備えあれば患いなし
「よう!シュウ、それから他の皆も良く来たな!
今、アイソから、お前が『ローズ・ハウス』を買ったと聞いたんだが、
もう、購入の契約まで済んだのか?」
建築業ギルドの受付嬢であるアイソに呼ばれて来た
ギルド・マスターのメークソが開口一番で、そう尋ねる
「ああ、契約を済ませた、その足でココに来たんだよ」
「そうか、それなら、リフォーム用の資材の手配を
もう初めても大丈夫だな・・・
それから、今までアノ物件を購入しようとした人物に起きた
色んな不可思議な現象が、
あの土地と館を守る土地神様に由り引き起こされていたというのは本当か?」
「ああ、それもホントだぜ」
「そうか・・・行方知らずの旦那さんを思い掛け続けた願が
地精を神にまで至らすとは、人が愛する者を思う気持ちというのは
凄いものじゃな・・・」
「ああ、ローズさんが年取って死ぬまで毎日祈ってたってんだから、
その思いの強さは並大抵なモンじゃ無かったんだと思うぜ」
「うむ、そなたの言う通りじゃな・・・
それで、ローズ・ハウスのリフォームに使う資材の方じゃが、
建築当時と同じ材料じゃったら、当時の売買記録がウチに残っとるから、
同じ物を手配出来るぞ?」
「えっ?あの建物って相当昔に建てられたんだと聞いてるんだけど、
そんな昔の売買記録なんてのが、まだ残ってるのか?」
「うむ、この街の建物全てという訳には行かんが、
主だった著名な建物に関しては街が出来た当時からの物が残っとるぞ、
あの、ローズ・ハウスに関しても、当時隆盛を誇っとった街でも有数の
商会の会長が建てた物じゃったからな、
その後のメンテナンス時に必要となる事を想定して、皆残してあるぞ」
「そりゃ助かるな、俺やケンの建築魔法で、
ある程度は周りの状態と合わせて、イイ感じに古びた様に見える加工は出来るが、
使ってる材料が全然違ってると、近くで見たら質感の違いなんかが
目立っちまうからな・・・」
「うむ、見る者が見れば分かってしまうな」
「施主さんが、それでもオッケーってんなら良いが、
今回は、俺とミケルンさん、それからラビ子とウサ太が暮らす予定の家だからな、
やるからには完璧な状態に直したいところだから、
多少の値は張っても良いから、出来るだけ建築当時と同じ材料で手配してくれるか?」
「うむ、それは問題無いんじゃが、
どこまでの部分の材料を揃えれば良いんじゃ?」
「そうだな・・・屋根と外壁関係は結構傷んでたから、
丸々の分を用意して貰った方が良いかな、
それから、梁の方はダイジョブそうだったんだが、
柱が傷んでる部分が結構あったから、
柱材は建築時の3分の1ぐらいの量を手配してくれるか?
後はケン、俺が外側をチェックしてた間、
建物内の状態を見て貰った、お前から説明してくれるか?」
「うん、良いよ、シュウ兄ィ
建物内の方はね、2階部分が屋根からの雨漏りがアチコチあって傷んでるから
天井も壁も張り替えかな、
それから、2階の床材と、1階の天井と壁材は結構シッカリしてるから、
一度剥がして磨きを掛ければ大丈夫だと思うよ、
あと、1階の床に関しては下地も含めてホワンホワンしちゃってるから
オール造り替えになっちゃうね・・・」
「という感じで手配してくれるか?」
「うむ、了解じゃ」
シュウやケンの言葉をメモしながら聞いていたメークソが、そう返事を返す。
「そんじゃ、材料の手配が付き次第、
リフォームし始める予定なんで連絡頼むわ」
シュウら一行は、メークソに材料の手配を頼むと建築業ギルドを後にした。




