第7話 繋がりは… B
休憩時間、雪丸の席へと向かう。
「おっす、雪丸。どうしたんだその傷?」
火乃村は、 馬鹿、ストレートかよ。 という目つきで
こっちを見てくる。え?まずったか?
「なんも……ないよ。」
なんもなくはないだろう。
元気がなさすぎだ。こんなのは雪丸じゃない。
「おい……雪丸。」
声をかけようとしたそのとき、雪丸の眉がつりあがった。
「うるせーよ!関係ないだろ!」
そういうと教室を飛び出していってしまった。
大声で、しかも本当に切れるとはな……らしくないな。
「すまん、まずったかもしれん。」
とりあえず、火乃村に報告。
「まったく。お前は馬鹿か、と言いたいところだが
あれは、重症だよ。ただの喧嘩じゃないかもしれない、
そのまえに喧嘩ですらないのかもしれない。」
「そうかもな……」
2人はため息をついた。重い空気が流れる……
何で雪丸が…… 何に巻き込まれたのか?
難しい問題なのか……?俺たちに話せないことなのか───?
「やあ!皆さんおそろいで!楽しそうですね!」
ここでバカ登場。本当にバカだこいつは……
いつもの笑みも数段うざく感じる。
「そろってねぇし、楽しくもねぇよ!ちっとは空気読めや。」
「分かってますよ。雪丸君。出でいちゃいましたよ?」
「知ってるよ。」
「冷たいなぁ……ま、僕に任せてくださいよ。雪丸君の秘密、探ってきますよ。
女の子をストーカーしたときの能力、ここで発揮する時ですね!」
猿山は、自信満々に胸を張って言った。
「何でも突っ込むと思うなよ。つまり……尾行するのか?」
「冗談です。」
猿山は、いつの間にか真剣な目つきになっていた。
普段のバカらしさは伝わってこない。
「頼んでいいのか……?」
「あいさ。」
結局、雪丸は六限目に出席しなかった。
放課後、雪丸は教室に来たが、カバンを取るとすぐに教室を出て行った。
これは、チャンスだ!
「猿山!つけるなら今だぞ!」
猿山の方を振り向く、と…………
「いや〜〜織宮さんは可愛いなぁ〜。あっ!今度の日曜日───」
「ふざけんなっつーの!」
ためらいもなく飛び蹴りをあびせる。
「ふぐっ!」
机を巻き込んで倒れこむ。
「おら!てめぇ行ってこいよ!」
猿山は、もう少しでフラグが…… と舌打ちしつつ
「あ〜〜はいはい、いってきまーす。憂緋ちゃん♪」
といって教室を早足で出て行った。
こいつ……死にたいのかなぁ?
織宮は、顔をトマトのように赤くしてこっちを見ている。
だからなんでって…………?
猿山が転校してきてから、こういうことが多くなった気がする。
里中のものと思われる笑い声が廊下から聞こえてきたが、シカトする。
猿山………うまくやってくれよ。
ふふふ……僕は今、雪丸君をつけている。
ばれてないよ!流石は僕だ!
西区の住宅街。今、僕はここにいる。
曲がり角が多くて大変だ。
だがもう少しで、目的地に着くと思う……
おおっ!あれは、西区第一高等学校の女子生徒さんじゃないか!
制服が可愛い!全体的に水色のラインが入っていて───!
ってあれ!?雪丸君は?しまった!
女子生徒さんに見とれている間にどっか行っちゃったよ!
………ふぅ、今日はこれくらいにしておいてやろう。
うん。しょうがないよね?女子生徒さんが誘惑してきたもんな?
ははは〜〜〜…………帰り方わかんねーー!
「なぁ、火乃村。猿山……大丈夫かな?」
机に頬杖をついて火乃村に問う。
「たぶん………無理だろうな。」
火乃村は、教科書をボーっと眺めながらそう返す。
「あーーそうか。じゃあ無理だな。」
「そうだな。今ごろ迷子にでもなってるだろう。」
「いくらバカでもそれは無いだろ〜」
はははは〜〜〜〜〜〜
そのころ、猿山が西区を爆走しているのは……誰も知らない。
「うおおおお!走ればいづれかはたどり着けるぅぅぅ!」