表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人魚の宝石  作者: ふさふさ
2/19

宝石の湖

 珊瑚色の貝殻。その貝殻の中で、きらきら、きらきらと輝く、色とりどりの宝石たち。

 空から降る光に答え、宝石は剣のように凛とした、鋭い光を見せる。

 この世の美しさを凝縮したかのような、その宝石という物体に、私は見惚れていた。

 自分とその宝石の周りでは、リボンのような形の不思議な光がたゆたっている。

 そう。水の中では、光は柔らかく、踊るようにしなる。

 宝石の中に入った光と、水の中に入った光。同じ光でも、入った物によって光はこうも姿を変える。それがとても、刹那的できれいなものだと、私は思った。

 そして私は、持っていた貝殻同士を合わせて蓋をした。私は貝殻の色と似た、私の珊瑚色のヒレを動かし、水の中を舞い進んだ。


 「おはよう、リズ。」

 栗色の髪をなびかせて、レミィが泳ぎながら手を振った。髪の隙間に、水の上から降り注ぐ、太陽のきらきらした光が見える。

 「おはようレミィ。」

 レミィのうろこ、その隙間にはめられた宝石が、私の頭上を通り過ぎる瞬間にきらきらと瞬いた。

 人魚たちが水の中を行き交う。人魚がひとつヒレを動かすと、あたりに落ちている宝石の粒が水の流れにさらわれて、また水の中をきらんと舞いだす。

 見上げれば、青く透き通った水と光、人魚の透き通ったヒレ。水の中に漂って、きらきら輝く宝石の粒。

 どうして陸に住むヒレ無しの人々は、こんな美しいものを手にする権利を放棄してしまったのだろう。

 持ってはいけない禁断のものとして、私たち人魚に捧げようと思ったのだろう。

 自分の尾ヒレの先に、いつの間にか乗っていた白い砂と数粒の宝石。えいっと尾ヒレを動かして、光のたゆたう水の中に、再びそれを舞い踊らせた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ