最近の若者
「しかし、あんなにデカい牛魔獣の肉とモツにしては、
いやに量が少ない気がするんだけど、こんなもんなんかね?」
シュウが、そう言いながら魔導冷蔵庫内のブロック肉を取り出すと、
すぐさま同じ大きさのブルック肉が同じ場所へと現れた。
「わ~、お肉のキンタロウ飴や~」
「シュウ兄ィ、彦〇呂ネタは古過ぎるんじゃない?」
「〇摩呂様が古いだと!?
失礼な事を言うんじゃないぞ!ケン」
「彦〇呂『様』?」
「そうだぞケン、何と〇摩呂様はラーメンの味のみで、
都内の人気ラーメン店の何処かを全て当ててしまわれる程の強者なのだ!」
「う~ん、ラーメン好きのシュウ兄ィは兎も角、
僕には今一つピンと来ないんだけど・・・」
「そうだな~、ケンの好きな甘味で例えるとすると、
もし、〇摩呂様がタイヤキを食べると、
それが何処の店で売ってるタイヤキかって分かるってとこかな」
「お~!それだったら、何となく彦〇呂様の凄さが分かるよ」
「だろ?
しかし、魔導冷蔵庫の『自動解体機能』で食卓上のシートの上に、
牛魔獣の革と骨と魔石が残ったんだけど、革と魔石は分かるんだが、
骨にも何か素材としての価値があるって事なんかな?」
「う~ん、骨の一部と考えると、角なんかは武器とか飾りとかに加工してから、
使えそうな気がするんだけどね・・・
でも、血なんかは完全に消えちゃってるところから考えると素材なんだろうね」
「そうだな、まあ売れ残ったら牛骨スープの出汁でも取れば良いか」
「それは名案なんだけど、誰が、その出汁を取るのかな?」
「そうだ、その問題もあったんだよな・・・」
アナポーの街を出たシュウとケンには最近、
道中の資金稼ぎの他にも一つ、問題が顕在化して来ている、
それは、この世界へと来て序盤に立ち寄った村や街が、
割と、どこも裕福だった為に気付かなかったのだが、
最近、立ち寄る村々には食堂的なものが無いのであった。
アナポーの街を出立する際に、主食となるパンを大量に購入して、
惣菜は、途中で立ち寄る村などで、
現地の味を楽しもうという2人の計画であったのだが、
海運が中心のルクシア共和国では街道沿いの村や街は、
宿場街といった体を取って居らず、商隊は自前の料理番が居り、
個人の旅人は携帯食を持参して素泊まりするのが普通との事であった。
「俺もケンも、手に入れた肉と野菜を、塩のみか塩コショウの味付けで、
焼くか煮るか炒めるかしか出来ないからな・・・」
「いい加減、そのパターンの繰り返しにも飽きて来たよね」
豊富に毎食の様に肉が食べられるシュウ達は、
滅多に肉など口にする事が出来無い、貧しい村人らからすれば十分に贅沢なのであるが、
こちらの世界と違って、飽食の国である日本から転移して来たばかりの2人に、
それを言うのは少々酷というものであろう・・・
「う~ん、自信は全然湧いて来ないんだが、
俺とケンが料理の仕方を覚えるしか無いんかな・・・」
「それか、信用が置ける料理が得意な仲間を増やすとかだね」




