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理想の夫がやってきた  作者: 九つ重ねた数字
彼がやってきた
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第四話

「こちらの商品はいかがでしょうか?」


「どうです?葵さん」


「最高です。」





「こちらもいかがでしょうか?」


「どうです?」


「パーフェクトです。」





「こちらも・・・」


「どうですか?」


「最高にグレイトってやつです。」






ちょっと前。


「「「いらっしゃいませ!二橋様!」」」


「うわぁ・・・」


「うわ・・・」


エレベーターから出るとそこは、まるでVIPルームみたいなデパートでした。表と裏で違いすぎるだろおい。


「本日ご所望の商品はどのようなものでしょうか?」


「えっとー、服と、靴と、下着と・・・」


ピクッ!


とき君から下着という単語が出た瞬間に、とき君が下だけ履いて上は腕で隠している淫らな格好を想像して鼻血吹きそうになった。向こう側は何人か出てる。


「あと、小道具類とかですかね?葵さんはどう思いますか?」


「外出る時用の女性用服とかも必要よね」


毎回あんなに注目されるととき君も気になってノイローゼになるかもしれないし・・・


「え?別に女装しなくても大丈夫でしょ?」


「いや、防犯的な意味でも」


「男なんだから大丈夫ですよー」


「いやいや、男の子だから駄目なんでしょ!?」


「え・・・?」


「・・・もしかして」


もしかして、


「とき君ってこの国の常識が無い?」


「・・・うん。」


━━━現役先生の出番のようですね!



「とりあえず。最初に服を選びましょうか。どんな服がいいとかある?」


「うーん。無いかなぁ?」


「じゃあ。店員さん、彼に似合いそうなものを一杯。」


「かしこまりました!」


「さて、それでは」「おまたせしました!」


はや!?この2、3秒でどうやってその量の服持ってきたの!?



「ではまずこちらの方から・・・」


最初に持ってこられたのは非常に普通な服。ジーパンに無地のTシャツ。あ、襟が少し色違いでおしゃれだ。


「どうですか?」


「すばらしいね!」


「非常にお似合いですよ!」


まあ、普通に似合うよね!・・・しかし、サイズを何一つ言ってないことを思い出したんだが・・・。


「ところで・・・お一つお願いしたいのですが・・・お客様のお姿を写真に収めてもよろしいでしょうか?」


「何に使うのですか?」


「そちらの商品を紹介するときのモデルとして・・・」


「そんな僕はモデルなんて。そういうのは本業の人に・・・」


安心しなさい、とき君


「とき君はそこらのモデルよりモデル出来てるから大丈夫よ。私の23年間の人生に誓って保証するわ。」


あいつら、基本笑ってないから。出来て震えてたり、ゆがんでたりする作り笑いだから。まあ、時々すごくまともな人もいるけど、とき君の方がビジュアルは上ね!


「えっと、葵さんがそう言うなら・・・」


「ありがとうございます!それではあまり緊張なさらずに、自然にいてください!」


写真を撮られるとき君の新人モデル感いいわ~。すごく、こう、内側からリビドーがあふれそうだわ~。


いままで触れずにいたけど、とき君と夫婦になるということは、あ、アレ!も、するのよね?


「いいですね~!その慣れていない、擦れていない表情が良い!」


こ、子作り・・・的な~?


「ありがとうございました!では、お次はこちらの服はいかがでしょうか?」


「あ、はい。わかりました。・・・え?これ?」


・・・私がリードしなきゃ。二橋 葵 23歳。やるときにやらねばいつやる!女ならば一生に一度はあこがれる男性との結婚生活。やるぞぉ!


「こ、こんな感じですか・・?」


あれ、さっきの服終わってt・・・・・!!!??!?!?!??


「・・・ふぁー」


「こ、これは・・・!!!いける!これなら一枚10万でも売れる!」


「おい、なに許可なく売ろうとしてんだ。殴るぞ」


出てきたその姿は、白いワンピースにつばの広い麦わら帽をかぶった、深窓の美少年のような(ていうか美少年な)恰好だった。裾からちらちら見える生足が愛おしい・・・。私、元来、足フェチなんですぅ・・。


「あの、男がスカート履くのっておかしくないですか?」


「いえ?ぜんぜん普通だと思いますが。あ、こちらに上から目線お願いしまーす。」


「撮ったの全部検閲するので。」


「・・・ちっ」


警察よばれたいか?あ?


「とき君、こちらでは、男性の服装は基本スカートなんだ。まあ、ちょっと前から男性でもズボンを履くブームが来て、そこからはほぼすべての服を着れるようになったけど。だから、スカートは男性服だよ。」


「そ、そんなぁ・・・。下がスースーして・・・落ち着かないんですぅ・・・」


はーー!!!!この反応サイコー!もう、ご飯5合はいけるね!もー、私の語彙力が死にそうだ!


「はー、ハー、ハァ・・・」


ん?このスタッフ・・・・!?


「も、もう我慢が・・・!!」


「首打ち!!!」


落ちろぉ!


「ぐh!」


「わぁ!!て、店員さん!?」


「大丈夫よとき君。首の骨にひびが入るかもしれないくらいの強さで叩いただけだから」


「死んじゃいますよ!<ヒール>!」


とき君が倒れた店員のそばに近寄って敵役ヒールとか言ったら、手から光が出てきた!


「とき君手品師だったの!?」


「違いますよ!治してるんです!」


あ、敵役じゃなくて回復なのね。って、そんな魔法みたいなの使えるの!?


「え、それ、魔法?」


「ふぅ、間に合った。はい。神様から頂いた能力です。」


「つまり、とき君は天使でありながら聖男でもあったのね!」


まるで昔のセイント・ジャンニルみたいね!教会服に旗とか持たせればいいのかしら!




「とりあえず、他の店員さん呼びませんか?」





店の外にいる警備員を呼んで事情を説明して店員を連れて行ってもらった。結局3セットしか試着出来なかったけどその3着を今回の不祥事を口外しないことを条件にタダでもらった。


3セット合わせて30万近くいってたので、正直安堵した。最初の店で金尽きるところだった・・・。



「えっと、じゃあ次は・・・」


「小物屋ね!」


「なんですかそれ?」


「男性の身の回りの細かい物が全部揃ってる(と言われている)店よ!あ、下着は別だけど。」


実際に入ったことが無いからよく分かんないが、ネットとかだととりあえず全部揃うと書いてあったから問題ないだろう。





「いらっしゃいませー!こちらのリボンや髪留めはいかがですか?」


「え」


「とき君はあまり付けないほうが可愛いと思うわ。」


「え」


「では、こちらの小さいタイプを複数付けるというのはいかがですか?」


「えー・・・」


「いいわね!」


「僕こういうのいらないです。」


「「そんな!?」」


男の子は可愛く着飾ってなんぼでしょ!?


「僕は男です!こんなかわいい小物は付けません!」


「とき君。こっちでは男性は可愛く着飾るのが常識なのよ?」


「そうです。お客様は素でトンデモかわいいのですから、こういう小物を付ければもう、怪しい変態たちが集団で襲ってくるくらい魅力的になれますよ?」


「お前黙ってろ」


そんな言葉で付けてくれるわけないだろ。さては口下手通り越してKYレベルだな?


「うー・・・ん?」


常識と言われても不満そうなとき君は近くを見渡し、置いてあったファッション雑誌に飛びついた。


「・・・・・・・!ほら、今はこういうファッションもあるんでしょ!ガールズファッションみたいな!小物付けない系の!」


う。そっちが気に入ってしまったか・・・。悪くないとは思うがやはり、とき君には正統派なファッションを・・・


「あー、そのファッション誌ちょっと古い奴ですから、今だと流行遅れになってしまうかと・・・」


「ちょっとくらい遅れてても構いません!僕はそこまで目立つ気もないですし!」


「ちょっとと言っても、約30年くらい前のですし・・・」


いや、それはねーだろ!


「後ろに去年発刊って書いてありましたよ!?」


「え、本当ですか?ちょっとお貸しください。」


おい、何水性のマジックペンを出してるんだ。まさか力技する気か⁉


「ほら、やっぱり。これ30年前のですよ~」


「思いっきり直してるところ見てましたし、明らかに不自然じゃないですかぁ!!」


「きっと、擦り直しする時間が無いくらいギリギリのところで間違いに気づいて訂正したんでしょうねぇ。昔ですからこういうこともあるでしょう!では、まずこちらのヘアピンを・・・」


「葵さん!脱出です!」


「イエス、サー!」


「え、そんな!せめて、せめてこの特大リボンだけでも付けてくださーい!!!」


とき君に引っ張られながら小物屋を出たのでした。まあでも、途中でコソッとヘアピンとリボンを2つ買っておいたので帰ってから付けてもらいましょう。髪の毛をまとめる為って言えばリボンでポニーテールとかしてくれそうだし。ぐへへ






「はぁ、はぁ、はぁ・・・。はぁ。次は、どこですか?」


「次は本命の下着屋だね。」


ランジェリーショップと言うらしいが男日照り長かった身には非常に言いづらい。いつか慣れる日が来るといいなぁ





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