第10話 キャラ設定? A
「おれ、キャラ変更する。」
唐突に、本当に唐突に雪丸は言った。
今は昼休み。各々が楽しく過ごしたりご飯を食べたりできる
自由な時間なのだ。
外はもう「秋ですよ!」言わんばかりの風景。
葉は、もう赤やら黄色やらになっている。
それなのにコイツは一体何を言い出すんだ。
「どうした雪丸。変なモンでも食ったか?いや、いつも通りか…?」
「有志は気付かないのか!?あの雪丸編以来、俺の存在感が
なくなっていることを!」
確かに消えてた気がする……
それになんか猿山とキャラかぶってるし、ドジと馬鹿か……
「それに!俺、猿山とキャラかぶってない!?」
あ、同じこと思ってたのか。
「まぁ、落ち着けよ雪丸。人間変わろうったってそんなすぐには変われないんだぞ。」
「うるせー!作者が何とかしようと思えばその努力しだいで変われるんだぞ!」
「つうかそれお前の努力じゃないじゃん!作者は、夏休み満喫してんだから
邪魔するなよ!」
なんか雪丸としゃべったのも久しぶりの気が……。
「うーん。やっぱ駄目か。これといってドジるところも無いし……」
お前それ狙ってたのか……?
「まぁ、真剣に悩んでんだったら考えてやってもいいけど」
「マジか!さっすが有志!分かってくれてる〜♪」
そういって抱きついてくる。
「うわ!止めろやこのやろう!余計なことが起きないから!」
椅子が傾き倒れ、2人は、教室の床で抱き合うような体勢になった。
「…………。まぁ、人間の愛というものはどういう形でもありだからな。」
声のした方向には、火乃村がいた。
冷たい眼差しでこちらを見ている。
「ま、まて火乃村。一回落ち着け、これは勘違いだ。」
雪丸を引き剥がし、火乃村へと歩み寄る。
「俺はいつも落ち着いている。心配するな。」
目を合わせてくれない……
「いや、心配って……今の俺の立場を心配してほしいんですけど……」
ふと視線を感じ、教室の入り口に目をやる。
そこには、一ノ瀬 唯がいた。
「わ、わたし……知らなかった……有志がBLだったなんてっ!」
そういって走り去っていってしまった。
「まてや!これ以上勘違いを深めるなぁ!これはだなぁ、雪丸が────」
─────説明中──────
「俺は最初からわかってたぞ。」
火乃村は静かに言った。
いや、絶対分かってなかったよ、こいつ。目合わせてくれなかったもん。
「ほ、ほんとに……?有志?」
唯も捕まえ、説得した。
「本当だって、ほら、てめえが原因なんだからしっかり謝れ!俺に!」
「だ、だって……キャラ変更って言うから……」
雪丸は小さくなっていった。
「おいおい、まさかBLキャラとかは止めてくれよな。」
「え?無し?」
「あたりまえだろーーーが!!!」
「まぁ、誤解は解けたんだ、冬島のキャラについて考えていこう。」
流石は火乃村。話の切り出しがうまい。
でもキャラたちがキャラ設定考えるって……
「はいはーい!こんなのどうかな?」
ぴしっ と手を挙げる唯。
「元気系キャラで売っていくってのは?」
「「元気系キャラ……?」」
俺と雪丸は聞き返した。
「そう!元気系キャラ。こういうのは大抵ポニーテールの女の子が
メジャーだったりするんだけど〜〜〜」
唯の話は進んでいく。
「とりあえず!元気で明るくムードメーカーって感じで!」
「今とあんまり変わらなくないか…?」
小さな突込みを入れてやる。
「うぅっ、……大丈夫だよ!それで猿山君とはかぶらないでしょ?」
「まぁ、確かに……」
「とりあえず元気っぽくやってみてよ。」
雪丸を指差す唯。
「おっし、では はじめまーす。………イエーーーーイ!!!
みんな元気かーい!!!俺は元気だけどっ!そうそう!この間さーー!!!」
「カットォォォォォォ!」
唯がカットを宣言した。
そりゃあ、こんなんじゃあ駄目だろ。
「雪丸君!………イエス!そんな感じ!」
「まてまてぇーーい!なんか違う!ってかお前の判断基準がおかしい!
むかつくだろこれ絶対!馬鹿が暑苦しい馬鹿になっただけじゃん!
あとエクスクラメーションマーク多すぎ!」
はぁ、はあ、つ、疲れる………
「だ、駄目だよねやっぱり……ちょっとノリでいいかなって
思っただけだからね……?」
思っちゃ駄目だろ……
「やっぱキャラ変更なんて不可能なのかなぁ………?」
「俺の出番……か?」
火乃村が静かに言った。
そうだ!火乃村さえいればできるはず!
「なんか案があるのか!?」
雪丸が食いつく。
「こういう時はな、同じような人のところへ行くんだ。
それでもって違いをはっきりさせればいいんじゃないのか?」
「さ、流石すぎる………というかもうかっこよすぎる……」
我ながら感動した。
「それで……同じような人って?」
唯が聞いた。
「それはもちろん─────アイツだ。」