建築業ギルドにて・・・
「お客様方、ご昼食の方は如何致しますか?」
シュウ達を部屋まで案内した部屋係の女性が尋ねて来る
「俺達、この街に来たのは初めて何で、
部屋に荷物を置いたら、あちこち見に出掛けるついでに外で食べるんで、
夕飯からでお願いします。」
「暗くなる前に戻りますね」
「畏まりました。
お気を付けて行ってらっしゃいませ」
部屋に着替えなどの手荷物を置いた2人は、
宿を出ると、ポン吉の待つ茶屋へと足を運んだ。
「あっ、兄ちゃん達こっちこっち!」
シュウ達が歩いて来るのを目に留めたポン吉が茶屋のイスから立ち上がって、
手を振りながら声を掛けた。
「おうポン吉、ちゃんとダンゴは食べたか?」
「お待たせ~」
「うん、兄ちゃんからダンゴ代で貰ったんだから、
ちゃんとご馳走になったよ、
ダンゴなんて久し振りだから美味しかったな~
ありがとうね兄ちゃん達」
「おう、そりゃ良かった。」
「どう致しましてポン吉くん」
「じゃあ、早速この街を案内するけど、
兄ちゃん達、どこか行って見たい所とかあるのか?
無ければ街の名所とかを中心に回るけど・・・」
「ああ、まずは建築業ギルドと魔導バックが売ってる店に行ってくれるか、
それが済んだら、適当に名所を案内してくれよ」
「頼むねポン吉くん」
「兄ちゃん達、建築業ギルドに用があるのか?」
「ああ、こう見えても俺達は2人とも大工なんだけど、
生まれてこの方、田舎の村暮らしだったんで、
まだ建築業ギルドに登録して無いんだよ、
折角ギルドがある街に来たんだから登録しようかと思ってな」
「ポン吉くんは建築業ギルドの場所知ってる?」
「へ~、そうなんだ
建築業ギルドの場所なら良く知ってるから大丈夫だよ、
じゃあ、おいらに付いて来てね」
シュウとケンは、前を歩くポン吉に付いて歩き始めた。
「兄ちゃん達、ここが建築業ギルドだよ」
「なる程、分かり易い外観をしてるな」
「そうだね」
ポン吉の案内で辿り着いた建築業ギルドは、
100坪ほどの敷地に、木造2階建ての建物が建っており、
壁には金槌とノコギリが交差した意匠の看板が掛けられていた。
「こっちのドアが入り口だよ」
勝手知ったる感じでポン吉がドアを開けて中へと入って行く
「おう、ケン行くぞ」
「うん」
2人もポン吉に続いてギルドの中へと入って行った。
「シア姉、お客さんだよ」
ギルドに入ったポン吉は、受付カウンターに座っている女性に向かい、
そう声を掛けた。
「あらポン吉、お客さんって、
何で、あんたが一緒に来たのよ?」
「兄ちゃん達、この街が初めてだって言うから、
おいらが案内してお駄賃を貰う事にしたんだ
神父様にお渡しして少しでも足しにして貰おうかと思って・・・」
「あんた、まだそんな事を言ってるの?
私や、あんたが如何こう出来る規模の問題じゃ無いって、
あれ程言って聞かせたでしょ!」
「だって・・・おいら皆と離れ離れになるなんて嫌なんだもん」
「それは、私だって同じ気持ちだけど、
世の中には、思いだけでは、どうにもならない事なんて幾らでもあるのよ」
「あの・・・何か事情があるなら、
俺達にも、お聞かせ願えませんか?」
「何か力に、なれるかも知れないしね」
「あら、お客様を放っときっぱなしで申し訳御座いませんでした。
今のは私どもの内輪の話なので、
どうかお客様方は気になさらないで下さいませ、
弟が、ご迷惑をお掛けした様で申し訳御座いませんでした。」
「えっ、弟?」
「ポン吉くんの、お姉さんなんですか?」
2人が驚いたのは、タヌキ獣人のポン吉に対して、
受付カウンターの女性が普通の人族に見えたからであった。
「ああ、私は見ての通りの人族ですよ、
私とポン吉は、この街にある孤児院で育ちましたので、
そこで暮らして居る者は皆、姉弟の様にしているんですよ」
2人の様子に気づいた女性が、そう説明した。
「そういう事なんですか」
「実の姉弟みたいに仲が良いんですね」
「それで、本日は当建築業ギルドに、
どの様な御用件でお出で下さったのでしょうか?」
「はい、俺はシュウで、
こいつは弟のケンっていうんですが、
2人とも大工として登録をお願いしようかと思いまして」
「申し遅れました。
私は本日の受付を担当させて頂いて居りますシンシアと申します。
シュウ様とケン様のギルド登録ですね、承りました。
登録料と致しまして、お一人当たり3万ギル掛かりますが宜しいでしょうか」
「はい、これでお願いします。」
シュウは財布から金貨を取り出すと、シンシアへと手渡した。
「はい、10万ギルのお支払いを頂きましたので、
お釣りの方は4万ギルとなります。
ただ今、ご領収書の方をご用意いたしますので、
その間にギルドカードを造る為のオーブ認識をお願いいたします。」
シュウに釣銭を手渡したシンシアは、
カウンターの下から、台座に乗った直径15センチ程の、
水晶で出来た様な珠を取り出してカウンターの上に置いた。
「オーブ認識?」
「この珠に触ればいいのかな?」




