お葬式あるある
「ここが、シカバーネが経営している奴隷店だよ」
シュウ達が『ピョロリの街』へと到着した当初から対応に当たっていた
警備兵の案内で、一行はシカバーネが経営をするという店を訪れた。
確かに、店の入り口の上に掛けられた壁看板には、
『シカバーネ奴隷店』と掲げられている・・・
「そうですか・・・シカバーネさんの弟さんとお会いするのは、
兵隊さんと俺だけで構いませんかね?」
声を掛けられたシュウが、
警備兵に、そう問いを返した。
「ああ、簡単な説明と御遺品をお返しするだけだから、
シュウ君だけで良いだろう・・・そう言えば、
まだ私の名前を教えて居なかったね、
私は、この街の警備兵隊長を務める『マモルーヨ』だ宜しくな」
「隊長さんだったんですね、
はい、宜しくお願いします。マモルーヨさん」
「「「宜しくお願いします。」」」
「ああ、皆も宜しく頼む。
それではシュウ君、ご一緒に願えるかな?」
「はい、分かりました。
そんじゃ、俺は行って来るから、
ケンは、ラビ子達と馬車の所で待っててくれや」
「うん、分かったよシュウ兄ィ」
「行ってらっしゃいませシュウ様、マモルーヨ様」
「行ってらっしゃいシュウ兄ちゃん、兵士のおじちゃん」
シュウとマモルーヨは、皆に見送られて、
店の扉を開けると中へと入って行った。
「イケル君、居るかい?」
店に入ると、正面に小さめの受付カウンターの様な物があって、
今現在は、誰も居ない状態であった。
左手には、街の入り口にあった警備兵の詰所で見た様な、
オーブが乗せられたテーブルと、イスが2脚向い合せに置かれて居り、
右手には、商談に使われるであろうソファとテーブルの応接セットが置かれていた。
「は~い!今、参りますので少々お待ち下さ~い!」
マモルーヨの声に答える様に、受付カウンターの後ろの壁にある開口部の方から、
声が聞こえて来た。
シュウらが、そのまま5分程待っていると、
その壁の開口部から、シカバーネに良く似た顔の、
20歳台中ほどに見える青年が出て来る、
シカバーネは見た所40歳台中盤から後半に見えたので、
少し年の離れた兄弟の様であった。
「すいません、店の者達に食事を与えて居たので遅くなりました。
あれ?マモルーヨさんじゃ無いですか、
ウチの店に見得られるなんて珍しいですね、
兄に御用でしたら、まだ新しい店の者らを迎えに出て戻って居りませんが・・・」
どうやら、警備隊長のマモルーヨと、
シカバーネの弟のイケルは顔見知りの様であった。
「ああ、それは知ってるよ、
今日はイケル君、君に用事があって伺ったんだよ、
良いか?気持ちを落ち着かせて心して聞いて欲しいのだが、
今さっき連絡が入って、君の兄上であるタダノーが乗った馬車が盗賊共に襲撃されて、
残念がらタダノーは命を落としたそうなんだよ・・・」
(イケル・・・タダノ・・・シカバネ・・・)
「クッ!」
シュウは突然の笑いの衝動に襲われたが、
この悲嘆場で笑いを漏らそうものなら、
大顰蹙を買うのを理解していたので、
グッと下を向いて俯きながら湧き上がる笑いをかみ殺した。




