戦闘スタイルの考察
「ところでさ、シュウ兄ィ
あの中に建ってる平屋って、父さんが造る家に似てると思わない?」
「ん? そうか、ケンは小さかったから憶えて無いのも無理ないよな、
あれは、ケンが3歳になるまで住んでた親父が建てた家だよ」
「そうなの?」
「ああ、俺達が大きくなってくると手狭になりそうだったから、
今の家を建てて引っ越したんだ」
「へ~そうなんだ
通りで初めて見た筈なのに、何か懐かしい気がした訳だね」
「ああ、記憶を引っ張り出せないだけで、
心のメモリーには、ちゃんと刻まれているのかもな」
「うん、そうだね」
「さて、こいつの呼び名なんだが、
一般的にはアイテムボックスって、生き物は入れられない設定が多いから、
何か別の呼び方を考えた方が良いのかな・・・」
「そうなの?」
「ああ、それにアイテムボックスってのは、
通常だと個人が所持するスキルの場合が殆どだから、
コレの場合は、どちらかと言えば亜空間へと繋がる魔導具の扱いになるんだろうな」
「魔導具って、魔法の道具って事?」
「ああ、その認識で大体合ってるぞ」
「じゃあ『魔導式倉庫』って、どうかな?」
「確かに倉庫の役割も持ってるけど、
木材の加工場とか、住居も付いてるからなぁ・・・」
「じゃあ『魔導式秘密基地』は?」
「う~ん、トラックで移動出来るメリットとか、
亜空間を利用してるってところも、盛り込みたいところだよな」
「移動出来る倉庫や住居か~・・・何か、トレーラーハウスみたいだね」
「おっ、『亜空間トレーラーハウス』ってのは、どうだ?」
「ちょっと名前が長過ぎ無いかな?」
「じゃあ、略して『亜空トレウス』にするか」
「おお~!何かカッコイイ響きだよね」
「じゃあ、これで決定だな」
「うん、僕も『亜空トレウス』で良いと思うよ」
「よし、俺達の本拠地の呼び名も決まったところで、
まずは『亜空トレウス』内の設備の確認をするか」
「賛成!」
2人は、一応トラックが目立たない様に、
背の高い草が繁っていて街道から見通し辛い場所まで移動させると、
荷台の部分から亜空間へと入って行った。
「シュウ兄ィ、この木材を加工する機械類って電源が繋がって無いんだね」
まず、亜空間に入って直ぐに目に付いたのは、
右手にある加工場に置かれた機械類なのだが、機械自体は普段使っている見慣れた形でも、
電気やエアを供給するコードやホースが見当たらなかったのであった。
「ああ、まだ村や街を見て無いんで、
合ってるかどうかは分からんが、この手の異世界ってのは、
魔法があって凄そうなんだが、生活水準は中世ぐらいの所が多いんだよ、
従って動力源は電気では無くて、魔力とか自然エネルギーってとこなんだろうな」
「ふ~ん、そうなのか」
「ああ、試しに何か稼働させてみろよ」
「うん、分かった。」
ケンは、取り敢えず一番近くにあった
丸太を2つに出来る程の大きさを持つ円形のノコギリ刃が付いた
機械の稼働スイッチを入れてみる、
すると、ヒュイ~ンという機械音を上げながら機械が動き始めた。
「やっぱりな、俺達の魔力を吸い上げながら稼働する様に出来てるんだよ」
「ふ~ん、機械に触ってても全然魔力を吸われている様な感じがしないって事は、
トラックみたいに、魔力の消費効率が良いって事なのかな?」
「ああ、そういう認識で合っていると思うぞ、
しかし、これで俺達は強力な武器を手に入れられたな」
「え? どういう事?」
「コードレスって事は、自由に持ち運べるって事だろ?
例えば、コレなんかも持ち歩きが出来るって事さ」
シュウは、整理棚に置いてあった工具を手に取って持ち上げて見せた。
「あっ! 釘打ち機!」
シュウが手に取って見せたのは、エアなどの力を利用して木材へ釘を打ちこむ機械であった。
「ああ、こいつを魔獣の頭に押し当ててバスッ!と釘を打ちこめばイチコロだろ?」
「う~ん、確かに攻撃力は高そうなんだけど、
生き物を殺すのは何かヤダな~」
「まあ、地球に帰れば、人の親のケンはそうかも知れないな、
ケンはスキルに剣術(極)がある事だし、
手作りで木刀でも作って敵を無力化させて貰えれば、止めは俺が刺すから良いぜ」
「うん・・・分かったよ、シュウ兄ィ
そう言えば、そんな武器を使わなくたってシュウ兄ィにも、
格闘技全般とか武器使用全般とかいうスキルが有ったんじゃ無かったっけ?」
「ああ、有るには有るんだがケンと違って『(極)』じゃ無いだろ?
って事は、その武術や武器の『(極)』を持ってるヤツには敵わないって事だ
そこで、スキルで不利な俺が敵と対等に戦うとすれば、
どうすれば良いと思う?」
「う~ん、自分に有利な状況を作り出せば良いのかな~?」
「ああ、まあ正解ってとこだな、
そして、そういう状況を作り出す為に重要になってくるのが、
歴史物とか戦記物とかで定番の『敵を良く知る事』って訳だ
この点に関しては、俺はこの手の世界を舞台とした本を読み漁ってるから、
大概の事は分かると思うんだけど、
俺が勝つ為には、相手の意表を突く攻撃が必要になって来るだろ?」
「そうか! そこで敵が見た事無い武器を使う訳か」
「ああ、相手に警戒感を抱かせて攻撃を躊躇わせる事が出来るし、
萎縮して体の動きが悪くなるかも知れないからな、
ケンだって、相手の攻撃方法が分からないって怖いだろ?」
「うん、確かにそうだね」