ある偉人(いじん)の考察(こうさつ)
「私は当『コウヤサン教会』の神父を務めて居ります
ポキールと申す者です。」
「はあ・・・神父様ですか」
「何か凄い違和感を感じるねシュウ兄ィ」
後ろから掛けられた声へと振り返ったシュウ達の目前には、
緑の髪と瞳に、白い肌の人族と言う
この世界では有り触れた外見を持つものの、
その服装が日本のお坊さんの様な袈裟っぽい衣装を着こんでいる為に、
違和感をバリバリに感じられる人物が佇んでいた。
「ああ、この服装ですか?
確かに他では見られない服ですから、驚かれたかも知れませんね」
シュウ達の戸惑いの視線を感じ取ったのか、
ポキール神父は2人に、そう告げた。
「ええ、やはりゴジュウショク様に肖ったのでしょうか?」
「はい、この教会の神父は、
初代神父のゴジュウショク様ことウズタカケンゾウ様に肖って、
御身が纏われていた服装を模した物を見に付ける事が、
代々の習わしとなって居ります。」
「そうなんですか、
あっ、申し遅れました。
俺はシュウっていうんですが、ポン吉くんに案内をお願いして、
こちらの教会を見学させて貰いに伺いました。
隣に居るのは弟のケンと申します。」
「ケンです。宜しくお願いします。」
「こちらこそ宜しくお願いします。
ご覧の通り何も無い所ですが、
どうぞ、ごゆっくりしていらして下さいませ」
「「ありがとう御座います。」」
「先程の御様子からすると、
お二人はゴジュウショク様に御興味があられる様に見受かられましたが、
どうですかな?建物の中には晩年のゴジュウショク様を、
模した絵が飾られているのですが、ご覧になりますか?」
「是非、お願いします。」
「そうだね、どんな人だったのかが、
もっと良く分かるかも知れないもんね」
「では、お二人はこちらへどうぞ、
ポン吉は、わたしがお二人をご案内している間に、
『テラコヤ』の皆と今日のお勉めを済ませて来なさい」
「は~い!神父さま」
ポン吉は、ポキール神父の指示を受けると、
教会の建物の横に建つ、小さめの建物へと向かい入って行った。
「神父さま、『テラコヤ』というのはポン吉くん達が暮らしてるという
孤児院の事なんですか?」
「はい、ゴジュウショク様が当教会を建てる際に一緒に造られたそうなのですが、
当初は子供達に学問を教える為に使われていたと伝わって居りまして、
時の流れと共に、親の無い子供達を引き取って育てる施設となって行ったと
聞き及んで居ります。」
「ああ、元々は『寺子屋』だったのか」
「何か話を聞けば聞く程、
素晴らしい人物だったっていうのが分かって来るね」
「馴染の無い御習慣かもしれませんが、
当教会では入り口を入る際には、お履き物を脱いで頂けますかな」
「いえ、俺達が生まれ育った所も、
建物の中は靴を脱いで上がる習慣だったんで大丈夫です。」
「むしろ、この方がシックリ来るよね」
2人は靴を脱ぐと、ポキール神父に続いて長い板張りの廊下を歩き始めた。
「どうぞ、こちらに飾られている絵に描かれて居られますのが、
晩年のゴジュウショク様です。」
長い廊下を暫く歩いて、幾つかの障子張りの部屋を通り過ぎた先にあった
本堂の様な場所へと入ると、ポキール神父が漆喰塗りの壁の方へと手を向けながら、
2人に、そう告げた。
「御老公?」
「ハハハ、ホントそっくりだね」
神父が促した方向へと目をやった2人の瞳には、
中央に白い髭を蓄えた老人が堂々と立っていて、
その右手には周囲の者達に平伏す様にと促す動作をする人物が、
そして左手には、自らの右手に持った何かを周囲に呈示している人物が、
描かれている絵画が映し出されていたのであった。
「あの、中央に描かれた人物がゴジュウショク様なのですが、
晩年のゴジュウショク様は、教会を弟子の『コボウズ』という者たちに任されて、
自らは国中を周って、苦しみを抱える民たちを救っていたと、
聞き及んで居ります。」
「あの、ゴジュウショク様の両脇に描かれてる人達は誰なんですか?」
「あの方々は、ゴジュウショク様が自ら探し出して来た
お付きの方々で、右手の方がヘルパー様、左手の方がダイス様と仰られます。」
「ゴジュウショク様、絶対名前だけで探して来ただろ!」
「あのダイス様が右手に持って突き出してるのって何なんですか?」
「ああ、あれは『御免印』と言って、
ゴジュウショク様が成された数々の功績を、
ご評価下さった国王陛下から賜られた
悪しき行いを成す者達を、自由に裁いても良いという許可証ですね」
「おおっ!ホントに御老公みたいだな」
「ホントに凄い人だったんだね」
「そういえば、ゴジュウショク様は晩年、
自らの事を『ミト・アナル』と呼んでくれと仰られていたそうですぞ」
「ここに来て下ネタかよケンゾー!」
「イメージがガタ落ちだね」




