第10話 キャラ設定? B
「まぁ、誰と会うかなんて予想してたけどな。」
目の前には、織宮の回し蹴りを食らったと思われる、
猿山が転がっていた。
「やぁ、有志君。僕は今にも死にそうだよ。」
いつもよりもキツイものを食らったのだろうか、目が生きていない。
「憂緋ってすごいんだ……」
ほえ〜、と唯が感心している。
そこは真似るべきではないと思うんだが。
「さて、ここが一つの違いだ。」
火乃村が人差し指を立てて言う。
「まず、告白魔・織宮LOVEという設定がコイツにはある。
しかし冬島、お前にはこんな馬鹿げた設定は無い。ここが違うぞ。」
「火乃村くぅ〜ん……馬鹿げた設定って……ひどいよ〜〜〜」
猿山が大の字になりながら涙目になって言う。
「そうか……違いを見つけるとキャラが生きてくるのか……?」
おーい。キャラが言うな、キャラが。
「まぁ、はっきり言えばだな。馬鹿とドジは違う。」
「そうなのか……」
火乃村と雪丸が頷きあっている。
うむ。これで一件落着なのか?
「何してんの?あんたら。」
不機嫌そうに眉をひそめた織宮がそこに立っていた。
「おう。織宮か、なんか雪丸がキャラ設定がどうとか言ってだな。」
「そ、そう。で、何してるって?」
今言ったんだが……
「憂緋っ!回し蹴り教えて〜」
パチっと織宮と唯は目を合わせた。
「っわっ!………いいわよ!まずは構え、こう!」
どうした、いきなり堂々としだしたけど。
「こう?」
同じように唯もやってみせる。
「そう!そして一回転してどーん!だよ。」
「憂緋っ!やるね!(いろいろな意味を含め)」
足が当たったら死にそうだ。効果音がおかしい。
あんなもの食らってよく生きていられるな。猿山……
ヒラッとスカートがはためくのを見た。
「お、おい。お前ら……あんま足上げると……えと……
見えるぞ……?」
「なっ─────!」
織宮の顔が完熟トマト以上に赤く染まる。
爆発しないだろうな……?
「もう、有志ったら〜。言ってくれれば唯はいつでも見せるのに〜」
「自分で言っといてなんだけどお前は黙れっ!」
織宮は、カタカタと震えている。震えている?
「あああああああっ!」
「な!?」
叫んだあと織宮は走り出した。
それもスカートがはためくのを気にせず。
「憂緋ちゃーん♪見えてるよっ!」
猿山が馬鹿言った。
そこで織宮は、猿山の前で急停止し、技を繰り出した。
今までに見たことの無い技を。
「死・に・さ・ら・せぇぇぇぇぇぇぇっ!」
織宮が飛翔した。
「ま、幻の2段飛び回し蹴り………」
火乃村が震えながら言った。
「ひ、人ってあんな高く飛べんの……?」
雪丸も目を見開いている。
「2段飛びって不可能技だろ。」
「憂緋すごい……」
廊下に横たわった猿山の頬には、織宮の内履きの跡がくっきりついていた。
織宮は、猿山に一撃を決めた後は、何処かへと走り去っていった。
「あれ、死んだだろ……、というかあいつやられキャラじゃないか?」
今ひとつ気がついた。
「それもそうだ。あいつはたくさん設定を持っているな。冬島、どうだ?」
火乃村は、雪丸を見る。
「や、おれはやっぱこのままでいいかも……」
織宮最強説が出回った日であった。