大ヒット商品の造り方
「コウヤサン・ホルダーと申しますと、
この図で革製のヒモが筒状になった
この部分にコウヤサン・ウォーターの竹筒を収めると言う事なのでしょうか?」
シュウが大ヒット間違い無しと豪語する商品が、
ただ単に竹筒を入れて持ち運ぶだけに過ぎない様なので、
若干、ガッカリした様子でミコチャが尋ねる
「ああ、ミコチャさんが言った通りに、
竹筒を肩から下げて持ち運ぶって品物だな」
「両手が使えるから意外と便利なんだよね」
「本当に、この品物がシュウ様が仰る程にヒットするのでしょうか?
態々、肩から下げて持ち運ばなくとも、
バックに入れて運べば済むのでは無いでしょうか?」
「まあ、緊急時なんかにバックから一々出さなくても、
素早くコウヤサン・ウォーターで治療が出来るって利点はあるんだが、
この商品をヒットさせるには、売り出し方に工夫が必要なんだな」
「皆が皆、割りと高めのコウヤサン・ウォーターを買える訳じゃ無いからね」
「売り方の工夫ですか?」
「ああ、ケンも言ったけど、
コウヤサン・ウォーターを買える人だけだと限られてしまうから、
ポキール神父さんに依頼して、竹筒のみを水筒として作って貰い、
コウヤサン・ホルダーとセットで売り出すんだよ、
竹には殺菌作用があるから中に入れた水が長持ちするとか宣伝しながらね」
「匂いも付きにくいしね」
「なる程、竹筒とホルダーのみなら安価で発売できそうですね」
「ああ、後は名前が売れている冒険者とか、
子供がいる貴族なんかがコウヤサン・ウォーターを購入する際に、
タダでホルダーをプレゼントするとかね」
「是非、普段使いして下さいってね」
「商品を無料で差し上げるのですか?」
こちらの世界では値引きサービスが一般的なので、
商品をオマケで付けるという発想には馴染が無いのである
「ミコチャさんにも覚えが無いかな?
有名な人とか、知り合いが良さげな品物を使ってるのを見て、
自分も使ってみたいと思った事とか・・・」
「憧れの人とかが使ってると、
自分も、その人に近付けそうな気がして買ったりするよね」
「なる程! 有名な方や、貴族様のお子様に使って貰う事によって、
自らで流行を造り出そうって事なんですね!?」
「まあ、そういう事だな」
「単純だけど、割と効果的な作戦だよね」
「偶に、『何でこの商品が売れるのか?』って、
不思議に思う物が流行ったりする時がありますが、
自らで流行りを造り出すっていう発想はありませんでした・・・」
「こっちの商売って、基本受け身だからな」
「そう言えば余り、売り込んでる人って見ないよね」




