長編の前置きの短編
側近「魔王様ーー!!」
魔王「なんだ側近よ」
側近「勇者一行がもうすぐここ魔王城まで到達するようです!」
魔王「ううむ」
魔王「思ったより早かったな……」
側近「今回の勇者は手強そうです」
側近「最後のボス、ヘルゲートがたった3ターンでやられたそうです」
魔王「なんだと!ヘルゲートがか!」
魔王「ふふふ、おもしろい!今回の勇者は骨がありそうだ」
側近「でもこの世界を支配する魔王様なら余裕ですよね!」
魔王「ふはは!ビシャス、お主もそう思うか」
側近「当然です!魔王様!」
側近「西のアズール、東のゴボラ、南の邪神三兄弟、そして北のヘルゲート」
側近「こいつらが束になっても魔王様の足元にも及びませんからね」
魔王「うむ。わしが生み出した優秀なしもべだが……」
魔王「優秀なこやつらでもわしの1,000分の1にも満たない魔力だ」
魔王「よもや勇者なんぞに負けるわけがない」
側近「さすが魔王様です!」
側近「ところで魔王様……」
魔王「なんだ、ビシャスよ」
側近「魔王様、恐れ多いですが、あの………」
側近「魔王様ってお名前とか、ないんですか?」
魔王「うん?」
側近「いや、えっと、各地の四天王には立派な名前があります」
側近「もっと言えばすべてのしもべには、どんな僻地にいるザコですら名前があります」
側近「ですが私自身、まだ魔王様のお名前をお伺いしたことがなかったなー、と」
魔王「ふむ、なるほど」
魔王「ビシャスよ」
側近「はっ」
魔王「わしに名なぞない」
側近「はっ?!」
魔王「これまで幾度となく勇者を返り討ちにしてきた」
魔王「そして名乗ってきた。わしの名を」
魔王「しかしとうの昔からここまで来る勇者がいなくなってしまったのだ」
魔王「それ以来、わしは自分の名を忘れてしまっておる」
魔王「ゆえに名なぞ捨てたのだ」
側近「(大丈夫か?このボケ老人……)」
魔王「ボケてなぞおらぬわ!!!」
側近「ひいいいっ!心の声読まれてしまいましたか!申し訳ありません!!」
魔王「まあ、よい」
魔王「しかし名前か……」
魔王「たしかに今回こそは勇者がここまでたどり着きそうだから、用意しておく必要があるな」
側近「はっ」
魔王「ううむ。しかし魔王っぽい名前とはなんだ?」
側近「ヘルとかデスとかつけばそれっぽくなりそうですね」
魔王「なるほど……。なにか良い案はあるか?」
側近「?!」
側近「ええと、でしたらヘルムーンとかどうでしょう?」
側近「地獄で月、不吉な要素が満載です」
魔王「……却下だ」
魔王「第一、勇者が最後に倒した四天王がヘルゲートなのだ」
魔王「「え?ヘルムーン?wヘルゲートの上位互換的なやつ?w」となめられかねん」
側近「あーそうですね」
側近「でしたらデスメーカーとかは?」
魔王「……却下だ 」
魔王「なんか中盤の町の近くにそんな名前のやつ配置した気がする」
側近「!!!」
側近「そういえばデスマシーンがいましたね……」
魔王「なんかもっとこう、3・4文字文字ぐらいでおさまりのいいものはないのか?ビシャスよ」
側近「えーっと、私の名前をお貸ししましょうか?」
魔王「バカを言え。ビシャスってなんかこう、勇者と最後までライバルでいたけどなんだかんだあって仲良くなって、結局最後に一緒に裏で操っていた魔王を倒しそうな名前だろう」
側近「(私の名前でそこまでのシナリオを思い描いてたのか……)」
魔王「うーむ、そうだな、たとえば………」
バンッ!!!!
勇者「魔王!!今度という今度は俺たちが退治してやるぞ!!!!」