第1話 杉水有志 C
「おーい、雪丸?ホットプレートは温まったか?」
ホットプレートとにらめっこしていた雪丸に
そう問いかける
「おっけーだぜーぃ」
素っ頓狂な声を上げて返事をする
「んじゃあこのボウルもってホットプレートで焼いてくれ」
「もういっちょ!おっけー」
!?・・・・雪丸に────渡した!?
アイツは、超のつくほどのドジだーーー
脳内で台詞がこだましている・・・
!!!「雪丸!ちょっと待て!」
しかし叫んだ頃には、もう遅い
調理台の角に足を引っ掛けすっころんでいる
一方ボウルはというと・・・雪丸の手の中から飛び
弧を描いて────
ドベチャッッ・・・・
カコンカコンカコンカコカコカコ・・・
前方にいた女子・・・織宮 憂緋(おりみや ゆうひ)が
頭からかぶっていた・・・・
最悪だ、と有志は頭を抱える・・・
「冬島・・・・・君?」
一文字一文字、怨念がこもったような呼びかけ・・・
表面では、笑顔を作っているが
眉、口が引きつっているし、なにより目が笑っていない・・・
「いや・・・えと・・・机の角が・・・ね?」
織宮憂緋は学年トップ3には入ると影でささやかれている
美少女なのだ。まぁ、そこはいいそこまでならどこかの
アニメのヒロインになれるだろう・・・・
しかし男子をかなり嫌っているらしい
理由なんて知ったこっちゃ無いが。
それに切れたらどこからか木刀を持ち出し
相手を滅多打ちにるという・・・噂だがな。
「ぶ・・・」
「ぶ?」
「ぶっころす!汚らわしい男子が汚らわしい物を
ぶっ掛けるなんてありえない!!!」
あのーそれ食べ物なんですけど
このとおりな女の子なわけだが・・・・
おおぃ!織宮が木刀持ち出したぞ!?
誰かが叫ぶ・・・ああ・・あの噂ってマジかよ・・・
こりゃ雪丸死んだな────
!?
「有志っ!たすけてぇ〜〜〜」
いつの間にか目の前に迫っている雪丸と織宮。
雪丸は、俺と位置を入れ替えると織宮に向って突き出した
「なにすん・・おわっ!」
床にこぼれたお好み焼きの生地にすべる
「きゃっ!ちょっ・・・」
見事なスライディング!?俺の足が織宮の足を引っ掛けた。
そこから倒れこむまではスローモーション
天上の証明が一本切れてる・・・
ああ、だから暗かったのかでも角に足引っ掛けるって・・・
ゴチィィィン
の音とともに時間が戻る
何があったか?俺の額と織宮の額がごっちんこ、だ
本来ならこんな美少女と接近するなんて
大変喜ばしいことなのだが・・・・
床と織宮の額でプレスされた俺の頭は、
砕ける寸前・・・・
ぅぅぅと織宮がかわいらしい声を出しているが
観賞をしている暇も無いいや、寿命が・・・・
その後・・・・・
「これはなんですか?」
生徒指導の原|(説教が長いと、超嫌われ者もちろん当の本人は、
気づいているわけも無い)が言った。
皿の上に盛り付けられた・・・・食べ物?
いやモンスター並のグロデスクな固体を指さして質問。
・・・俺にもわかんないよ?なんで残った生地で焼いたら
緑色になるかなんて。
大丈夫かこれ?と火乃村にアイコンタクトを送るが
目線をそらされ雪丸に送ってみるが
今は、もう白目を向いている・・・・
木刀で何したらそーなるんだよって・・・
遠くからは、「なかなか取れないわね」と
何かを洗う音が聞こえる・・・恐ろしい
「まぁ見た目があれでも食えるだろ。だいたい
お好み焼きなんて作れない奴いるのか?」
といいながらモンスターを口に運ぶ
「先生。知りませんよ・・・?」
有志が力なく言う
バリュ・・・ぐにぐに・・・
食べ物を食べているとは、思えない効果音が響く・・・・
「ふむ・・・わたひはな、むかひ・・・鉄の胃袋と
よばれてた──ぐぼろふっ・・・・」
自称鉄の胃袋は、机に倒れこんだ・・・・
「知らないっていったのに・・・」
「と、とりあえず救急車!」
さすが火乃村・・・迅速な判断だ・・・
俺はもう動く気になれないよ・・・
クラスがパニックに陥る中で
白目をむいている奴───
机に倒れこんでいる大人───
ただうなだれている奴───
携帯電話片手に救急車呼ぶ奴───
このクラスは、すごいな・・・・・
今日は、普通な生活じゃなかったな・・・・
第1話 終わり
「くそ・・・この赤いのなかなか落ちないわね・・・
ちょっとー誰か洗剤持ってきてーえ?原が倒れてる?
お好み焼き食った?・・・・私は、・・・なにもしてない・・よ?」