達人現(たつじんあらわ)る
「ギャハハハッ!見ろよ、あの弟の方、
俺達の魔鋼製の剣に対して、木の棒っ切れなんか取り出しやがったぜ」
「うむ、あんなもんで俺達に立ち向かおうとするとは無謀も良い所だな」
「あの、兄の方が持ってる魔導具らしきものには一応注意した方が良いぞ」
「よっしゃケン、あいつら油断してるみたいだから、
適当に蹴散らしてくれや、そうしたら俺が無力化してくからさ」
「うん、分かったよシュウ兄ィ」
ケンは、そうシュウに返事を返すと木刀を右手に連中の方へと走り出した。
「むっ、来る様だぞ、
向こうが歯向かって来たのだから仕方が無い、
手足の一本も切り落としてやれば、泣いて謝って来るだろう。」
「そうだそうだ、例え謝って殺してしまったところで、
私達が揉み消してやるから心配はいらんぞ」
「やつらを痛めつけてやれ!」
「「「「「おう!」」」」」
教団の連中が後ろに下がると、用心棒共が剣を抜いて前に出て来た。
「一応、手加減はするけど骨折ぐらいはするかも知れないからゴメンね」
「ぬかせ小僧!死ね!」
「俺達に歯向かったのを後悔するんだな!」
「でやぁぁぁっ!」
キン!キン!キン!という金属音に混ざって、
ガッ!ゴッ!ボクッ!といった打撲音が鳴り響いた。
「ばっ、馬鹿な!?魔鋼製の剣が折れる・・・だと・・・」
「うぎゃ~~~っ!痛ぇ~痛ぇ~よ~!」
「足がぁ~!俺の足がぁ~!」
倒れ込んだ用心棒たちの周囲には、刃が途中から折れた剣が共に転がっていた。
「馬鹿な!?ただの木の棒で、魔鋼製の剣が折れる筈無かろう!
もしや偽物でも掴まされたと言うのか!?」
「いいや!ちゃんと鑑定スキルを持った者を同行させていたから、
本物に間違いは無い筈だ!」
「では、あの子供の腕前の方が並外れてると言うのか・・・!?」
飽きっぽい兄のシュウと違って、
幼少の頃から剣道一筋に打ち込んで来たケンは、
学生時代も全国大会で上位進出者の常連で、
そこで対戦して来た相手達の剣速と比べると、
用心棒共の剣はスローモーションの様にハッキリと見切れる為、
ケンは身体強化のスキルを使いながら、魔鋼製の剣のハラを直角に断ったのであった。
「よし!ケン、倒れている連中は俺に任せて、他のヤツラも仕留めるんだ!
教団の連中も逃がさない様に気を付けるんだぞ!」
「オッケー、分かったよシュウ兄ィ」




