名人への道
「こ、これは!?」
建築業ギルドの美人受付嬢であるシンシアは、
ギルド登録用のオーブに浮かび上がった
シュウのステータスを見て驚きの声を上げた。
「俺のステータスって何か変でしたか?」
自分のステータスに何か不味い点があったのかを、
心配になったシュウが、シンシアに尋ねる
「い、いえ、失礼を致しました。
シュウ様の職業クラスに『棟梁』と表示されましたので、
驚いてしまったのです。」
「大工職なんだから、
棟梁と表示されても、おかしく無いんじゃないですか?」
「そうだよねシュウ兄ィ」
「い~え、それは違いますよシュウ様、ケン様、
通常ですと大工職の方々は、
師匠の方に弟子入りして1~2年の間は『見習い』
それから、2~10年程が『大工』
そして、今回シュウ様のステータスに表示された『棟梁』には、
10年以上のキャリアが必要と言われています。
シュウ様の様に18歳という若さで『棟梁』と成られた方なんて、
私は聞いた事が御座いません!」
「そ、そうなんですか、
も、もしかすると物心ついた頃から、
大工仕事に関しては鬼の様な親父に仕込まれたからかな~?」
「そ、そうだねシュウ兄ィ」
(俺達の実年齢は29歳と26歳だからな・・・)
「そうなのでしょうか・・・?
でも実際に、こうして表示されているのですから、
そうとしか思えませんわね」
「そ、そうですよシンシアさん、それに間違いありませんとも!
と、ところで大工職には『棟梁』以上のクラスもあるんですか?」
シュウは、これ以上シンシアのツッコミを受けない為に、
話の流れを変える事とした。
「ええ勿論の事、それ以上も御座いますよ、
20年程のキャリアで『熟練』
そして、その中の一握りの方々が『達人』や『名人』へと至られます。」
「おお~!聞くからに凄そうなクラスだな」
「そうだね、シュウ兄ィ」
「ではまあ、シュウ様の職業クラスは良しとして、
こちらのスキルに表示されてる『建築魔法』というのは初めて見ましたが、
どの様なスキルなのでしょうか?」
「ああ、それはケンも持ってるんだけど、
読んで字の如く建築作業に特化した魔法が使えるってスキルですね、
俺だったら造った物に『状態保存』の魔法を付与したり、
ケンの場合は魔法で整地をしたり建物の基礎を造ったりですかね」
「それはまた素晴らしいスキルですね!
通常ですと土木作業や、
魔法の付与などは専門の業者に依頼をだして行うのですが、
お二人の場合は全て自分達で賄えると言う事ですからね」
「まあ、そうですね」
「一部のドワーフの方達でも、
土木作業から建物の建築までは手掛けますけど、
魔法の付与は魔法使いの方に依頼されていますから、
お二人の持つ『建築魔法』の有用性は、それ以上と言えますね」
「やはりドワーフの方達の技術は優れているんですか?」
ファンタジー小説では定番の種族の話が出て来たので、
シュウは尋ねてみる
「そうですね、貴族の方々の中には、
建物を建てる際に多少は割高になっても、
ドワーフの職人を指定して来られる方も少なくありませんから」
「おお~!やっぱり、そうなんだ
一度、仕事している所を見学させて貰いたいものだな」
「勉強になりそうだね」
「はい、建築業ギルドに登録されている大工職の師匠の方からも、
『見習いに見学させたいから、ドワーフの棟梁に聞いてみてくれ』と、
お願いされる事が偶にありますね」
「だよな~、俺達も親父から『技術は見て盗め』って、
良く言われてたもんな」
「そうだねシュウ兄ィ」
その後、ケンのステータスにも職業が『棟梁』と表示され、
シンシアがひと騒ぎするなどのトラブルはあったものの、
シュウとケンは無事にギルドカードを受け取り、
建築業ギルドへの登録を終える事が出来た。
「兄ちゃん達、次はどこに行く?」
建築業ギルドでの登録を終え、
ギルドの建物から出て来たところでポン吉がシュウ達に、そう尋ねる
「そうだな~、魔導バックは宿に帰る前に買えば良いとして、
ケンは行って見たい場所とか何かあるか?」
「ううん、別に無いよ」
「そうか、そんじゃポン吉、
取り敢えずは、この街の名所を案内してくれるか?」
「オッケー!オイラに任せといてよ!」
シュウとケンは、ポン吉の案内で『アナポーの街』の名所を巡る事とした。




