由緒(ゆいしょ)正しき・・・
「今、俺達で馬車の扉の鍵を探してみるから、
ちょっと待っててくれや」
「誰が鍵を持ってたとか分かるかな?」
「はい、分かりました。
多分、扉の鍵は御者台に座られていた
奴隷商のシカバーネさんが、お持ちになられていると思います。」
「プッ・・・シカバーネが屍に・・・ククッ・・・」
「シュウ兄ィ、不謹慎だよ」
シュウとケンは、馬車の中に居る人物の意見を頼りに、
御者台で事切れていた人物の懐を探ると、
それらしき鍵を発見するに至って馬車の扉を開ける事が出来た。
「おっ!ウサ耳じゃん」
「君達は兎タイプの獣人って事で良いのかな?」
シュウとケンが馬車の扉を開けると、中から頭にウサギの様な耳を持つ少女と、
少女より少し年下と見えるウサ耳少年が現われたので、そう尋ねた。
「扉を開けて頂きまして、ありがとう御座いました。
はい、仰る通りに私達はウサギ獣人で間違いが御座いません
私はラビ子と申しまして、この子は弟のウサ太です。」
「・・・ありがと」
「ラビ子とウサ太って、また適当な・・・」
「君達の名前は奴隷商の人が付けたのかな?」
「えっ? いいえ、私達の名前は両親が付けてくれたものですよ、
ラビ子もウサ太もウサギ獣人では、割と有り触れた名前なのですが、
それが何か・・・?」
「曾爺ちゃんもウサ太だった。」
「えっ!?そうなの?」
「い、いや、別に何の問題も無いよ」
「そうですか、それで御2人は冒険者様なのでしょうか?
シカバーネさんが雇った護衛の冒険者の方々が敵わなかった盗賊達を、
いとも簡単に退治されて居られた様に見受けられましたが・・・」
「いや、俺達の本職は建築ギルド所属の大工だぜ、
偶に内職で家具作りをしたりするけど、家を建てたり修繕したりの方が得意だな、
名前は俺が兄貴のシュウで、こっちは弟のケンっていうんだ。」
「宜しくねラビ子ちゃん、ウサ太君、
それから、盗賊達を倒せたのは趣味で剣術を習っていたからだよ」
「そうなのですか、どうぞ宜しくお願いします。
シュウ様、ケン様、実は御二人に折り入っての、お願いがあるのですが、
私達、姉弟奴隷のご主人様に成っては頂けませんでしょうか?」
「えっ!?俺達が、君達の主人にだって?
奴隷商が死んだら自動的に解放されるとかじゃ無いんだ?」
「君達は、奴隷商に捕まって無理やり奴隷にされたとかじゃ無いのかい?」
「はい、私達姉弟は罪を犯して犯罪奴隷となってしまいましたので、
奴隷商の方が亡くなろうとも、刑期を終えるまで奴隷として勤め上げなければ、
解放される事は無いのです。」
「その年で犯罪奴隷だなんて何をやったんだ?」
「何か事情があったんでしょ?
良かったら僕達に話して見てくれないかな?」




