第2章 会長・・・!?
俺と詩織に向けられるたくさんの好奇の目。しかし、それは決して居心地の悪いものではなかった。
「はじめまして、明石恭介です。この学校の事もよく分からないので、いろいろ教えてください」
無難な挨拶をして、俺はペコッと頭を下げた。
ここは文月学園2年A組の教室だ。父さんから転校を告げられた日から、二日が経過している。
正式にこの学校に転校してきた俺たちは、恒例の「転校生の挨拶」を行っているのだが・・・
「えっと、私は高宮詩織と言います。みんな、仲良くしてください♪」
満円の笑みで俺に続く詩織。
普通いくら同年代とはいえ初対面の人間に「♪」マークを飛ばされたら誰だって軽くは引くものだが、詩織は美人なので問題ない。
クラス内を見渡すと、詩織に熱い視線を送っているやつが最低でも1,2・・・16人か。って、これってクラスの男子全員じゃないか!?
「ん、そんなもんか、明石、高宮?」
そう言ってくるのはこのクラスの担任の中島先生だ。まだ30代なのに学年主任を任されていると言うことは、相当やり手の先生なのだろう。
「あ、先生。後もうひとつだけ良いですか?」
そうことわって、詩織が話し出した。いったい何なんだ?
「私と明石恭介くんは・・・一緒に住むことになっているんですよ♪」
「「「殺せっっっっ!!!」」」
男子連中が机の中に手を入れたかと思うとさまざまなものを取り出してきた。
・・・え?いや、まだカッターとかはさみは分かるよ?でもなに?その黒い箱のようなものは?
「スタンガンはまずいだろうっ!!!」
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいっ!!!
落ち着け!!クールになれ明石恭介!!まずは状況確認だ!!!
「詩織っ!!あんなこと言う必要なかったじゃないか!!!」
そういって隣でニコニコしている詩織に詰め寄る。
この際なりふりかまってられるか!!!こっちは命がかかってんだ!!!
「面白そうだからですよ。どうせいつかバレるんですし」
ちくしょう!!あっさり返されてしまった!!
前を見ると、凶器を持って俺に近づいてくる男子生徒達。くそ、万事休すか・・・
「待ちなさい、諸君!!!」
どこからか聞こえてきた甲高い声。
「ま、前原さんだ!前原が来たぞ!!」
「なにい!?は、早く道を明けろ!死にたいのか!」
男子生徒達の悲壮な声。あいつらを震え上がらせるなんて、い、いったいどんな人なんだ「前原」は・・・
「ふむ、君が明石恭介君か。私が生徒会長の前原だ!」
・・・あれ?声はするのに、左右を見回してみるもどこにも姿はない。
「こら、どこを見ている!!私はここだ、ここ!!」
そういわれて、俺は「ここ」・・・つまり、自分の足元を見た。
「・・・え?」
そこに、一人の少女がいた。ツインテールの髪の毛をたなびかせた、すこしツリぎみの目をした女の子が、そこにいた。
べつに、それ自体はおかしいことじゃない。問題は、
「君、小学生?」
彼女があまりにも小さかったことだ。
「そうか、やはりそう見えるか・・・」
ハア、とため息をついた後、少女は話し始めた。
「私が生徒会長の前原だ」
「・・・え?」
俺が驚いているのもそっちのけで、少女は続けた。
「君と高宮詩織さんが、同居をする予定だと言うのはほんとうかね?」
「は、はい・・・」
突然のことにわけもわからず答えてしまう。
「君と高宮さんは、従兄妹とか、そういう親戚関係に当たるのかい?」
「い、いえ、ただの幼馴染で・・・」
ふむ・・・とうなる少女。すると突然動きを止めてひれ伏している男子生徒達に向かって、
「不純異性交遊はいかんな。よって、再開してよし」
と言って、去っていった。
「・・・え?」
まったく状況が分からない俺は、首の後ろでバチッと音がするのを聞いて、
・・・ゆっくりと倒れていった。