後ろ盾(だて)
「それでシュウ君、ケン君、
私も、伝説に謳われた『トルドの泉』を、
自らの、この眼で見てみたいんだが宜しいかね?」
『トルドの泉』の説明を終えたポキール神父が、
シュウ達に、そう尋ねて来る。
「ええ勿論ですよ!
何てったって、神父さんの教会の地下から見つかったんですからね」
「今、ご案内をしますね」
シュウ達は、ポキール神父を伴って、
再び教会の地下室から、
教会の地下深くに広がる大空洞へと降り立った。
「おお~っ! これが伝説に名高き『トルドの泉』ですか!
伝説の一説に『その泉は、陽の光を浴びて千の表情を見せる』
とありましたが、こういう事だったのですね!」
シュウらの案内で『トルドの泉』を実際に目にした
ポキール神父が感嘆の声を上げた。
「なる程、多彩なヒカリゴケでライトアップされた
地下空洞の泉も幻想的な雰囲気で綺麗だけど、
陽の光に照らされて、白い石灰岩が光輝く地上の泉も美しかっただろうな」
「そうだね、何か白って女神様の色って感じだもんね」
「ん? あそこに文字らしきものが掘られた
石碑の様な物が立っていますが、
お二人は、あれを見て、
ここを『トルドの泉』と判断されたのですかな?」
「ええ、あの石碑に『トルドの泉』って掘られていますからね」
「もしかして、神父様は石碑に掘ってある文字を読めないんでしょうか?」
「ええ、全く持って読めませんな、
私も詳しくは無いので定かではありませんが、
恐らくは、古代文字と呼ばれている文字ではないかと思われます。
お二人は、良く読み解く事が出来ましたね」
「え、ええ、実は昔、
俺達が住んでた村の近くに古代遺跡が発見された事がありまして、
その遺跡を調査しに来た考古学者の人達が、
暫くの間、村に滞在していた事があったんですよ、
その時に、俺もケンも少し古代文字を教えて貰った事がありまして・・・」
「そ、そうです!
真に持って、シュウ兄ィの言う通り~!」
シュウが、転移者補正のお蔭で普通に読めてしまった事が、
神父にバレると不味いと判断して咄嗟に吐いた嘘に、
ケンが不自然ながらも肯定の声を上げた。
「そうなのですか、それは、お二人とも博識な事で結構ですな、
いや~、それにしましても真に持って眼福でした。
それで、お二人はこの泉を今後、どうするのですかな?」
「それは、今現在のみ暫定的に地主になってる俺達じゃなくて、
今後も教会を管理して行く、神父さんが決めた方が良いんじゃないんですか?
ただ一言だけ言わせて貰えるなら、
伝説にあった様な、争い事を引き起こさない様に、
大々的な発表は控えた方が良いと思いますよ」
「そうだね、少なくとも近隣の権力者達の干渉を、
撥ね返せるだけの後ろ盾が確保出来るまでは、
発表しない方が良いよね」
「ええ、それに付きましては勿論の事、
私も十分に理解出来ますが、
お二人も御存じな通り、後ろ盾と申されましても、
何分、信者も少なく経営も成り立たない様な教会ですからな・・・」
「まあ、この教会の後ろ盾に関しましては、
この国で信頼が出来、尚且つ力を持っていそうな人を、
知ってそうな人に心当たりがありますから、
俺達で連絡を取って聞いてみますよ、
でも、まずは先に、
この泉の水に、伝説の様な効果があるのかを確かめる必要がありますね」
「そうだね、泉の水に伝説みたいな効果が無くて、
普通の水だとしたら、
権力者の人達も、美しく神秘的なだけの泉として、
観光目的ぐらいにしか利用価値が無いと判断するかも知れないもんね」




