知的財産権(ちてきざいさんけん)
「では、『コウヤサン・ウォーター』の販売に関する事項に付きましては、
こちらの内容で間違い御座いませんでしょうか?」
アナポーの街の商業ギルド職員で、
シュウ達の担当となったミコチャが、
販売に関する話し合いの中で出て来た事柄を、
箇条書きにしたものを清書してから、
シュウ達に示した。
「・・・・・良し、ざっと見た感じだが問題無さそうだな、
この内容で大丈夫だよな?ケン」
「うん、僕も別に問題無いと思うよ」
「ありがとう御座います。
では、この内容にて係の者に契約書の作成を指示して参りますので、
暫しの間、お待ち下さいませ。」
「おう! 悪いなミコチャ、色々と手数を掛けさせて」
「お世話になります。」
「いえいえ、私共も『コウヤサン・ホルダー』という、
ヒットしそうな商品をご紹介いただけましたから、
お気になさらないで下さいませ、
でも、アイデア料をお支払いしなくても本当に宜しいのですか?
通常ですと、その商品の開発者様には、
商品の売り上げの何パーセントかをアイデア料としてお支払するものなのですが・・・」
「ああ、別に構わないぜ、
そのホルダーのアイデアは、俺が考え出した訳じゃ無くて、
遥か遠くの国で、昔そんな商品が大流行した事があるってのを、
偶々知ってただけだからな、
それに、俺達の仕事は開発者じゃ無くて大工なんだから、
自分らの食い扶持ぐらいは本業で稼ぐさ」
「殆ど、この大陸との行き来が不可能な程に、
遠い国にあった商品って話なんで、
今後、アイデア料を寄越せって人も現われませんから、
安心して商品化して下さいね」
「そうなのですか、分かりました。
では、ありがたく御厚情に甘えさせて頂く事とします。」
ミコチャは、シュウ達にそう礼を告げると、
契約書を作る為に会議室の防音結界を解除してから、
扉を開けて退室した。
「そうか、他の国って言うと、
アイデアに関する権利が絡んで来たりするから不味かったんだな」
シュウは、ミコチャの足音が遠ざかったのを確認してから、
ケンに、そう語り掛けた。
「うん、日本程じゃ無いみたいだけど、
昔の勇者様が知的財産権みたいな考え方を、こっちの世界に根付かせてるみたいだから、
日本の某近隣国よりは余程、知的財産に対する権利には誠実なんじゃないかな」
「言えてるな、連中は世界の大国と肩を並べる近代国家と自尊してる割には、
平気な顔で人様の知的財産をパクって、知らん顔しているからな」
「世界に認められる国家を目指すなら、
その辺の個人の権利も考えられないと駄目だよね」




