第三話
「うわー、駅って人が一杯ですねー」
「とき君、絶対に私から1m以上離れないでね。とき君みたいな可愛い天使は2秒で拐われて3秒で監禁されるだろうから。」
「大丈夫ですよー。僕も多少は自衛出来ますからぁ。」
やはりとき君に少しぶかぶかでも私の服を着せた方が良かったかもしれない・・・。
「それで、何で買い物に行くんですか?」
「もちろんタクシーよ」
電車なんかに乗せたら私では守りきれない可能性がある。
「いらっしゃい。どちらへ?」
「丸千デパートへ」
「かぁしこまりましたぁ」
・・?とき君に反応しないなんて珍しいわね。
「葵さん。これ、特殊ガラスみたいですよ。ほら、コンコンって」
「すいませぇん。こちらのガラス少々特殊なものとなっていますので、あまり叩いたりしないで下さい」
「あ、すみません。」
「特殊ガラスってどんなものなんですか?」
「まず、後部座席の音が伝わらず、姿が朧気にしか見えませぇん。あと、防弾です。男性のお客様対策ですねぇ」
なるほど。運転手はとき君が男か女か分からないから反応しなかったのね。納得。
「男性対策って過剰だねぇ。ちなみに今はどうやって音が伝わってるの?」
「AIが繋いだ通話って形ですねぇ。質問が来たと判断すれば自動で繋がるらしいです」
「ほんっとに凄い技術だね!」
「まあ、それくらいしないと警戒されて乗ってくれないということでしょ。どこもこんなものよ」
「デパートでも特殊な対策がされてるかもしれないね~」
「そうねー」
返事しながら頭を撫でる。とき君は最初は気になったようだが受け入れて放置してくれた。
あぁ~、男の子の髪気持ちいいんじゃあ~。性癖増えるぅぅ
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「おおー、立派なデパートだね!」
「うわ、何あの子クソカワ」
「クソなんて汚い形容詞付けるな。彼がよごれる」
「じゃあなんて表現する?」
「・・・極カワ」
「だっさ!」
「ここら辺で一番デカイって言われてるからね。男性用商品も扱ってるし」
「まま~、あのお兄さんかっこいいねー」
「そうね、私の中に直接種をインプットしてほしいくらいかっこいいわね。」
「パパかなー?」
「パパって呼んで拐ってくればワンチャンあるわね?」
「小さいと無いの?」
「なに?あの隣の女。特に冴えないような感じでなんであんな美少年と一緒にいられるの?ラック全振りってやつなの?」
「見るな。見れば見るだけ辛くなる。結局世の中、極まった何かを持ってるやつが勝つんだ」
「変態性ならあんな女に負けないわ」
「・・・すみません。少し署の方へご同行願います」
「え?」
「無くはないけど品揃えがねぇ。」
「なるほど!」
とき君と一緒にいると周りからの妬みと殺意が溢れんばかりに注がれるわねー。まあ、その負の感情が私の心の栄養になるのだけど。ふっふっふ
入店。デパートなんていつぶりだろうか。スーツとかは専門店で買ったし・・・。高校でモテファッションするために来たのが最後だろうか?・・・あれは本当に無駄金だった・・・
「いらっしゃいませ・・!?」
ふっ、とき君を見たな?これで貴様はとき君の虜だ!まあ、とき君は私のだがなぁ!!
「どうされました?お姉さん。」
「あ、あ、あぁ、びしょうねんぺろぺろ・・・」
「ちょっと!気をしっかり持ちなさい!」
「は!?ありがとう。・・・ごほん。いらっしゃいませ!男性用商品の御入り用ですか?」
「はい。」
持ち直したみたいだけど、最初の一言で貴様の人生は終わっている。
「え、いいんですか?僕後でもいいんですよ?」
「私は特に必要なものないから大丈夫よ。なんならまた来ればいいしね?」
「・・・それもそうですね!では、はい!」
その笑顔、100万ドラーよりも目映いです
「~~~っ!!で、では!証明書のご提示をお願いします。」
男性証明書:男性が生まれると発行されるもの。これをかざすことで、公共料金の割引、提携会社の割引もしくはサービス、そして一番大事な、男性専用ゾーンへの立ち入りが許可される。
へー、そんなもんあるのね。男性とこれっぽっちも関わりが無かったから知らんかったわ。
・・・うん?男性が生まれると?とき君って・・・、天使じゃん!(真実)
持ってない可能性が━━━━
「はい、どうぞ。」
あ、普通に持ってた。まあ、そうか。じゃないと国籍無しで政府に連れてかれるかもしれないもんね。
「お、お預かりします。クンクン、二橋様ですね。くんくん。確認いたしました。スーッ、ご返却いたします。それでは、こちらのエレベーターにお乗りください。」
おい、何喋りながら器用に証明書に付着したとき君の匂い嗅いでんだゴラァ。いますぐサツ呼んでしょっぴくぞ!!
「ありがとうございまーす。行きましょ、葵さん」
あっ、とき君。大胆にも私の手を握って・・・
「・・・・・・・っ!!!!!!」
「ちょっと・・?ハンカチちぎれるわよ?」
ハンカチを噛みながら憤怒の顔を通り越して般若か雷神風神みたいな顔をしている受付に一言、顔で送ろう。
この子、私の夫なんで、
ザマァ
「!?━━━━」
「ちょっとぉぉぉぉ!119ばん!!」
あ、ハンカチ破れて気絶した。