第11話 体育祭だっ! D
≪これから、第37回体育祭をはじめます。≫
アナウンスが響く。知らなかった。37回目。
今日の天気は良好。薄い雲が張っていて、太陽は出ていない。
風も少し吹き、ちょうどよい温度だと思った。
暑いのは苦手だったりする。でも、もう秋なんだからそんなことはないと思っている。
まぁ、寒いのもイヤなんだが……
≪はじめは、団別で行います。皆さん指示に従ってください≫
メインがクラス別である場合、団別はウォーミングアップになる。
といっても、目立とうとする奴────主に馬鹿野郎とか、運動部の皆さんとかは、
本気でやってくる。リレーなんてすごいことになる。
馬鹿野郎は、その時点で飛ばされるが……
開会式も終わり、団の集合場所へと集まる。
「有志、がんばろうな〜」
「おう、雪丸。ウォーミングアップ程度にしとけよ。身体壊したら
クラス別の時、役に立たなくなるからな。」
「分かってるって〜」
こいつは本当に分かっているのかどうかはわから無い。
馬鹿じゃなくてドジだってところがせめてもの救いだったが。
そして100m走。各団2人ずつ、全員が走る。
よって順位は8位まで。ビリにはなりたくないものだ。
「フフフ……有志君。どうやら同じレーンのようだな。」
隣に猿山がいた。
「おわっ!びっくりした……猿山。お前足は速いほうなのか?」
「今日の日まで育ててきたこの足!とくと味わってもらうぞ!」
「足技の達人の戦う前の台詞みたいだな。」
そうこうしているうちに順番が回ってくる。
位置について………よーい、ドン!
パアンと火薬銃が音をたてる。それと同時に走り出す。
……横に猿山がいない。
どこいった?もしかして速すぎてもうゴールにいるとか!?
そうじゃなかった。後ろで死んでいた。
「この日まで鍛えた足が筋肉痛で〜〜〜」とか聞こえる。
馬鹿だ。そう思った。本当に馬鹿だ。
結果、俺は3位。猿山はもちろんのことビリだった。
そのほかの人─────火乃村は余裕顔で1位だし、
唯も1位だったらしい。織宮、里中は、ともに2位。
雪丸は………言わなくてもいいだろう。
なんやかんやで本命はクラス戦なので余裕だろうと思った。
騎馬戦以外は………。
グラウンド中心に吹き込む風。
西側と東側、2つの白線上に彼らはいた。
「ついにこの時が来たみたいだな。」
いつもと違い、火乃村は楽しそうに言う
「俺は来てほしくなかったぞ。」
対するは自分。
そう、朱雀団VS青龍団の騎馬戦だ。
騎馬戦だけは何故か盛り上がる。
男のロマンだからだ! と力説するものもいるが、そんなものは知らない。
ただ、何かが燃えるのだ。それがロマンなのかもしれないが。
「ふふふ………俺の戦略から逃れられるかな……」
火乃村がそうつぶやいた瞬間。
≪これから朱雀団男子と青龍団男子による騎馬戦を行います。≫
そうアナウンスが入った。
そして先生方の野太い声が上がる。
「始めぇっ!」
双方が一斉に駆け出す。
「本気でいかせてもらうぞ!」
いつも冷静な火乃村がおかしかった。
お、おそろしい……これがロマン!
「戦争の基本は集団戦法だって知ってるか!火乃村!」
こちらの軍は、2体で相手の騎馬を一騎潰しに行く。
「やるな杉水。しかし!ここには穴がある!」
分かっていた、分かっていたが仕方なかった。
そこに雪丸を配置するのは─────
「わぎゃぁぁぁぁ!」
小さく悲鳴を上げて砂埃の中に消える雪丸With騎馬たち。
犠牲は無駄にはしないのが俺の主義だ。
「だがな!かかったな火乃村!ここが空くのは分かっていた。
分かっていたからこそ第2の罠が張れたんだ!」
勝った────完璧にそう思った。
自分の軍の騎馬が火乃村を囲んだ。
大将の鉢巻を取ればその時点で勝ちなのだ。
ちなみにこっちの大将は俺。あっちは火乃村。
最初からザコどもを駆るような戦いは臨んでいなかった。
そんな事をすれば火乃村の戦略にかかるからだ。
だから、大将を狙った────。
「勝った、と思うか?杉水。」
そんな声が聞こえた。
「へ……へへ、何言ってんだ?そこからお前が何をできるって────」
今、火乃村に向かっていっているのは全勢力。
守りは……ゼロ。
「まさかっ!」
火乃村が手を下すのではない─────。
気付いた時にはもう遅い。自分の鉢巻は頭の上にはなかった。
「残念ながら俺の策には欠点は無い。」
こちらの軍が火乃村の────大将の鉢巻をとる前にやられた。
作戦まで読まれていた………?
あえて自分の得意分野を潰してまで来た?
いや、違う。
そんなものじゃない。
火乃村と戦う時点で負けは決まっていた………?
そのとき、耐え兼ねない恐怖心が全身を貫いた────。
「ねぇ、千恵。何で男子あんなに盛り上がっているの?」
問うたのは織宮。心底不思議そうにしている。
「私も分かんない。教えてよー、なんか有志がおかしいよー?」
「ふふ、この里中 千恵様が教えて進ぜよう!それは………」
「「それは??」」
2人の声がはもる。
里中は、溜めて言った。
「男の子………だからなんだよ」
何故か目を輝かせて。
当然、織宮と唯は分かるはずもなかった………。
体育祭です!
ウチの学校も今、体育祭に向けて
がんばっているところなのです!
でも、熱いしうざいし、最悪なことばかりです。
なので面白く書いてみたつもりです。(自分なりに)
鳴月 常夜の他の作品もどうぞよろしく!
救部―きゅーぶ!―
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