姉弟の事情2
「それで、近所のオバちゃんから、
母ちゃんの容体を聞いたラビ子は如何したんだ?」
「お母さんが居なくなったら頼れる人とかも居なかったんだよね」
「はい、頼れる人も居なく、
食堂や家は、母の治療費に借りたお金の抵当になっていたので、
本当に如何しようも無い状態でした。
ただ、ウサ太に母の容体を伝えるか如何かだけを悩みましたが、
いきなり母が居なくなるよりかは、幾らかショックが和らぐだろうと考え、
ウサ太にも正直に話す事にしたんです。」
「まあ、その方がウサ太も、
母ちゃんに掛けられる最後の言葉とかを考えて話せるから正解だろうな」
「別れの会話も出来ないで最後を迎えるなんて辛いからね」
「はい、それで私から、
母の事を告げられたウサ太は暫くの間泣いていたのですが、
泣き止むと、最後に母に何かをしてあげたいと言い出したんです。
それには私も同感だったんで、何をしてあげると母が喜ぶかを2人で考えたのですが、
ウサ太が、母の大好物だった果物を、
もう一度食べさせてあげたら喜ぶんじゃないかと言ったんです。
その意見には私も賛成だったのですが、
その果物は他の国で採れる珍しい品物だったので、
この国では高価な為、私達の持ってるお金では到底買える筈がありません、
そうしている内にも、母の容体は日に日に悪化して行っていたので、
思い余った私と弟は、つい出来心で果物屋さんに並んでいた
その果物を盗もうとして捕まり、警備兵の方達に牢屋に入れられてしまったのです。」
「なる程な、それで犯罪奴隷になっちまったって訳か・・・」
「それで、その後、お母さんは如何したの?」
「はい、その日の夜、私達が帰宅しないのを不審に思い、
問い詰められた小母さんが正直に私達の事を話したところ、
容体が急変して亡くなってしまったと、
面会に来てくれた小母さんが謝りながら教えてくれました。
グスン・・・きっと、泥棒を働いた娘達なんていらないと、
思いながら死んだんだとおもいます。」
「ウェ~ン」
「そんな事は無いと思うぞ、どんな事があったって親子は親子だからな」
「そうだよ、きっとお母さんはラビ子ちゃん達の気持ちを理解して、
ありがとうねって思いながら逝ったと思うよ」
「グスングスン・・・ホントにそうでしょうか?」
「グスングスン」
「ああ、間違いないぞ!」
「きっと、そうに決まってるさ!」
「ううっ・・・お母さ~ん!」
「ウェ~ン」
「ズズッ・・・ちくしょう!俺達がもっと早く、こいつらと出会えてたならな」
「あれ?シュウ兄ィ、もしかして泣いてるの?」
「バカ違ぇ~よ、ここんとこ肌寒い日が多いから、
ちょっと鼻風邪をひいただけだっちゅ~の!」
「シュウ兄ィは、真冬にパンツ一丁で寝たって風邪なんかひかないじゃん」




