伝統技術(でんとうぎじゅつ)
「シュウさん、ケンさん、今回は本当に助かりました。
ありがとう御座います。
これで、子供たちが安心して暮らして行ける場所を守る事が出来ました。」
コウヤサン教会の客間にて、
ポキール神父が2人に茶を淹れながら礼を言う
ちなみに、この地で飲まれている茶は紅茶では無く、
シュウらが慣れ親しんだ緑茶であった。
「いえ、こうして俺達が、
この教会を訪れて手助けする事となったのも、
前代のゴジュウショク様のお導きでしょうから、
成るべくして成ったんですよ」
「だから、そんなに気を使わないで下さい。」
「そう言って頂けると助かります。」
「それで、こうして無事に契約も終わったんで、
教会の建物が傷んでいる所を、
俺達で修繕したいんですけど良いですか?」
「勿論、無償でやらせて頂きますよ」
「唯でさえお世話になったと言うのに、
無償で、そこまでして頂くのは・・・」
「いえいえ、形だけとは言え一応は、
この教会のオーナーに成った訳ですから、
自分で手直しするのは当たり前ですよね?」
「自分で直す分にはタダですからね」
「ハハハ、分かりました。
お二人が、そう仰って頂けるならお願い申し上げます。
正直申しまして、この建物は釘を使わない特殊な建て方をしてあるらしくて、
街の大工に修繕をお願いしても、手に負えないと断られていたので助かります。」
「あ~、この建物はゴジュウショク様や俺達の、
出身地の様式で建てられていますから、
普通の大工じゃ無理かも知れませんね」
「俗に言う『宮作り』ってヤツだね」
「はい、この街は他と比べて木造の建物が多いのですが、
それでも、釘や金物で木材を繋いで造られていますから、
この教会の様に、木材を加工して組み合わせるのは、
それに掛かる手間や時間的に難しい様です。」
「そうですね、木材の加工に慣れても結構な時間が掛かりますから、
コスト的に合わないと判断されるでしょうね」
「加工に失敗したら、また一からやり直しだもんね」
「ええ、そう言っていました。」
「さて、そんじゃ、お茶も頂いて一服した事だし、
ボチボチと始めますか!」
「そうだね、シュウ兄ィ」
「はい、宜しくお願い申し上げます。
それで、どちらから始められますかな?」
「そうですね・・・
やはり、一応は基礎から見させて頂いた方が良いかな?」
「そうだね、建物は土台が確りとしていないと、
あちこち歪みが出て来るから、基礎から見た方が良いよね、
神父さま、この教会で床下に出入り出来る場所はありませんか?」
「ああ、それでしたら、
廊下の端の床板を外すと、地下の物置へと降りる階段がありますので、
そちらから、床下を見たり出入りしたり出来ますね」
「へ~、この教会には地下室もあるのか、
一応、そこも崩れたりする心配が無いか見といた方が良さそうだな」
「そうだね、その方が良いね」




