契約成立
「ココに、サインをすりゃ手続きが全部終わりなんだな?」
シュウが、サインをする右手を動かしながら、そう尋ねる
「はい!これで全ての御契約の御手続きが終了致しました。」
シュウの問い掛けに対して、商業ギルドの職員であるイイネが、
返答を返した。
「「「「「おお~っ!!」」」」」
イイネが、シュウへと言葉を返した瞬間、
それまで固唾を飲んでシュウとイイネとの遣り取りを見守って居た
ピョロリの街の商業ギルドに所属する面々から歓喜の声が上がる、
それもその筈で、長きに渡り仮契約までは進むものの、
その後、100パーセントの確率で購入予定者からの
購入御断りの連絡が入っていた、このギルド最大の不良債権が
ついに片付いたのであるのだ。
「そんじゃ、早速だけど明日から俺とケンとで館の修繕作業に
入るんで宜しくな、
修繕関係の材料なんかはギリもあるんで建築業ギルドから買うけど、
内装品や家具なんかはココを通して買うから勘弁してくれよな?」
「ええ、それは勿論問題無いのですけど、
家具類はシュウ様方で御作りになられないのですか?」
「おう!今回は屋内の壁を修繕する際に、
各部屋の壁にリラックス効果とか疲労回復効果の付与をしとく
予定なんで家具は一般的な物でオーケーだぜ。」
「なる程、それならお部屋の模様替えなどをされた場合でも、
効果は、そのまま残りますね」
「ああ、今回修繕する家には直ぐ住むって訳じゃ無いからな、
後から住む段階になって家具がイマイチ気に入らないとかも
出て来るかも知れないだろ?」
「ええ、個人的な趣味は千差万別ですからね・・・」
「まあ、そういうこったな、
そんじゃ俺らは、この後、建築業ギルドに回って良さげな材料が
あるか覘いて来るから、これで帰るわ、
今回は色々と世話になったな助かったよ。」
「いえいえ、シュウ様方は当ギルドの重要人物で在られますし、
長年、当ギルドにて抱え込んでいた物件が売れたのですから、
こちらとしても助かりました。」
「ああ、Win-Winでお互いが得したって事で良いだろ、
まあ、俺の方の徳が大分デカいって感じだがな・・・」
「いえ、今回のお取引に関してのみを見れば、
そう見えるやも知れませんが、
シュウ様方が、当ギルドへと齎されて頂いた利益を鑑みれば
まだまだ、当ギルドの方が得をさせて頂いてると思いますよ?」
「まあ、イイネさん達が良いなら、俺も良いんで問題無しだな」
「はい、それで結構だと存じます。」
「そっか、そんじゃ俺らは、これで失礼するわ」
「はい、ご契約ありがとう御座いました。
またの御利用をお待ちして居ります。」
イイネのセリフに合わせ、居合わせた商業ギルド職員全員が
シュウらへと深々とお辞儀をしながら送り出した。
「ケン、これから建築業ギルドに行って修繕に使う材料を
吟味してくんだけど付き合って貰っても良いか?」
商業ギルドの建物を出たシュウは、一緒に建物から出て来たケンに尋ねる
「うん、別に、この後の予定とかも全然無いし良いよ、シュウ兄ィ」
「おう!そうかサンキュな!
ラビ子とウサ太は如何する?
お前らが木材とか見てても退屈だろうから、
小遣いをやるから、どっか街中で遊んで来ても良いぞ?」
「いえ、将来、私やウサ太も一緒に暮らさせて頂く予定の館の
修繕に使う材料を吟味されに行かれるのですから、
お付き合いを致します。」
「ケン兄ちゃんがニホンに帰っちゃったら、
オレがシュウ兄ちゃんの大工しごとを手伝うつもりだから、
良い木材のえらびかたを教えてもらうために、
オレもいっしょに行くぜ!」




