最高の材料
「すまんすまんヅラ、他国から、この国に来た人達に、
この冗談を飛ばすのがオラのお約束ヅラよ」
「えっ!?何で俺達が他国から来たって思ったんだ?」
「あれヅラ」
シュウは、第一異世界人の指差す方向へと目をやった。
「車?」
「そうヅラ、あれはお隣のコウガ王国で生産している『魔導車』ってヤツだべ?
この国でアレに乗ってるのは上級貴族様達だけだからな、
お前さん方は、とてもじゃねぇが貴族様には見えないから、
必然的にコウガ王国からの、お客人て事になるヅラ」
「何で、コウガ王国限定なんだ?」
「したっけ、コウガ王国以外の国でも、ウチの国と似たようなもんだからな、
一般人が魔導車に乗ってるのは、
国内で仕事を持つ者に格安で魔導車を売ってくれたり、貸し出してくれたりする、
サスケ国王陛下が治めるコウガ王国ぐらいなもんヅラよ、
お前さん方も、そのクチだべ」
「あ、ああ、俺達も陛下からお借りしてるんだよ」
(コウガ王国にサスケ王って、絶対に本人か先祖が日本人だろ!)
「やっぱり、そうヅラか、
ウチら、ルクシア共和国の者からすると羨ましい限りヅラよ」
「お、おう、俺達も陛下に感謝してるんだよ」
「それで、さっきオラに何か聞きたいみたいだったヅラが、
なんだべか?」
「ああ、そうだった。
俺はコウガ王国から来たシュウって者で、
あそこで魔導車に乗ってるのが弟のケンだ
宜しく頼むぜ」
「こちらこそ宜しくヅラよ、
オラは、この先にあるラッセン村のフツーニって言うヅラ
へ~、2人は兄弟ヅラか・・・初対面の人に、面と向かって言いづらいヅラが、
一言だけ言わせて貰っても良いヅラか」
「あ、ああ、別に構わないけど何だ?」
「弟の方が良い男ヅラ」
「ソレ今、必要か!?
態々、断りを入れてまで言わなきゃならない事じゃねぇだろ!」
「いや~、オラの心の安定の為にも必要な事だったヅラよ」
「何だソレ!」
「んだばオラの心がスッキリした所で、
シュウ達が聞きたい事って何ヅラ?」
「ああ、フツーニさんに、
この森の木を切っても良いかを聞こうと思ったんだよ」
「この森の、木を切るヅラか?
街や村に隣接してる森なら、ご領主様に届け出が必要ヅラが、
この森みたいな単独の場所なら、勝手に切っても構わないヅラよ、
シュウ達は樵なんヅラか?」
「いや、俺達は大工職人なんだけど、
旅銭を稼ぐ為に、家具でも作って売ろうかと思ってね、
そうだ!フツーニさんは、家具を造るのに、
この森で一番良い木って分かるか?」
「植物では無いが、一番の材料と言えば『トレント』ヅラよ」
「トレントって、木に擬態してる魔獣の事だよね」
「そうヅラ、あいつらは年輪や節が無いから、
しなやかさと強さを合わせ持ってるヅラし、
磨けば磨く程、光り輝くヅラから家具にすると人気が高いヅラよ」
「へ~、そうなんだ、
でも、擬態が得意ってぐらいだから、見付けにくいんだろ?」
「そうでも無いヅラよ、良かったら教えるヅラか?」
「えっ、良いのか?
じゃあ、どうせだから弟も一緒に教えて貰っても良いかな?」
「全然オッケーヅラよ、顔が良い弟も呼ぶヅラ」
「・・・何か引っかかる言い方だが、まあ良いか」
シュウは、車で待機していた憲太に手招きの仕草を送って呼び寄せた。
「何?シュウ兄ィ」
車から降りて、やって来たケンが尋ねる
「ああ、こちらは近くの村に住んでるフツーニさんて方なんだが、
家具の材料として人気が高い、トレントって魔獣の見つけ方を教えてくれるそうなんで、
お前にも聞いて貰おうかと思ってな」
「そうなんだ、フツーニさん宜しくお願いします。
俺はシュウ兄ィの弟でケンです。」
「ああ宜しくヅラよ、では早速ヅラが2人とも静かに息を潜めて、
森の木々に注目してくれるヅラか」
「「はい・・・」」
「・・・・・」
「「・・・・・」」
「・・・・・」
「「・・・・・」」
「・・・・・・・・・・わっ!!」
「「わっ!ビ、ビックリした~」」
「2人とも、森の木の中でビクッとしたのが何本かあったヅラが、
分かったヅラか?」
「ええ、何本か俺達と一緒にビクッとしてましたね」
「割と簡単に見つけられるんだね」
「んだんだ、ここらのトレントは臆病な種類なもんだから、
見付けだすのに苦労しないんヅラよ」
「でも、こんなに簡単に見つけられると、
乱獲されて居なくなっちゃうんじゃ無いのか?」
「そうだね」
「その心配は要らないヅラよ、
あいつらの本体は、地面の下の根っ子みたいな部分ヅラから、
地面の上だけを切る分には、ひと月もすれば元通りヅラよ」
「へ~、そりゃ便利だな」
「良い材料に、事欠かなそうで良かったね、シュウ兄ィ」
「んだば、オラは、これで村に帰るだよ」
「ああ、助かったよ、ありがとうな」
「ありがとう御座いました。」
「家具が出来上がったら、ウチの村に寄らないだべか?」
「良いのか?」
「ああ、ウチの村の連中はクレイジ・・・
いや、フレンドリィなモンばかりヅラから、大丈夫ヅラよ」
「今、クレイジィーって言いかけ無かったか?」
「気のせいヅラよ」
「そうか?」
「そうヅラ」
「・・・まあ良いか、
どの道ラッセン村には寄る予定だったから、後で寄らせて貰うよ」
「分かったヅラ、歓迎の準備をして置くから楽しみにしてるヅラよ」
「ただの旅人の俺達に、歓迎なんて不要だぞ」
「いや、ウチの村の連中は、
お客人で楽しむ・・・いや、お客人と楽しむのが好きな連中ばかりだから大丈夫ヅラ」
「・・・分かった。
何か引っかかるが、後で弟と伺うよ」