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即落ちから始まる異世界ライフ!~生きているとは言っていない~  作者: くくるカン!
第1章:始まりの火の鳥
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第1話:即落ち異世界

初投稿です。よろしくお願いします。

 村山火彩(むらやまかさい)はごく平凡な高校生だった。

 火彩などというキラキラネームのお陰で厨二病を長引させていたし、それをこじらせて空手を始めとした色々な武術も習ってはいたが、それでも世間一般的な男子高校生とは変わらない平凡な生活を過ごしていた。


 今、この瞬間までは。


 普段通り通っている道場、ちなみにこの日は剣道だった、からの帰宅途中に突如として足元から謎の光が立ち上り、火彩の全身を覆いつくしたのだ。

 その瞬間、火彩は歓喜した。


(こ、これは!夢にまで見た異世界召喚ではなかろうか!?)


 そう、繰り返しになるが火彩は厨二病をこじらせていた。

 どれくらいこじらせていたかと言うと、週5で剣道、弓道、空手、合気道、柔道を習うくらいガチでこじらせていた。それも全ては異世界に召喚されても戦えるようになる為である。後、史上最強の弟子的な漫画の影響も少々。


 それだけ中二病をこじらせている火彩にとってこの状況は何度もシュミレートした場面であり、次に起こる場面を想像するだけで胸が高まった。

 これで何事も無かったかのように光が消えたら物語はそれで終了になるのだが、このストーリーは火彩の望む展開の通りに進んだ。


 唐突に足元の感覚が無くなる。

 風の音と共に浮遊感が全身を包み込み、火彩が目を開けるとそこには彼が待ち望んでいた風景が広がっていた。

 まず目に映ったのは真昼にも関わらず天空に輝く赤と青の二つの月。

 そして、その間を駆けていく馬の躰に鳥の翼を生やしたペガサスの群れ。

 風に乗って身をひるがえせば現代日本ではほぼ消え失せた深く広大な森が広がり、その緑の海の真ん中に聳え立つ活火山と見られる山の中腹には蜥蜴の背に蝙蝠の翼が生えた巨大生物、ドラゴンが寝そべっている。

 どう見ても日本どころか地球ですらないその光景に火彩は叫んだ。


「異世界きたぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!!」


 夢にまで見た異世界召喚である。

 胸中に沸き上がった歓喜を火彩は抑えきれなかった。

 これからどんな冒険が自分を待っているのか。数々の強敵に試練、陰謀とそれに共に立ち向かう仲間たち。そして常に隣で自分を支えてくれるヒロイン。

 今まで読んだ数々の異世界小説、漫画、アニメが脳内をリフレインする。


 これが心踊らずにいられようか。


 沸き立つ心のまま虚空を踊り、地に背を向けて再び異界の双月を仰ぎ見る。

 地球ではありえないその双子月に唯でさえ最高値に達していたテンションが天元突破する。

 心のまま腕を突き出すと月に向かって宣言する。


「見てろよ!異世界!俺の名をこの世界に刻み込んでやる!待ってろよ!俺のヒロイン!すぐに見つけ出してやる!あぁ、けどハーレム展開もいいな!エルフに獣耳もありだ!くぅう!溜まらねぇ!村山火彩の異世界譚!ここに開ま――」



 ぐしゃり、と――。



 ナニかが潰れる音がした。




(あ……?)


 そう声を出したはずなのに、声は出なかった。

 さっきまで風を感じていたはずなのに、何も感じなかった。

 あんなに月が近かったはずなのに、何故今は遠い天井の穴にかすかに見えるだけなのだろう。

 これから冒険が始まるはずなのに、何故こんなにも寒――。


 そこで火彩の意識は途切れた。


 小説などではままあるパターンなので違和感が興奮に埋没されてしまっていたが、火彩が召喚されたのは上空5000メートル。人間が落ちたら普通に死ぬ高さである。ましてや後頭部から。むしろ刹那とはいえ思考能力が残っていたことが奇跡であろう。

 これがまだ手や脚から落ちていたのならば生きていた可能性もゼロでは無かったのかもしれないが、結果は御覧の有様。地面に落ちた熟れ過ぎたトマトだ。


 ともあれ厨二病を拗らせた少年、村山火彩の異世界譚はこうして誰にも知られることのないまま始まる前に終わったのである――。

感想、ご指摘等ありましたらお寄せください。

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