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第7話 繋がりは… F

いつからこうなったのだろう………?

いつから兄は変わってしまったのだろう?

いつから兄に恐怖心を抱くように……


ああ、そうだ。あれは俺が高校1年生になったときだ。

そう────2年前の話だ…………







母が死んで父は蒸発した。最悪のスタートだった高校1年。

そのとき大学1年生だった兄は、折角受かった大学を辞め、

仕事を始めた。もちろん俺たちの生活費を稼ぐためだ。

「兄貴………俺も学校辞めて働こうか?」

ある日の夕食の時のことだった。

貯金が残っていため、そんなに苦しい生活はしていない。

しかし真面目な兄は、仕事をしている。

「雪丸。心配するな、俺が全部やるからさ。お前は普通に

 学校に行っていればいいんだ。」

兄はいつもの自分のことより他人のことを優先していた。

兄を漢字一文字でたとえると『優』だと俺は思う。

そんな兄が俺は好きだった。

「父さん………どこ行っちゃったんだろう。」

「────っ!、雪丸!あいつの話はするな!

 あいつは………あいつは母さんを見捨てたんだ!

 それに俺たちも………!父親なんかじゃない!」

息を荒上げ叫んだ。父の話をすると兄貴は怖くなる。

そんな兄は嫌いだった………

その当時、なんで兄は父の悪口を言っているのか分からなかった。

父は、母が死んだあとに俺に連絡をくれたのだ。

「近くにいてやれなくてすまない………必ずいつか会いに行くから。」

そう言ったのだ。確かに俺は聞いた。

この話は兄にはしていない。父の話をするだけで怒りが増大する兄に言っても

まともに取り合ってくれないと思ったから。

だから俺は、父は間違ってなんかいないと思っていた。

兄が勘違いしているだけだと。いつか会えると────。



しかし再会は最悪で、俺はここで終るのかと思った。



ピンポーン♪

「雪丸ーーちょっと出てくれ。俺は今、手が離せないから。」

兄は夕食を作っている最中だった。

横になってテレビを見ていた俺は、立ち上がり玄関へと向かった。

(あ、判子いるかな?……何度も行き来するの面倒だから取ってくるか。)

郵便物だった場合を想定して、判子を取りに行こうとリビングに戻った時。


ガチャッ


玄関が開けられた。そして入ってきたのは────

「と、父さん………」

父だった。靴を脱いで中に入ってくる。

「ゆ、雪丸………すまなかった………」

何かを言う前に抱きしめられた。たくましい腕で包まれた。

父は泣いていた。大粒の涙をこぼしていた………

「雪丸から離れろ。」

冷たく突き刺さるような声。リビングの方を見ると兄が立っていた。

目つきがかなり鋭くなっており、威嚇しているように見えた。

その表情は、父の話をした時の兄の顔だった。

「離れろといっているんだ。」

必要以上のことはしゃべらない。ただ、 離れろ と。

「ひ、ひょうすまなかった。じ、事情があったんだよ!」

「母さんより大事な事情………?なにふざけたこと言ってんだよ!!!」

兄の怒りが爆発した。今まで溜まってたものを吐き出すかのように声にした。

その本人を前にして………

「何故、母さんの傍にいてやらなかった!何故、葬式にも来なかった!

 お前は一体何をしていたんだよ!!!そんなにその事情ってものが

 母さんより大事なものだったのかよ!!!」

「ちがう!仕方なかったんだよ!」

「何がだよ!何が違うんだよ!ふざけるな!」

兄はもう怒り狂っていた。母を見捨てた父に対して。

「帰れ………」

「雹。待ってくれ、話を聞いてくれ!」

「帰れといっている!二度とこの家に入ってくるな!」

兄は、父を玄関からい押し出し、ドアを閉め、鍵を閉めた。


ドンドンドン!


「雪丸!雹!許してくれ!俺が………悪かった!」

父は、ドアを叩き懸命に声を出して許しを乞う。

「あ、兄貴………いいのか?」

「雪丸。何の話をしている。夕食ができたぞ。」

兄の言葉には、芯が入ってないように思えた。

台所からは、いい匂いがしたが食欲は、出なかった。


ダンダンダン!


「うう………2人とも………」

玄関からは、父のしゃがれた声が聞こえた。




翌日。学校が終わり、家に帰ってきた。

何か家の中の雰囲気がおかしい。

「あれ?鍵が開いてる………兄貴帰ってきてるのかな?」

不審に思いながらも家の中へと入る。

「ただいまー」

!? リビングに広がった光景を見て俺は息を呑んだ。

「ああ────お帰り、雪丸………今、ゴミを掃除し終えたところでね──」

「あ……に………き?」

床には血だらけになった大の大人が倒れている。

そしていろんな所から血を流しながらも立っている兄。

兄も怪我をしている。服が所々破れ、顔や腕にはたくさんの切り傷。

そして兄の手には────赫く染まったナイフが握られていた。

ドサッ!

兄が床に倒れこむ。

「あ、兄貴!大丈夫!?救急車!呼ぶから!」

急いで電話の前に立ち、ボタンを押す。


Prrrrrr………


「あっ!もしもし!き、救急車お願いします!え……はい。

 兄貴と父さんが────。」


倒れていた大の大人は、父親だった。

頭では気づいていなかったが口がそういっていた。



それからは、何が起こったのか分からない。

覚えているのは、父が死んで兄貴は刑務所に入ったということ。

罪は、軽かった。自己防衛ということだった。

あのナイフは父のもので父は兄を切ったのだという。

それに加え、父は麻薬をやっていた。

錯乱していたのだという………

しかし兄は、「殺したかったから殺した」というだけで

自ら罪を少し重くした。



刑務所を出た、と電話があった後………兄の行方は分からなくなった。

そこからだ。兄貴に対しての恐怖心が可笑しいほどに溢れた。

震えが、震えが止まらない。

思い出すは、あの光景。

ナイフ、血、兄、床に倒れ込んだ血だらけの父……

いつしか優しかった兄の面影は消え、忘れてしまっていた……





すんません。今回物凄くカオスになってしまいました。


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