第十一話
ふたーつ
「とき君大丈夫ー?」
暑くも良い天気な朝。玄関でとき君が来るのを待つ。
「ガス栓と換気扇止めてきました~」
「うん。なら学校行こうか。」
「はい。運転お願いします」
「任されました!」
きっと夫と一緒に職場に行くような妻は日本中で私くらいだろう。なんなら、その夫が勤め先の学生とか世界的に見てもオンリーワンかも知れない。
世界でオンリーワンというのは何だか無駄に興奮するなぁ!
学校に着いて葵さんと別れてから教室に向かう。葵さんの出勤時間に合わせるから結構早めだ。
ホームルームの40分前だからクラスは結構ガラガラかもしれないな。
「おはようございます。」
「「「「「おはよう!!」」」」」
そんなことなかった。ほとんど全員揃ってた。クラスメイトからの揃った挨拶に少し(物理的にも)圧されてしまった。
「み、皆さん早いですね。」
「いやー、なんか目が覚めちゃって!」
「朝早くの空気っていいよね!」
「とき君の空気もね!」
「「星になれぇ!!」」
「絶破竜神脚!!!」
うわ、すごい音と共に変なこと言ってた子が空に翔んだ!て、あれ?今技を打った子・・・誰だ?
「まったく。いきなりそんな事を言うから余計に男が来ないんじゃ。」
「神楽坂まだその喋りしてんの?」
「うむ。男性からの反応が良いからな。」
神楽坂さんって言うのか。
「えっと、初めまして神楽坂さん。昨日転校してきた 二橋とき って言います。」
「皆から聞いておる。神楽坂 零じゃ。よろしく頼む。」
「神楽坂さんは、特殊な喋り方をしてるね。どこかの出身特有のもの?」
「違うよー。神楽坂のは男受けするからってだけで、共通語もふつーに喋れるよ!浅はかな考えだよね!」
「ま、容姿も相まって実際に男子からの評判は良いからの。やめる理由がないのじゃ。」
「容姿ってその・・・」
神楽坂さんの容姿は幼く、まるで小学生みたいな感じだった。正直飛び級とかを疑っているのだが・・・
「私は特殊な病気にかかっておってな。いわゆる成長障害なんじゃよ。」
「え!?えっと、それは、嫌な話題だったかな・・・?」
「いやいや。病気と言っても身長がこれ以上ほとんど伸びないというだけで、体の内側はしっかり育っておるから女として問題はない。」
「あ、そうなんだ。」
身長がそれ以上伸びないというのも結構不便だと思うが本人がそこまで気にしていないのなら問題ないのだろう。
「なんなら、この幼い体から子供と判断した男子達が優しくしてくれるから他の女子どもより得してるとすら言えるのじゃ。」
「男子たちも幼女には(比較的)優しいからなぁ」
「何で私は幼い頃に死ぬほど男に触れなかったのか・・・」
「まだそんな欲望が出ない年頃だから男が優しくしてくれるんやで」
「子供になれる薬くれ。」
「このようにの?特に頭を撫でられることが多い!」
神楽坂さんは自慢気に胸を張って言った。
これまでの見聞的に、この世界の男性は女と見れば警戒心バリバリで接するものだと思っていたが、女子未満であれば普通に接すると知ってこういう所は別の世界と同じなのだなと感心した。
やはりある程度幼い存在は守らなければという本能が残っているのだろう。それも性欲を覚え始める頃に対しては働かなくなるようだが。
キーンコーンカーンコーン
「む?ほれ解散じゃ解散。そろそろ担任が来るぞ」
神楽坂さんが両手を叩きながら皆を席に帰す。それに対して特に文句も出ないので、結構クラスの中心人物かもしれない。
「はーい、ホームルーム始めるわよー」
葵さんが来た。学校二日目が始まる。
「えーっと、前から言ってたやつだけど、」
そういえば早めに申し込んでおかないと(たぶん)怒られるかもしれない。