ意味ないんですよね。……コイツから────から聞くから

 結構です。それを聞くまで俺は……許しませんからね」

 

鏡には、濡れた男の顔が映っていた。








「生きてたのか」

目がさめて一番最初に聞こえた言葉がそれだった。

「ふん。俺が死ぬわけないだろう」

体を起こそうとするが、力が入らない。

「今なら俺はやりたい放題ってわけか」

こぶしを握り締め近づいてくる有志。

何をされたって文句はないはずだ。そういうことを演じてきたから・・・・・・・

ビュン、と空を切る音がして、そのこぶしは目の前で止まった。

こぶしを解いた有志の手の中からは、鍵が落ちてきた。

「この鍵、俺が拾ったんだ。どこかの家の鍵と似てるけど……あんたさぁ、これ」

それから有志はニッと悪戯をする子供のように笑って。

「100万でゆずってやるよ」

そう言った。















まぁ、………あれほど怒ってた割には……って感じでしたよね。

そこのところは、文章力以前にアイディアの問題でしたね。

自分でもいらない伏線張ってたと思いましたよ。放置して置けばよかったかなぁ?

それより!ここで一区切りです。次からは冬バージョンだっ!


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