二番煎じ(にばんせんじ)
「ところでミコチャさん、この街で簡単に手に入る魔獣の革で、
安くて強くて薄い物っての何かあるかな?」
シュウが、ノートに鉛筆を使って何かを描きながら尋ねる
「それでしたら、断然マッドパイソンの革ですね、
お肉が美味しいので、良く冒険者の方達が狩られますから、
商業ギルドにもタップリと革の在庫を抱えて居ります。
何しろ1頭が大きいので、それから加工されて出来る革も巨大なんですよ、
素材としても薄くて強いので、カバンや靴やマントなどに利用していますよ、
ちなみに、お二人が使われている魔導リュックの素材もマッドパイソンの革製ですね」
「へ~、このリュックの素材もそうだったのか」
「軽くて柔らかい良い革だよね」
「はい、安く手に入れられる材料ですので、
そのリュック1つ分の材料費で300ギル程だと思われます。」
「そんなに安いんだ!?
割と大き目のリュックだから1500~2000ギルぐらいは、
するのかと思ったよ」
「通りで空間魔法を付与して貰う前のリュックが安い訳だよね」
「ところで、先程からシュウ様が描かれて居りますものを、
拝見させて頂いてるのですけど、
ソレは何を描かれて居られるのでしょうか?」
「うん? コレか?
この図は、こっちが『完成予定図』で、
その横に描いたのが、それの『展開図』だな」
「完成予定図は分かりますが、テンカイズですか?」
「ああ、この展開図に描いた様な形で革を切断して組み合わせれば、
完成予定図の様な形になるって事だな」
「なる程、それで『展開図』ですか、
初めて拝見いたしましたが、なかなか合理的な考え方ですね」
「商業ギルドに出入りしてる職人さんとかは描いたりしないのか?」
「必要な材料の量とかを数えるのに使いそうだけどね」
「ええ、一般的には完成予定図のみですね、
材料の数量などは各々の勘に頼って手配している様です。」
「それじゃ、材料の多かったり少なかったりが、
ハンパじゃ無いんじゃないのか?」
「余程のベテランにでも成らなきゃ無理そうだよね」
「はい、職人の方達も、いつも頭を悩まされていらっしゃいますね、
でも、この『展開図』は良いですね、必要な材料の量が実に分かり易いです。
宜しかったら、この方法を他の職人さん達に教えても構わないでしょうか?」
「ああ、別に構わないぜ、
俺達の国じゃ当たり前に使われているもんだからな」
「材料の無駄が無くなるのは良い事だよね」
「ありがとう御座います。
それで、こちらの完成予定図に描かれている物なんですけど、
これは何なのでしょうか?」
「これが、大ヒット間違いなしの商品『コウヤサン・ホルダー』だぜ!」
「なる程、シュウ兄ィは『コウヤサン・ウォーター』と、
バーターで売りに出そうって魂胆な訳か・・・」




