南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)
「ケン、まずは馬車の右側の連中から片付けるぞ!」
「オッケー!シュウ兄ィ」
シュウはケンに声を掛けると、
亜空トレウスの速度を上げて、馬車の右手後方に位置付けている、
盗賊どもが駆る馬へと近付いて行った。
「おい!なんだ、このガキ!棒っきれ何か持ちやがっ・・・グヘッ!」
「仲間に何しやがる!そんな棒っきれ一本で俺達に敵うと・・・グハッ!」
「手前ら何やってるんだ!そんなガキ一人とっとと・・・ドワッ!」
トレウスの助手席のウインドウを開けたケンより、
木刀による突き攻撃を喰らった盗賊どもが次々と落馬して行く、
馬車を追い駆けている為に、それなりの速度が出ているので、
落ちた盗賊どもは良くて打撲、運が悪い者は骨折などを負っている様だ。
「ナイスだケン!
次は左側に回り込むから後部座席から攻撃しろよ」
「うん、分かったよシュウ兄ィ」
右手の盗賊どもを片付けた2人は、
同じ様にトレウスからの攻撃で左手の盗賊どもも一蹴した。
「よ~し!これで盗賊どもは殲滅したな・・・うん?
馬車が少し先で停まった様だが、俺達が盗賊を片付けたのに気が付いたのかな?」
「必死になって逃げていたんだろうから、
それは無いんじゃないのかな?」
シュウとケンは、取り敢えず盗賊どもの事は据え置きとして、
停車した馬車の様子を見に行く事とした。
「あっちゃ~、御者の人が槍で突かれちゃってるよ、
もう既に亡くなっちゃってるみたいだから、
自然と腕が下がって、手綱が緩んで馬が止まったんだな、ナム~」
「ナマンダブ、ナマンダブ・・・」
2人は、亡くなった御者に向かって手を合わせながら念仏を唱えた。
「あの~、馬車の外に居られる方々、宜しいですか?」
目を瞑って手を合わせていた2人に、
突然、馬車の中からとみられる声が掛けられる
「おっ、誰か馬車の中に居るみたいだぞケン」
「そうみたいだね、
でもシュウ兄ィ、この馬車って・・・」
馬車の方を見ながら、そう呟くケンの視線を追ってシュウが見てみると、
御者台と馬車の中とを隔てる壁の開口部や、
出入り口のドアに設けられた開口部には、
全て鉄格子が嵌め込まれているのが見て取れた。
「もしかして、この馬車って奴隷商とかのだったのかな?」
「見た感じだと多分、そうなんじゃ無いかな・・・」
「はい、あなた様方が仰る通りに、
私達は奴隷として、街に売られて行く途中で盗賊どもに襲われたのです。」
シュウとケンの言葉を肯定する返事が馬車の中から返って来る、
2人が落ち着いて良く聞くと、声の主は思いの外、
若い女性の声の様であった。
「取り敢えず詳しい話とかは、
馬車から出て貰ってから聞くとするか・・・」
「うん、直接顔を見ながらの方が感情とかも、読み取り易いからね」




