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異世界ブラザーズ  作者: シュウさん
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込み上げる涙

「そ、そんな・・・兄が死んだなんて嘘ですよね?マモルーヨさん、

お願いですから嘘だったと言って下さいよ!」

ピョロリの街で警備兵隊長を務めるマモルーヨより、

兄の死を告げられたイケルは動揺した様子で、

大きな声を叩きつけるように、そう叫んだ。


「残念ながら本当なんだよイケル君、

先程、お兄さんに手を掛けた盗賊共を尋問して確認も取れているんだ・・・」


「うわぁぁぁっ!兄さん!兄さ~ん!」

イケルは、そう叫ぶと、

床に崩れ落ちる様にして号泣し始めた。


「クッ・・・ククッ・・・」

マモルーヨやイケルが、そうしている間にも、

懸命に込み上げる笑いを何とか噛み殺そうとしているシュウ


「イケル君、お兄さんを亡くされて悲しみに暮れる君に申し訳ないんだが、

こちらのシュウ君が、お兄さんの御遺品を届けてくれたので確認して貰えるかい?」


「グスン・・・兄の遺品ですか?」


「ああ、こちらのシュウ君と、弟さんのケン君が、

君のお兄さんの馬車が襲われていたところに偶々通り掛かって、

盗賊共を撃退してから、お兄さんの御遺体を荼毘だびに付してくれたそうなんだよ」


「そうなんですか、それはご迷惑をお掛けしました。

亡き兄に代わって、御礼申し上げます。」


「いえ、もう少し早く俺達が駈け付けられれば、

お兄さんも無事だったかも知れないので残念です。」


「シュウさん、偶々通り掛かっただけの見ず知らずの貴方が、

兄の遺体を荼毘に付してくれたばかりか、

そうして、涙してくれて頂いてるんですから十分に感謝に値しますよ」


「え、ええ、俺も兄弟が居るんで、

イケルさんの悲しみが良く理解出来るんですよ」

シュウは、この涙は笑いをこらえた為に出たものだとは言えないので、

そう言って誤魔化した。


「それではシュウ君、タダノーの持ち物を出してくれるかい?」

シュウとイケルの、やり取りが一段落ついたと見当を付けた

マモルーヨが、そうシュウに告げる


「はい、分かりました。マモルーヨさん」

シュウは、そう返事を返すと背中に背負った魔導リュックを下ろして、

中から何点かの品物を取りだし、店のカウンターの上へと並べた。


「どうだい?イケル君」


「はい全部、兄の持ち物に間違いありません

中には財布などもあるんですけど、宜しいのですか?シュウさん」


「ええ、俺達は盗賊共を鉱山送りにする代金や、

盗賊が使ってた馬を売る金だけで十分ですから、どうぞお納め下さい。

それから外に、こちらの店の馬車や馬も連れて来てありますよ」


「えっ!?馬車や馬もお返し頂けるんですか?」


「はい、俺達は魔導車で旅をしてるんで必要ありませんし、

お金も、先程の分で十分ですからね」


「ありがとう御座います。

兄の亡き後にも、この店を続けて行くのに大変助かります。」


「そうだ、一つだけお願いがあるんですけど、

お兄さんが襲われた際に、犯罪奴隷として幼い姉弟を連れていたんですが、

この街まで来る間に、色々と話をしたら情が移ったんで譲って頂きたいのですが、

宜しいでしょうか?」


「ええ、勿論もちろん構いませんよ、

元々、兄の持ち物や、馬車や馬、そして馬車の中の奴隷なども、

全部シュウさん達の物という扱いになるんですから、

兄の遺品や、馬車や馬をお返し頂けただけでも大感謝です。」


「そうですか、では、ありがたくお譲り頂きます。」

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