宝石の湖
珊瑚色の貝殻。その貝殻の中で、きらきら、きらきらと輝く、色とりどりの宝石たち。
空から降る光に答え、宝石は剣のように凛とした、鋭い光を見せる。
この世の美しさを凝縮したかのような、その宝石という物体に、私は見惚れていた。
自分とその宝石の周りでは、リボンのような形の不思議な光がたゆたっている。
そう。水の中では、光は柔らかく、踊るようにしなる。
宝石の中に入った光と、水の中に入った光。同じ光でも、入った物によって光はこうも姿を変える。それがとても、刹那的できれいなものだと、私は思った。
そして私は、持っていた貝殻同士を合わせて蓋をした。私は貝殻の色と似た、私の珊瑚色のヒレを動かし、水の中を舞い進んだ。
「おはよう、リズ。」
栗色の髪をなびかせて、レミィが泳ぎながら手を振った。髪の隙間に、水の上から降り注ぐ、太陽のきらきらした光が見える。
「おはようレミィ。」
レミィのうろこ、その隙間にはめられた宝石が、私の頭上を通り過ぎる瞬間にきらきらと瞬いた。
人魚たちが水の中を行き交う。人魚がひとつヒレを動かすと、あたりに落ちている宝石の粒が水の流れにさらわれて、また水の中をきらんと舞いだす。
見上げれば、青く透き通った水と光、人魚の透き通ったヒレ。水の中に漂って、きらきら輝く宝石の粒。
どうして陸に住むヒレ無しの人々は、こんな美しいものを手にする権利を放棄してしまったのだろう。
持ってはいけない禁断のものとして、私たち人魚に捧げようと思ったのだろう。
自分の尾ヒレの先に、いつの間にか乗っていた白い砂と数粒の宝石。えいっと尾ヒレを動かして、光のたゆたう水の中に、再びそれを舞い踊らせた。