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第12話 文化祭♪ D

そしてついに文化祭当日。

休日なので、学校外からも人がたくさん来る。

そういった意味ではかなり盛り上がる。

我らがクラスは、もうすでに大道具係の手によってホラーハウス化していた。

しかもそれは、かなり手の凝っているものであって、

ドアにはペンキが飛ばされ、血にも見えなくはなかった。

これ落ちんのか………?

「きたねぇ!これだよ私の求めていたものは!」

テンションが上がりすぎてもうスーパーハイテンションにでもなってしまいそうな

栗原 雅がそこにいた。

「どうだいこれっ!これもう血でしょ!?そして完璧でしょ!」

「つうかこれ落ちんのか……?怒られてもしらねーからな。」

そのときガラララッ、と教室のドアが開いた。

「オマエラ、ハヤクメイクシテシマエヨナ」

仮面の男ジェイソンがそこにいた。

「うわぁぁぁぁぁ!」

「きゃわあああああ!」

「おーい。俺なんだが……」

仮面をとったその下から現れたのは、火乃村だった。

「マジでびびったぞ……というか栗原、お前もびびりすぎだろ。」

「いやはぁ?びびび、んびびってないですよ!うん。」

うんってなんだ、うんって。

「とりあえずお前は猫男役なんだから。メイクも早くな。」

「お、おう。」

そういって教室の中に消えるジェイソ……いや火乃村。

演技、というか本物そっくりだったぞ。

火乃村を追って、俺も教室の中に入った。



ここはどこだ。まるで異界にでも来たかのような感覚。

もうここは、知った教室ではなかった。

井戸やら、障子やら、畳やら。

大道具係がんばりすぎだろ!?

「とりあえず猫男になったけど……」

なんか可笑しかった。猫より虎のほうが合っていると思う。

「と、いうか雪丸の姿が見えないんだけど。」

「たしかに……言われてみればそうだ。」

辺りを見回すが、雪丸はいない。

「確かに冬島がいないわね。」

そういったのは白い着物を着た織宮だった。

それがかなり似合っていて、一瞬言葉に詰まった。

「な、なによ……」

微妙に頬を赤らめてそう聞き返してくる。

「い、いや……似合ってるな」

「なっ─────。」

ボッ、と発火したかのように顔が赤く染まった。

「何2人で面白いことしてんだよー!」

唯がエプロン姿でずかずかと教室(もうすでにホラーハウス)に入ってきた。

「文化祭編に入ってから出番ないし!憂緋といい感じになってるし!

 もーうなんなのっ!文化祭一緒に回ろうって!じゃあ!」

「じゃあってなんだ!というか雪丸知らないか?」

「え!?そこで終了!?扱いひどくない?知ってるけどおしえなーい!」

いたずらをする子供のようにニシシシ、と笑っている。

こういうときは……


「じゃあどうしたらおしえてくれる?」

こういうしかなかった。

「じゃーね! 私のこと好きだー!って言って!?」

「いえるかそんなこと! いや……じゃあ言うから教えてくれ。」

「ほんと!?じゃあ言ってー」

そんなやり取りを複雑な目つきで見ていた織宮が横にいたが、

早く済ませなければならない。

「私のこと好きだー! はい。言ったぞ教えろ。」

「なにそれ反則っ!ちゃんといってー!」

「冬島君なら、なんか背の高い男の人に連れられてったよ?

 なんか雰囲気にてたからお兄さんかなぁ?」

そう教えてくれたのは栗原だった。

「兄さん……?」

その声色に気付いたのか、火乃村と、織宮も立ち上がる。

「すまん唯。また後でな。」

「ええ、ちょ……有志ー!」


そのまま3人は、走り出した。











途中から里中も加わり、目撃証言のあった中庭へと走っている。

何故雪丸の兄が現れたのか。

また何かしでかすつもりなのか?

だとしたら─────雪丸っ!

折角の文化祭を……



そんな有志の期待はいい意味で裏切られた。







兄貴が学校に来たときはびっくりした。

まずは髪型。赤髪から普通の黒髪に戻っており、

それほどワックスで立てているわけでもなかった。

その次に、スーツを着ていたということ。

話を聞くと就職したらしい。

それを聞いた時は驚きよりもうれしさの方が大きかった。

「雪丸。」

名前を呼ばれてびくりと震えるが、その声にはもう

嫌なものは含まれていなかった。

「な、なに?」

「いろいろとすまなかったな。あと、お前にこれ。」

差し出されたのは通帳だった。

「え……これは?」

「おれが働いてそこに金を振り込むから。お前はそれを生活に使ってくれりゃあいい。

 これはお前を放っておいた俺の償いだと、そう受け取ってくれ。

 結局、俺なんか言葉にできないんだ。何か行動を起こすことでしか

 償えねぇんだよ。な……?」

「あ、兄貴……おれ、……俺。もうこれだけでうれしいよ。」

久しぶりに泣いた気がする。

身内の前で。こんな気持ちで。

やっと、元通りになったのだろうか……

「さて、そこの角に隠れてる4人組み、出てきなよ。」

そういわれて出てきたのは、

有志、火乃村、織宮、里中だった。

「すんません。お兄さん。俺なんか誤解してました。」

そういって有志が頭を下げる。

探しに来てくれていたのだろう。

「いや、俺があんなことばかりしてたからな。信頼なんて、失くすのは簡単だからな。

 でも、キミ達のおかげだと思うんだよ。俺が立ち直ったのは。」

そんな大層なもんじゃないですよ、と有志が手を振っている。

「いや、とりあえずお礼が言いたかった。」

兄貴が頭を下げる。

もう、元通りになった。そう思えたのだった。



「じゃ、俺は行くよ。」

そういって兄貴は立ち上がる。

「え、もういくの?文化祭見て回らないの?」

本当はもっと一緒にいたかった。でもそんなに甘えていられない。

「うん。仕事があるからな。また連絡するよ。」

そういって携帯を掲げた。

「分かった。」

今わそれしかいえなくてもよかった。

「さて、そろそろ行こうぜっ!」

心のそこから笑えた瞬間であった。















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